Episode 003|触れて、語る静寂—言葉より正直なコミュニケーション

触れ合いって、
言葉よりもずっと正直だなと思う。

子供の頃から、
私は素直な気持ちを口に出すのが
あまり得意じゃなかった。

母と喧嘩をしても、
面と向かって「ごめんね」を言うのが
なぜか照れ臭くて。
その代わりに、小さな手紙を書いて渡していた。

大人になって、恋をするようになっても、
それはあまり変わらなかった。

「好き」
「寂しい」
「会いたかった」

本当は伝えたい言葉ほど、
喉の奥で、静かに引っかかってしまう。

甘えること。
本当の感情を、そのまま差し出すこと。
そこには、いつも少しの恥ずかしさがあった。

でも、不思議なことに。

触れ合っている時間だけは、
私はちゃんと、素直でいられる。

言葉にできなかった心の奥の感情が、
指先や、呼吸や、体温に溶けて、
まっすぐ相手に届いていく。

言葉では見えづらかった優しさや、思いやり。
触れ合いの中だと、ちゃんと感じられる。

会話では知り得なかった、
その人の生き方や、情熱まで。

——あぁ、
この人は、こうやって愛してくれているんだな。

何も言わなくても、
確かに伝わる瞬間が、そこにはある。

もちろん、
深く考えずに、
ただ心地よさや欲望に身を任せる時間も
嫌いじゃない。

でも歳を重ねるごとに、
触れ合いって、ただの快楽じゃなくて、
心で話すための静かなコミュニケーション
なんだと感じる。

無音の中で、
相手の“本当の顔”が、より鮮明になる。

触れ合いは静かだけど、
とても正直で、
確かなもの。


私はきっと、これからも。
触れ合いの中でしか話せない言葉を、
大切にしていく気がしている。

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