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AIは、70点を3秒で出す。でも、71点目からは、あなたにしか書けない。AIと自己紹介。について

AIは「案」を出してくれる。でも「決める」のは、いつだって自分だ。

── ヒミビズ から、今日も。人口4万人の港町で、毎日5件以上、年間1,200件の経営の相談を受けている、荒川健生です。

今回は、最近の相談で増えてきた「AIの使い方」について。

■ 42.195kmを、AIと走った話

昨年11月、はじめてフルマラソンに挑戦した。
42.195km。
自分の人生で、一番長い距離だ。

富山マラソン スタート地点

ここ数年、1キロも走っていない。
試しに走ってみたら、1キロでぜえぜえ言っている。
膝に手をつきながら、「これ、42回繰り返すのか」と思った。

大会まで、2ヶ月半。いけるのか、、、

でも、エントリー費は払っていた。
もう引き返せない。
何から始めればいいかすらわからない。

そこで、AIに聞いてみた。

「フルマラソン初挑戦。大会まで2ヶ月半。今は1kmでぜいぜい。練習メニューを組んでほしい」。

AIは、一瞬も迷わなかった。
返ってきたのは、週ごとのスケジュールだ。

最初の2週間は、歩きを混ぜながら3km。
1ヶ月目の後半から、5km。週末だけ8km。
2ヶ月目に一度、15kmの「試走」を入れる。
大会2週間前からは走る量を落として、体を休める。


実際のAIの返信内容。これを参考にしていた


ここまでは、正直、ネットで調べても出てくる。
でも、自分はもう少し踏み込んで聞いた。

「30km地点で、体と気持ちはどうなる?」

AIはこう返した。
「30km付近で、脚の筋肉のグリコーゲンが枯渇し、急激にペースが落ちます。いわゆる『壁』です。視界がぼんやりし、やめたいという気持ちが強くなります。ここを乗り越えるには、事前に補給のタイミングを決めておくことが重要です。」

これを読んで、頭の中に映像が浮かんだ。
沿道の声が遠くなる。
脚が止まりそうになる。
でも、ポケットからジェルを取り出して、口に流し込む。

もう一度、前を向く。

  • 当日の朝に何を食べるか。

  • スタート前のストレッチの順番。

  • 前半のペース配分。

  • 給水所で何秒止まるか。

  • 30km地点での補給。

  • ゴール後に何を飲むか。

全部、AIと一緒にシミュレーションした。
まだ走ってもいないのに、頭の中では何度も、完走していた。

で、結果は。。。

20kmを過ぎたあたりで、雨が降りはじめた。
AIは、天気のことなんて一言も言っていなかった。

実際に20キロ過ぎたあたり

冷たい雨が、汗で濡れたシャツに染みる。
体温が、じわじわ奪われていく。
指先の感覚がなくなる。
歯がカチカチ鳴っているのが、自分でもわかった。

23km地点に、長い坂があった。
震える体で坂を登ったとき、右膝に鋭い痛みが走った。

25km地点で、もう脚が動かなかった。

完走、できなかった。


できなかったんかい、という話だ。

AIは「30kmが壁」と言っていた。
自分は、その壁にすら届かなかった。
2ヶ月半で1kmからフルマラソンという計画が、そもそも無謀だったのだ。


ただ、悔しいかというと、、、そうでも、、、いや悔しい。
結果は、30kmまでは走れた。
1kmでぜえぜえ言っていた人間が、だ。
AIが描いてくれたシミュレーションがなかったら、たぶん10kmも持たなかった。

けど、

この先に何が起きるかを、想像させてくれたAI。
その想像を、悪い意味で軽々と超えていった自分の右膝。

想定外は、起きる。
これが人生だ。
だから楽しい。

でも、「想定内」を増やしてくれる道具があるなら、使わない手はない。
道具は、使う人の想像力の分だけ広がる。

大事なのは、「これにも使えるんじゃないか?」と考えること。
一つの具体から、抽象に上がる。
抽象から、別の具体に降りる。

この「行ったり来たり」ができると、道具は何倍にも化ける。

フルマラソンの準備にも使える。
キャッチコピーにも、チラシにも、創業計画の骨子にも使える。
「案を出す」ことに関しては、AIはとにかく速い。

ただし、ひとつ知っておいてほしいことがある。

AIの答えには、ある「クセ」がある。


ふらふらで、記憶にない30キロ地点

■ おにぎりを10回、聞き直した話

少し前、コンビニでおにぎりを買った。
棚に並んでいたのは、鮭、ツナマヨ、昆布。定番ばかりだ。

ふと思った。
AIに「コンビニのおにぎりの新商品を考えて」と聞いたら、どうなるか。

試してみた。
返ってきたのは、
「明太子クリームチーズ」「鶏そぼろと柚子胡椒」「枝豆と塩昆布」。

悪くない。
でも、どこかで見たことがある。
そう。全部「ありそうな」答えだ。

AIの答えは、膨大なデータの平均値に近い。
世の中のおにぎりを学習して、「最も確率の高い組み合わせ」を返している。
だから破綻しない。でも、飛び抜けもしない。

つまり、AIが最初に出す答えは「70点」だ。
70点を、瞬時に、何個でも出せる。
それはすごい。
でも、70点は70点だ。
棚に並べても、隣の「ありそうな」商品に埋もれる。

