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ぼくのおじちゃん


おじちゃんの家はちょっと古いけど、庭にいっぱい木が生えてて、本がいっぱいある。

ママはぼくがおじちゃんの家に行くこと、あんまり好きじゃないみたい。前は勉強教えてもらいなさいって言ってたのに。

おじちゃんの家の門は鍵がないから、ぼくは庭に入って「こんにちは」っていいながら引き戸を開ける。
おばちゃんはいつも廊下の奥から出てきて、「よくきたね」って迎えてくれる。

おじちゃんの家は古い木でできてて、日陰の匂いがする。畳はちょっと茶色くて、部屋の壁はザラザラした砂みたい。雨戸がガタついて動かないとき、おばちゃんを手伝ってあげてる。

でもぼくはおじちゃんの家が好き。おばちゃんがきれいにお掃除してるし、畳にごろんと寝転んで庭を見てるとなんか落ち着く。

おじちゃんの部屋は二つある。一つは二階にあって、ここはおじちゃんの大きな机と本がいっぱいある。この部屋はあんまり明るくない。お日様の光が当たると本が痛むからって前におじちゃんが言ってた。

もう一つのお部屋は一階の、窓が大きい明るい部屋。縁側があって、庭にも出れる。ここはおじちゃんの新しいお部屋。ベッドと椅子とピアノと古いステレオがある。ピアノは誰も弾かないから、花瓶を置く台みたいになってる。

おじちゃんはちょっと前からいつもこの部屋にいる。寝てる時が多い。起きてる時も、なんだか半分寝てるみたい。おばちゃんは「お薬のせいだよ」って言ってた。二階のおじちゃんの部屋はタバコくさいけど、この部屋はお日様の匂いがする。

おじちゃんが起きてる時にぼくと目が合うと、ちょっと笑ってくれる。でもお話はしない。おじちゃん、昔はお話が大好きだったのに。外国のこととか、本のこととか、いっぱい話してくれた。ぼくはおじちゃんの声が好きだった。優しくて低い声。怒ったところ見たことない。

おじちゃんがどうしてお話しなくなったのか、ぼくは知らない。おばちゃんに聞いても教えてくれない。おばちゃんはときどきおじちゃんにお薬を飲ませている。おじちゃんはお薬を飲むと眠くなるみたい。

おじちゃんはお話しなくなったけど、絵を描くのが好きになった。おじちゃんの絵はすごく細かい。おじちゃんは海とか、山とか、空とか、あと庭の木とかを描いている。絵を描いてる時のおじちゃんは、心がどっかに行ってるみたいに、話しかけても動かない。

ぼくはときどきおじちゃんの絵をこっそり後ろからのぞく。スケッチブックに鉛筆でシャッシャッて音を立てながら、おじちゃんは絵を描く。おじちゃんの鉛筆が動くと、真っ白な紙にどこかの景色が出てくる。

3時になるとおばちゃんがりんごとかホットケーキを食べさせてくれる。前はおじちゃんも一緒に3人で食べてたけど、最近はぼくとおばちゃんだけで食べる。おばちゃんはぼくのお話を聞くのが好きみたい。いつもにこにこ笑って聞いてる。

おやつを食べておじちゃんの部屋に戻ると、おじちゃんはだいたいまだ絵を描いてる。ぼくはおじちゃんの部屋の畳に寝転がって、二階のお部屋から持ってきた本を読む。ぼくは本を読むのが好き。おじちゃんの鉛筆の音も好き。

外で「夕焼けこやけ」が聞こえてくると、おばちゃんが部屋に入ってくる。ぼくは振り返っておじちゃんに小さい声で「じゃあ、ばいばい」って言う。おじちゃんはだいたい絵を描いてて気づかない。

ぼくが靴を履いてる間、おばちゃんは玄関で見ている。おばちゃんはいつも「一人で帰れる?」って言う。ぼくもいつも「もうママも帰ってくるし、近いから大丈夫」って言う。

引き戸をカラカラっと開けて外に出たら、オレンジ色の夕焼け空が見えた。

ぼくはおじちゃんの家が大好き。でも4月になったらあんまり来れなくなっちゃう。塾に行くことになったから。

おじちゃんみたいに本をいっぱい書く人になりたいなら、塾に通っていい大学に行った方がいいみたい。パパもママも言ってた。

ぼくが本を書いたら、おじちゃんに絵を描いてもらおうかな。おじちゃんはきっとぼくのお話にぴったりの絵を描いてくれるだろう。

そしたらその本をおばちゃんにプレゼントしたいな。おじちゃんがやってたみたいに、表紙の裏のとこにサインもしよう。おじちゃんと二人でサインしてあげたら、おばちゃん喜ぶかな。

ぼくは明日もおじちゃんちで本の続きを読もうって決めた。角のとこで振り返ったら、おじちゃんの部屋に黄色い電気がついた。




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