Episode 001|触れて、知る静寂ー言葉より身体が本音を知っている
言葉は、いくらでも取り繕える。
でも身体は、嘘をつけない。
触れた瞬間、
言葉より先に伝わるものがある。
言葉を何度交わすより、
身体を重ねた方が、“本当”の相手が見える。
古びたレトロさに、
興奮が増す感性も同じ。
何度も通って、スムーズに通れるようになった
フロント。
古びた絨毯には、無数の足跡と、
そこを通った人たちの秘密が染み込んでいる。
薄暗い階段を降りるたび、
世界の音が少しずつ遠ざかる。
その先に、私の静寂がある。
「こんにちは」
挨拶だけを交わして、私は少しの緊張の中で、
すべての感覚に集中する。
貴方から漏れる呼吸を、聞き逃さないように。
貴方の指先から感じる優しさを、
逃さないように。
私に触れる手の力強さに、
会いたかった気持ちを感じる為に。
激しさの中から見える、
会えなかった時間の寂しさ。
その奥にある、貴方の理不尽さを知る為に。
帰り際、
私に話しかける貴方の声のトーンが
少しだけ柔らかくなって、
その瞬間、今日も確かに愛を感じる。
ひとり歩く帰り道。
多くの言葉を交わしたことのない貴方に、
また少し、好きを募らせている。

