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「会社に残れる人」より、「いつでも辞められる人」の方が安定している

最近、20代の採用面談をして、少し考えさせられることがあった。

転職や就職含め、仕事を選ぶとき、人は何を見ているのだろうか。

年収。
専門性。
福利厚生。
会社の知名度。
仕事のやりがい。
成長できる環境。
挑戦できるかどうか。

もちろん、どれも大事である。

ただ、話を聞いていて感じたのは、これらを一つずつ比較しているだけでは、本当に重要なものを見落とすのではないか、ということだった。

「安定を求める」が「挑戦したい」

この矛盾、多くの方に当てはまるのではないかと思う。

そこで考えたことが、

「この会社で働いた結果、3年後の自分の選択肢は増えているか」

という問いである。

私は最近、「安定」という言葉の意味そのものが変わってきているのではないかと思っている。


安定には、2種類ある

多くの人がイメージする安定は、

大きな会社に入る。
高い年収をもらう。
福利厚生が整っている。
簡単には会社がなくならない。

こうしたものだと思う。

これは間違いなく一つの安定である。

ただ、これは「会社が提供してくれる安定」である。

私はこれを「所属の安定」と呼びたい。

一方でもう一つある。

会社が変わっても、

業界が変わっても、

肩書がなくなっても、

「あなたに仕事をお願いしたい」

と言ってもらえる状態。

これは「市場価値の安定」である。

採用面談をしていて、私は後者の重要性を以前より強く感じるようになった。

会社にいられるから安定しているのではない。

会社を辞めても困らないから安定している。

同じ「安定」という言葉でも、意味はかなり違う。

なぜ人は「会社のブランド」を手放せないのか

人間は、所属している組織によって自分自身を認識する。

一般的には、所属集団が自己認識に影響を与えることが知られている。

たとえば、

「〇〇銀行の荒川です」

「〇〇商事で働いています」

「〇〇大学を卒業しました」

と言えば、それだけで相手の中に一定のイメージが生まれる。

会社名が、自分の説明を代わりにしてくれるのである。

これは非常に便利である。

営業もしやすい。

人にも会いやすい。

信用も得やすい。

親も安心する。

友人からの評価も高い。

だからこそ、会社のブランドには強い力がある。

問題は、そのブランドを使っているうちに、

「会社が評価されているのか」

「自分が評価されているのか」

が分からなくなることである。

私はここに、会社員人生の一つの大きな落とし穴があると思っている。

例えば40歳になったとき、

役職もある。

給料も高い。

名刺を出せば誰もが会社を知っている。

一見すると、ものすごく安定している。

しかし、もし会社名を全部消したらどうなるか。

「あなたは何ができますか?」

「誰があなたに仕事を依頼しますか?」

「あなた個人にお金を払いたい人はいますか?」

こう聞かれた瞬間に答えられなくなるのであれば、それは安定しているように見えて、実はかなり会社に依存している状態かもしれない。

人は「得たい未来」より、「失いたくない現在」を選びやすい

では、なぜ分かっていても環境を変えられないのか。

人は、何かを得る喜び以上に、今持っているものを失う痛みを強く感じやすい。

だから、

「もっと面白い仕事ができるかもしれない」

「もっと成長できるかもしれない」

「自分で事業を作れるかもしれない」

という未来より、

今の年収を失いたくない。

今の役職を失いたくない。

今のブランドを失いたくない。

周囲からの評価を失いたくない。

という気持ちの方が勝ちやすい。

さらに、

せっかくこの会社に入ったのだから。

ここまで何年も頑張ったのだから。

親も喜んでいるし。

同級生にもすごいと言われるし。

そんな理由が積み重なっていく。

すると、本当は未来について考えているつもりなのに、

実際には「過去に払ったコスト」と「今持っているもの」に意思決定を支配されていることがある。

これはキャリアにおいて、かなり怖い。

なぜなら、

「この先どう生きたいか」

ではなく、

「今まで築いたものをどう守るか」

が人生の中心になってしまうからである。

これは自分の社会人3年目~6年目の話しだ。

では、若いうちから自分のブランドを作るべきなのか

ここまで書くと、

「じゃあ大企業なんて辞めて、早く独立した方がいい」

という話に聞こえるかもしれない。

しかし、そうは思わない。

むしろ大企業や有名企業のブランドは、使えるなら徹底的に使った方がいい。

大きな案件に関われる。
優秀な人と仕事ができる。
体系的な教育を受けられる。
普通なら会えない経営者に会える。

信用があるから任せてもらえる仕事がある。

これは、ものすごい資産である。

私自身も振り返れば、会社の看板があったから経験できたことは数え切れない。

だから、

会社ブランドか、
自分ブランドか。

