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島田高志郎選手とアイスダンス


はじめに

2025年5月9日、島田高志郎選手と櫛田育良選手とのアイスダンスでのカップル結成が発表されました。
その翌日の5月10日にコラントッテのトークイベント:〜心をつなぐ〜トークショー2025が開催されました。
World Figure Skating Webではイベントの詳報が公開されています。

この記事の2ページ目にアイスダンスへの転向についての島田選手の言葉があります。以下引用

「ずっとアイスダンスに憧れがあって、そのなかでシングルをがんばって続けてきていたんですけど、自分の股関節の怪我などで、自分には無理なんだろうなという思いもありつつ、やってみたい思いもありつつだったなかで、自分のなかでがんばりたいと思ったきっかけがたくさんありまして。それこそ将来的にはコーチや振付師としてスケートに携わっていくと思い描いてるなかで、それまでに何ができるかと思ったときに、アイスダンスを強い覚悟を持ってやれるんじゃないかという思いがあったので、決断しました。」

https://worldfigureskating-web.jp/news/12799/2/

これを読んで印象的だったのが「ずっと憧れがあって」という言葉でした。「憧れ」からは「アイスダンスに関心があった、興味を抱いた」といった言葉よりもさらに熱や強さやボジティブなものとかキラキラした想いが感じられる気がします。
その「憧れ」にぼんやりとした思い当たるものもありました。大会の会場でアイスダンスの試合や練習を見ていたという目撃情報が何度かSNSに上がっていたし、シャンペリー(スイス)のリンクのイベントでステファン・ランビエールコーチと組んでアイスダンスのステップを踏んでいる動画もSNSで見かけました。
そして「がんばりたいと思ったきっかけ」がたくさんあったという言葉。

この「憧れ」「きっかけ」をキーワードに、ノービスの頃から島田選手を応援してきたファンの視点でこれまでの彼のスケート人生の中の “アイスダンス成分”“決断へのきっかけ” を探してみたいと思いました。


愛媛のリンクの先輩たち

島田選手がスケートに出会ったのが2007年。拠点を岡山に変えたのが2011年。この間の練習拠点は季節リンクのイヨテツスポーツセンター。島田選手は「愛媛イヨテツSC」に所属していたようです。

ちょうどその期間のインカレ(日本学生氷上競技選手権大会)のアイスダンスで愛媛のチームが優勝しています。

第80回(2008年)、第81回(2009年)には竹井杏奈(松山大学)/竹井達也(聖カタリナ大学)組が優勝、第82回(2010年)には竹井杏奈/玉田裕也(愛媛大学)組が優勝。
竹井杏奈/玉田裕也組は2011年の全日本選手権にも出場しています。


愛媛県にあるアイスリンクはイヨテツスポーツセンターだけで、そこは夏にはプールになる季節リンクです。通年リンクがない愛媛はフィギュアスケートの競技人口が多くはありません。そしてシングルに比べてアイスダンスの競技人口は極めて少ない。にも関わらず、島田選手がスケートに出会った頃の愛媛のリンクに競技としてアイスダンスをするスケーターがいたわけです。
竹井達也さんは2008年、玉田裕也さんは2010、2011、2013年に男子シングルで全日本選手権にも出場しています。

小学生だった島田選手がこの大学生の先輩たちと一緒に練習することもあったことでしょう。同じチームの先輩たちはスケートのお手本であり目標だったのではないでしょうか。そんな先輩たちのアイスダンスを憧れの目で見つめていたかもしれません。スケートを始めた頃からアイスダンスが身近にある環境だったと言えそうです。

2023年1月の「イマナニ」(愛媛のイベント情報サイト)に島田選手と竹井達也さんとのエピソードが紹介されています。


岡山の同年代アイスダンサー

2011年小学4年生の年度途中に島田選手は岡山に転居し、2017年の春まで岡山国際スケートリンクを拠点として練習します。
その時期のアイスダンスのジュニア、ノービスの全日本選手権に岡山の選手が複数出場しています。

