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和倉温泉「加賀屋」宿泊記。「おもてなし日本一」は本当だった。

「加賀屋」という名前は、旅館に興味を持つずっと前から知っていました。

プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選で、長年にわたって上位に選ばれ続けている老舗旅館。「いつか泊まってみたい」と思いながら、なんとなく後回しにしてきた宿でした。

旦那さんと「そろそろ行ってみようか」という話になって、予約しました。和倉温泉に来たのも、能登半島に来たのも、初めてのことでした。

到着してから、ずっと気配りが続いた

玄関に着いた瞬間から、スタッフの方が出迎えてくれました。荷物を預かってもらい、チェックインの手続きをしながら、お茶と和菓子が出てきました。

部屋に案内してくれた仲居さんが、その日の夕食の流れや館内の施設をひとつひとつ丁寧に説明してくれました。押しつけがましくなく、必要なことが自然に伝わってくる話し方でした。

「ここまで細かく説明してくれる宿は初めてだ」と旦那さんが言っていました。わたしも同感でした。気配りというのは、何かをしてもらうというより、こちらが何も考えなくていい状態を作ってもらうことなんだと思いました。

館内は、美術館のようだった

加賀屋の館内には、随所に美術品が飾られています。毎日16時と17時に「湯番頭と行く館内美術館ツアー」という企画があり、参加してみました。

ロビーから廊下、大浴場の前まで、説明を聞きながら歩くと、普通に通り過ぎていた場所がまったく違って見えました。飾ってある器や絵の背景を知ると、旅館そのものへの見方が変わりました。

「宿に泊まって美術の話を聞くとは思わなかった」と旦那さんが言っていました。予想していなかった体験ほど、記憶に残るものだと思います。

七尾湾を見ながら、温泉に入った

大浴場からは七尾湾が一望できます。海に面した大きな窓の前に湯船があって、波の音を聞きながら入る温泉は、内陸で育ったわたしには特別な感覚がありました。

夜と朝で男女の浴場が入れ替わる仕組みになっていて、泉質も穏やかで肌にやさしい印象でした。朝に入ったとき、湾に朝日が差し込んでくる時間がありました。その光景がいまも頭に残っています。

夕食は、北陸の海の幸が続いた

夕食は個室の食事処で、能登・北陸の食材を使った会席料理でした。一品ずつ運ばれてくるたびに、仲居さんが食材の説明をしてくれました。

能登の魚、加賀野菜、地元の日本酒。北陸に来たことが、食事を通じてじわじわと伝わってきました。朝食も同じく個室で、焼きたての魚と白いご飯が、前日の夕食とは違う意味でおいしかったです。

チェックアウトのとき、全員で見送ってくれた

翌朝、チェックアウトのために玄関に向かうと、担当してくれた仲居さんをはじめ、複数のスタッフが見送りに来てくれていました。

車に乗り込んで少し走ったとき、バックミラーの中でまだ頭を下げているスタッフの姿が見えました。旦那さんと顔を見合わせて、しばらく何も言えなかったです。

「おもてなし」という言葉を、これまでなんとなく使っていた気がします。泊まってみて、その言葉の輪郭が少しはっきりしました。

これまでいろんな宿に泊まってきましたが、加賀屋は別の種類の宿でした。設備や料理だけではなく、人が記憶に残る宿というものがあるんだと思いました。

通り過ぎていた場所ほど、実は知らないことが多いのかもしれません。能登も、加賀屋も、そういう場所のひとつになりました。


※館内美術館ツアーは毎日16:00・17:00より実施。プランは「雪月花」「能登渚亭」「能登客殿」「能登本陣」など複数あり、価格帯も幅広いです。最新の料金・プラン・空室は予約サイトでご確認ください。

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