黒の宝物(うたとにじのおはなし)

うたは、私の生まれなかった子
にじは、母の、育てられなかった子




「うた、てつだって?」

と、にじという女の子は、ぼくの手をひっぱった。

僕はうた。
にじという女の子と同じくらいの男の子。
「お母さんにシジミをとって帰るんだ」
と、にじ。
「シジミ?」
うたは、ぼくの腕をつかみ走り出した。
「にじ?まってよ」
にじがあんまりいそぐので、ぼくは息をきらしながらにじに聞いた。
「にじ、シジミって あの黒い小さな貝のこと?」
「そうだよ 食べたことある?食べたことあるよね」
と、にじ。
走り出していた足取りは、
いつの間にか
スキップになっていた。

スキップで進む
田舎の舗装道
横には小さな川がある。
川というか
溝に水が流れているような小川。

あまり水のない小川。
夏に
そこで遊んだ溝だった。
スキップから
にじは、ぼくの手を離して
走り出していた。

「お母さんにシジミをとって帰るから手伝って」
と、にじはうしろを向いて、ぼくに言った。
息を切らしながらまるで、その言葉を
用意していたかのように
ぼくに言ってくれたにじ。
サンダルをつっかけたまま
スキップして
そして走ってきた。
サンダルの先からいつのまにか
足が出ていた。(今は出ないようなサンダルになっています)
にじも足が半分くらい出ている。
あとから走ってきた
にじのおとうさん。
はあはあ言って座り込んだ。
「ここにシジミがおるんよ」
と、にじがつれてきてくれた場所は
道沿いの小川の砂がある所
水はあまりなくて

流れる水は、きれいで透き通っている。
そこに
サンダルのまま
足を下ろす。
つめたい
砂の川だから
少し沈む
歩いてじゃぶじゃぶと進む
水が濁る
見えていた砂が見えなくなった。


「ここにシジミがおるんよ この前みつけたの」
と、にじは、手を足元にやって
砂の中からシジミを
探し始めた。
少し探して
川から上げた手の指先には
黒いシジミを持っていた。



シジミは食べたことある。
お母さんが作ってくれた
シジミのおみそ汁やお吸い物で食べたことあった。
小さな黒い貝がらがかわいくて
ぼくは
おみそ汁の貝を食べたあとの貝殻を大事に持っていた。

にじのみせてくれた黒いシジミは
あのお汁に入っている貝とおなじだった。

ぼくも、足もとに手をやって
砂の中を探してみる。
「あった」
と、手をあげた!
指でつかんだものは
小さな黒い…


石だった。

「あれ?ちがう これじゃない」

と、川に捨てた
というか戻した。

何度も探していると
貝をみつけた。

「にじ?これ?」
貝をにじに渡して見せてみた。

「これはね…」と、
にじがおしえてくれた。
「こうやって貝を持って力をかけてみると
貝がらが動くやつは
中身が入ってないよ」

「これはどうかなぁ」
貝を、にじにみせる。
「中身が入っているやつは口がしっかり閉じてるんだよ うたもやってみて」
力をかけると 
あっ!貝がらがパカッと動いて開いた。


なかから砂と水が出てきた。
「あ〜あ」
「これは違うね これもちがうね」
にじと顔をあわせて笑う
「あはは」
2つとも違っていた。

また砂の中に手を入れて
手探りで探してみる。
だんだんと指が慣れてきた。
砂の中で見つけて、川の水できれいにしている間に
指で触ってみた。

ゴツゴツしているのが石で
入っていないのが軽くて
それ以外の
ヌメッとしたのを今度は見つけた。
ヌメヌメしている
「にじ これでしょう?」
ぼくは見つけた。
シジミらしきものを、にじにみせる。
どきどき…

また違うって言われるかな?
また石かな?
入ってないのかな?
ドキドキ…

「うた!これだよ
でも、これは小さいよ
これは返してあげないといけないよ
小さいのを取ると、ここからいなくなってしまうってお父さんから教わったの」

小さいのは、川に返してぼくはまた探した。
そしてまた、うたに見せた。
今度は大きいのだ。黒くてツヤっとしてて
ヌメッともしている そして大きい。
「うた!これがシジミだよ うたすごいね
こんなおおきいのをみつけたんだよ 
おとうさん見てみて」
にじが、座り込んでいたにじのおとうさんにぼくの見つけたシジミを見せる。
「おっ!みせてみせて うたすごいね」
にじのおとうさんは僕の見つけたシジミを見てすごいって言ってくれた。
「にじのはどれかな?」
「わたしのはこれだよ」
少し小さなしじみを
にじは
にじのお父さんの手のひらにシジミを乗せた。

「うた よくさがしたね すごいよ」
「にじもがんばったね うたに、ちゃんとおしえてくれたね」

と、にじのお父さんは言いました。
。サンダルはいつのまにかぬいでいて、夢中で裸足で探していた。


サンダルも乾く頃、僕たちは、帰りました。
にじのお母さんと、ぼくのお母さんに
黒いシジミのおみやげです。

お母さんたちは
びっくりしていたけど、とても喜びました。


次の日の朝ごはんは
黒いシジミのおみそ汁でした。

ぼくは、おみそ汁の貝を食べて、貝がらを取り出しました。
そして洗って、乾かしました。
その貝殻を、僕は宝箱に入れました。
黒い宝物です。
貝を合わせると
その中に
にじとの思い出が入ります。





シジミを取る川、
大人の方と行きましょう
ということを教えてあげてください。
少しの水でも事故につながります。
小さな貝はとらないことも伝えてあげてください。今はシジミをとる川がなくなってきています。

シジミ自体を見かけなくなっています。
大切にしましょう。


うたは、私の生まれなかった子
にじは、母の育てられなかった子

うたとにじのお話ができました。
絵はできなかったけど、お話はここに。

































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