*白紙の私・#秋ピリカ募集
彼女はどこまでもキレイだった。完璧に滞りなく母親役を演じているように思えた。
いつだって本音がどこにあるかわからない眼差しで。考えてみれば、訴えかけるような感情で否定されたことも、褒められたこともなかった…
私っていてもいなくてもいい依存…
手作りのパン、手作りのお菓子、手作りのワンピース、手作りのトートバッグ、彼女の作った物をこれも愛の形なんだと、まるごと全部を
すみっこまで当たり前だと、当たり前に受け取っていた。
手がかからない、わがままを言わない私は母親役を演じるのにちょうどいい相手役。
キッチンで手際よく、センスよく料理を奏でる後ろ姿に
「今日はめんどくさくなっちゃったから、スーパーで好きな惣菜買って適当に食べよっか」って言われたらどんなにうれしいか想像してみて、言えない感情たちは私の心の紙に真っ黒でグチャグチャな曲線を描いていた。
「私ね4人兄弟の3番目じゃない。1番目は兄で初めての長男だから大切にされて、2番目は姉で初めての女の子で身体が弱かったからいつも気にかけてもらってて、4番目の弟は末っ子っていうだけで無条件に愛されてて、3番目の私は両親から本当に可愛がられなかったな〜、気にかけてももらえなかった。勉強もスポーツもそつなくこなしてたから『お前は大丈夫だ』みたいな感じでいつも『大丈夫だ』って言われてた。大丈夫じゃないのに… 名前も姉は百合子なのに、私は富代だよ」
手作りのパンもケーキもワンピースもトートバッグも、彼女なりに足りないものを埋めようと、作らずにはいられなかったのかもしれない。目の前のことを精一杯こなすことが彼女なりの愛情なのかもしれない。
まっすぐ顔をあげたら彼女の眼差しに白紙になった私が映っているのが、急にうれしくなった。
私の中の真っ黒でグチャグチャな曲線が白紙になった瞬間だった。
もしかして私たち似たもの同士かもしれない。
「ねぇ、今日の夜ごはん、スーパーの惣菜お互いに好きなもの買いに行こうよ!たまにはそんな夜ごはんも食べてみたいな」
今なら素直に真っ白なまま言える気がしていた。
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