2012年全日本ノービス

1位 平山姫里有(倉敷FSC)/ 唐川常人(広島スケートクラブ)組
3位 土井琴琳(岡山SC)/時國隼輔(岡山FSC)組

2013年全日本ノービス

3位 平山姫里有(倉敷FSC)/ 櫛田一樹(倉敷FSC)組

2015年全日本ノービス

1位 柏野茉衣(倉敷FSC)/柏野雄飛(倉敷FSC)組
2位 松本葉純(倉敷FSC)/杉山匠海(倉敷FSC)組

2015年全日本ジュニア

3位 平山姫里有(倉敷FSC)/東健太(倉敷FSC)組

2016年全日本ノービス

1位 吉田唄菜(岡山SC)/杉山匠海(就実学園)組
2位 柏野茉衣(倉敷FSC)/柏野雄飛(倉敷FSC)組

2016年全日本ジュニア

4位 吉田唄菜(岡山SC)/杉山匠海(就実学園)組
5位 柏野茉衣(倉敷FSC)/柏野雄飛(倉敷FSC)組

アイスダンスでの全日本選手権優勝経験もある有川梨絵コーチが岡山を拠点としていることもあり、岡山にはアイスダンスの選手それも島田選手と同年代のスケーターが何人もいました。アイスダンスを練習するスケーターを拠点のリンクで見かけたこともあるのではないでしょうか。
2016年に全日本ノービスで優勝し、全日本ジュニアに推薦で出場した「うたくみ」の杉山匠海選手は島田選手と同じ高校(就実学園)の一学年下の後輩でもあります。同年代のアイスダンス選手が身近にいた岡山時代もアイスダンスが近くにある環境だったと言えそうです。


2013年グランプリファイナル福岡で

福岡で開催された2013年のグランプリファイナルで当時ノービスA1年目の島田選手は三宅星南選手、木科雄登選手らとともに花束拾い(フラワーボーイ&フラワーガール)を務めました。その時のエキシビションのフィナーレで出演選手と花束拾いのちびっこスケーターが一緒に周回する場面がありました。三宅選手は羽生結弦選手、木科選手は浅田真央選手と手を繋いで周回。島田選手と手を繋いでいたのが、バンクーバー五輪金、ソチ五輪銀、平昌五輪金メダリストのヴァーチュ&モイア組のテッサ・ヴァーチュ選手でした。
島田選手とアイスダンスとのほんのちょっとした縁がここにも。Absolute SkatingのSeason 2013-14: Beyond the Programs - Practicesの「Grand Prix Final 2013」にその時の写真があります。


ジュニア国際大会でのチーム日本

ジュニアグランプリシリーズや世界ジュニア選手権大会などは日本から派遣される選手は多くても10人程度。チーム日本として他のカテゴリーの選手とも触れ合うことがあっただろうと思います。アイスダンスの選手とも応援したり応援されたり、一緒に食事をする機会などもあったかもしれません。
島田選手のジュニア時代に出場した大会で日本のアイスダンス選手がいた大会は以下の通り。 ( )は出場のアイスダンス選手

ジュニアグランプリ クロアチア大会2015(前田久美子/渡邊純也 組)


ジュニアグランプリ エストニア大会2016
(深瀬理香子/立野在 組)


世界ジュニア選手権大会2017
(深瀬理香子/立野在 組)

世界ジュニア選手権大会2019(高浪歩未/池田喜充 組)


同年代仲間のカップル競技への転向

島田選手と同期でシングル競技からアイスダンスに転向した選手に西山真瑚選手がいます。彼は全日本ノービスでは一緒に表彰台に上がったこともあるライバル。10代から海外拠点(西山選手はカナダ)で頑張っていて、大学が早稲田の通信過程という島田選手との共通点があります。
「Quadruple Axel 2021 シーズンクライマックス」(山と渓谷社)には当時すでにアイスダンスに挑戦していた西山選手とのZOOM対談があり、西山選手への賞賛とアイスダンスへの憧れが語られています。