ここで止まったら、もったいない。

自分は、もう一回聞いてみた。
「その5つ、全部コンビニで見たことがある。もっと尖ったやつを出して」。

返ってきたのは、「焼きサバとレモン」「カレー風味のきんぴら」「クリームチーズと味噌漬け卵黄」。
少し変わった。
でも、まだ「ありそう」だ。

もう一回。
「ターゲットを、朝5時に出勤する工場勤務の30代男性に絞って」。

「肉味噌マヨ大盛り」「焼肉カルビ」「豚汁風おにぎり」。
方向が変わった。でも、まだどこかで聞いたことがある。

さらにもう一回。
「その人が、コンビニの棚の前で3秒で手に取るのは、どれ? 理由も」。

「肉味噌マヨ大盛り。朝5時、頭はまだ動いていない。考えたくない。 名前を見ただけで味が想像できる。迷わない。それが選ばれる理由です。」

この答えを読んで、少し驚いた。
「おにぎりの中身」の話をしていたはずが、いつの間にか「人がどう選ぶか」の話になっていた。

ここだ、と思った。

AIに1回聞いて、「ふーん」で終わる人は多い。

でも、2回、3回、角度を変えて聞き直すと、答えの精度が上がっていく。

「誰に」「どんな場面で」「なぜ手に取るのか」。

質問を重ねるたびに、
70点が、75点、80点と上がっていく。

でも、85点を超えたあたりで、AIは止まる。

「肉味噌マヨ大盛り」は、きっと売れる。
でも、それだけでは「あの店のおにぎり」にはならない。

「あの店にしかない」と言わせる一個を作るには、最後に自分で決めなきゃいけない。

10回聞き直して、AIが出した20個の案を並べる。

その中から「これだ」と選ぶ。

あるいは、3つの案をくっつけて、AIが出さなかった21個目を自分で作る。

AIは70点を3秒で出す。
質問を重ねれば、85点まで引き上げてくれる。

でも、86点目からは、自分の目と、自分の経験と、自分の「好き嫌い」でしか書けない。

それが「選ぶ力」だ。

■ 頭に入っていない言葉は、伝わらない

一方で、気になるケースもある。

ある40代の方が、創業の相談に来た。
事業計画書を見せてくれた。
きれいにまとまっている。
コンセプトも、届けたい相手も、収支計画も。
全部揃っている。

「いいですね。では、このサービスを一言で説明してもらえますか」

少し間があった。

「えっと……AIが書いてくれたんですけど……」

そのあと、自分の言葉で説明しようとしたが、うまく出てこない。
コンセプトも、サービスの特徴も、収支の根拠も。
全部AIが書いた。
だから、頭に入っていない。

腑に落ちていない言葉は、口から出てこない。
口から出てこない言葉は、相手に伝わらない。
相手に伝わらなければ、お客さんは来ない。

これは、AIに「使われている」状態だ。

この方は、AIの文章をそのまま貼り付けていた。
自分の言葉に変換したかどうかだ。

そして、きれいだけど、そこに本人の体温がない。

きれいな計画書があっても、本人の目に熱がなければ、ひとは、気づく。

「この人、自分の事業のことを、本当に理解しているだろうか」と。

銀行の融資担当も、取引先も、お客さんも。
同じことを感じるはずだ。

フルマラソンと同じだ。
AIが描いた完璧なシミュレーションがあっても、走るのは自分だ。
雨も降る。坂もある。膝も痛くなる。

でも、その痛みを知っている人の言葉は、重い。 AIには書けない重さだ。

■ 71点目を、書けるか

AIは、道具だ。

聞き方ひとつで、フルマラソンの準備にもなる。

質問を重ねれば、おにぎりの企画書にもなる。 壁打ち相手にすれば、相談の質が上がる。

でも、どこまで使っても、AIが出すのは70点から85点の間だ。

86点目からは、自分で書くしかない。

自分の目で見て、自分の頭で考えて、自分の腹で決める。

AIが出した10個の案から、「これだ」と選ぶ。
AIが書いた文章を、自分の言葉に変換する。
AIが作った骨格に、自分の熱を乗せる。

その「選ぶ」「変換する」「乗せる」が、人間の仕事だ。

AIの答えを、自分の言葉で言い直してみてほしい。
言い直せたなら、それはもうあなたの言葉になっている。
言い直せなかったなら、まだAIの言葉のままだ。

追伸
先日、自分もAIに「自己紹介を考えて」と聞いてみた。
返ってきたのは、こうだ。
「経営支援のプロフェッショナルとして、地方創生に貢献するビジネスコンサルタント」。

……かっこいい。かっこよすぎて、自分じゃない。

3回聞き直した。角度を変えた。具体を足した。
でも、どれも「それっぽい」だけで、自分の顔が浮かばない。

結局、自分の自己紹介は自分で考えるしかない。

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