この二択自体が少し違うのだと思う。

本当に考えるべきなのは、

「会社のブランドを、どれだけ自分の資産に変えられるか」

である。

会社の看板を借りる。

その環境で経験を得る。

結果を出す。

専門性を作る。

人とのつながりを作る。

信用を積み上げる。

そして最終的に、

「〇〇社にいる荒川さん」

から、

「荒川さんだからお願いしたい」

へ変えていく。

私は、これが理想的なキャリアの作り方なのではないかと思う。

会社のブランドを「借りている人」と「乗っているだけの人」

ここには大きな違いがある。

会社ブランドを借りながら、

自分の実績を作っている人。
専門性を磨いている人。
社外にも人脈を作っている人。
仕事の成果を言語化できる人。
その人にしかできない仕事を増やしている人。

こういう人は、会社に所属していても自分のブランドが少しずつ育っていく。

一方で、

会社の知名度。
役職。
社内評価。
年功。
給与。

これは、一般的に積み上がっていくものだ。

この一般的に積みあがったものだけではん、自分自身の市場価値が上がっているとは限らない。

この違いは、20代ではほとんど見えない。

30代で少し差が出る。

40代になると、かなり大きな差になる。

50歳を迎えて、結果がはっきり分かるだろう。

ここがキャリアの怖いところ。

最初の10年間は同じように見えても、その後の選択肢が全く違ってくる。

「年収が高い会社」と「選択肢が増える会社」は違う

採用側としても、ここは非常に重要だと思っている。

会社は、どうしても

給与はいくらか。
休日は何日か。
福利厚生はどうか。

という条件競争に入りがちである。

もちろん、待遇は重要だ。

ただ、優秀な人ほど本当に見ているのは、そこだけではない。

「ここで何を任せてもらえるのか」
「誰と働けるのか」
「どれくらい意思決定できるのか」
「どんな実績を作れるのか」
「3年後、自分は何者になっているのか」

ということを見ている。

今の年収が50万円高い会社より、
3年後に自分の価値が300万円上がる会社。

今は有名ではなくても、
大きな裁量と圧倒的な経験を得られる会社。

こちらを選ぶ人もいる。

つまり、人材採用においても、

「うちは安定しています」だけでは弱い。

これからの会社は、
「ここに来ると、あなた自身が強くなります」
と言える必要がある。

会社に依存させる会社ではなく、
どこでも通用する人材を作る会社。

少し矛盾しているようだが、私はそういう会社の方が、結果的には優秀な人が残るのではないかと思っている。

いつでも辞められる。

でも、ここにいたい。

その状態が一番強い。組織になると思う。

一番怖いのは、会社員でいることではない

私は、会社員が悪いとも思わない。

独立が正解とも思わない。

大企業が悪いとも思わない。

ベンチャーが正義とも思わない。

どちらを選んでもいい。

一番怖いのは、

「選んでいないこと」

だと思う。

なんとなく今の会社にいる。

なんとなく転職しない。

なんとなく給料が上がっていく。

なんとなく役職がつく。

そして40歳になったとき、

「自分は、本当は何をしたかったんだっけ」

と初めて考える。

これはできるだけ避けたい。

今の会社のブランドに乗っていくのか。

そのブランドを使って、自分のブランドを作るのか。

別の環境に移って、自分の可能性を広げるのか。

独立するのか。

どれでもいい。

ただ、

「私はこれを選んでいる」

と言える人生の方がいい。

会社を辞めるのは、早ければいいわけではない。でも、自分のブランドを作り始めるのは早い方がいい

私はこれが結論である。

20代で会社を辞める必要はない。
30代で独立しなければいけないわけでもない。

ただ、
「会社の看板がなくなったとき、自分には何が残るのか」

という問いだけは、できるだけ早く持っておいた方がいい。

自分は何が得意なのか。
誰の役に立てるのか。
どんな実績を残しているのか。
誰が自分を信頼しているのか。

何なら「あなたにお願いしたい」と言ってもらえるのか。

会社のブランドは、いつかなくなる可能性がある。

役職もなくなる。
名刺も変わる。

でも、自分が積み上げた経験、信用、実績、人とのつながりは残る。

だからこそ、会社のブランドを否定する必要はない。

いっぱい借りればいい。

ただし、借りたブランドを、そのまま返して終わるのではなく、

自分の中に何かを残しておく。

ブランドなのか、スキルなのか、人脈なのか。

それがキャリアを考える上で、かなり大切なのではないかと思う。

採用面談をしながら、そんなことを考え、伝えていた。

最後に、もし今の自分に一つだけ問いを置くなら、私はこれがいいと思う。

「今の会社を明日辞めたとして、それでもあなたに仕事を頼みたい人は何人いるだろうか。」

少し怖い問いである。

でも、この問いに対する答えを増やしていくことこそ、

本当の意味での「安定」なのかもしれない。

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