2022年の全日本選手権に出場した松井努夢選手も島田選手と同期で岡山でのリンクメイトでした。
さらにアイスダンスではありませんが、カップル競技であるペアに転向した選手には同期の森口澄士選手、一学年下で島田選手と同じ長沢琴枝コーチに師事していた本田ルーカス剛史選手がいます。二人とも木下アカデミーの所属で、Bloom On Iceで毎年共演していたしチームシャンペリーが宇治で合同合宿したりと交流する機会も多かったように思います。
シャンペリーのチームメイトだったイギリスのルーク・ディグビー選手もシングルからペアに転向して頑張っています。
彼らの存在もアイスダンス転向への決意の後押しとなったのではないでしょうか。

2023年12月の全日本選手権での1枚。この中の男子3人がカップル競技の選手に

2022年11月のGPイギリス大会。ディグビー選手もペアで同じ大会に出場していました。


偉大な先輩たち

2020年に高橋大輔さんがシングルからアイスダンスに転向したこととその後の躍進も大きく影響したと思われます。
「かなだい」こと村元哉中&高橋大輔組の最初の海外での国際試合であった2021年のワルシャワカップには島田選手も出場していました。男子シングルの試合が終わっていた最終日にアイスダンスのフリーダンスがあったので島田選手がそれを観戦したことは十分考えられます。また試合翌日のポーランドフィギュアスケート連盟100周年記念エキシビションにかなだいと島田選手が出演しています。

もしかすると話す機会があってアイスダンスに誘われていたかもしれませんね。(高橋さんは2022SOIのトークタイムに宮原知子さんをアイスダンスに誘っていました。いろいろな人をアイスダンスに勧誘していたという噂あり)

また、木下グループの先輩である木原龍一選手もシングルからペアへの転向でした。すぐには結果を出せず、パートナーを変え何年もの努力の末に世界トップにたどり着いた先輩の姿に勇気をもらえたのではないでしょうか。

Bloom on Ice 2022の写真


アイスショーでの経験

2021年Stars on Ice(SOI)八戸でのグループナンバー「Lost in Japan」でほんの少しですが女性と組んだり同じリズムに合わせて滑るという経験をしています。
そして2022、2023年のSOIではグループナンバーのキャストを務めます。そのキャストにはそれぞれの公演に錚々たる世界トップクラスのアイスダンサーがいました。マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ、ジャン=リュック・ベイカー、マディソン・ハベル&ザカリー・ダナヒュー、ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ、パイパー・ギレス&ポール・ポワリエ。
これらのグループナンバーでは誰かと組むという振り付けはありませんでしたが、同じ曲に合わせて滑るという体験ができたし、何よりも超一流のアイスダンサーと一緒にプログラムを作り上げるという経験はどれほどの刺激になったことでしょう。

SOI 2023のグループナンバーの練習風景が垣間見られます。

島田高志郎選手のインスタグラムから
2022年SOI大阪&東京グループナンバー(共演したアイスダンサーはマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ、ジャン=リュック・ベイカー、小松原美里&尊)

2022年SOI八戸(グループナンバーのメンバーは1枚目 
共演したアイスダンサーはマディソン・ハベル&ザカリー・ダナヒュー、ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ)

2023年SOIグループナンバーメンバー(共演したアイスダンサーはマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ、パイパー・ギレス&ポール・ポワリエ)

そして2024年の滑走屋と氷艶。
2024年の滑走屋は本番に出演できなかったのでどの演目に出ることになっていたのかはわかりませんが、配信されたメイキングドキュメンタリーにあったリフトのレクチャーのシーンに島田選手もいたので、誰かと組んでするアイスダンス的なことを体験する機会があったのではないかと思います。(2025年の滑走屋ではHeist、Cry Me A Riverでダンスパートあり。2025年の年明けからアイスダンスの練習をしていたということですので、櫛田選手との息の合った様子が見られたのも納得です。)

氷艶では高橋大輔さんにリフトされました。リフトだけでなく二人で組んで踊るシーンも。

2024年8月のスイス:シャンペリーでのアイスショー「L'Apprenti Sorcier」にはフィンランドのユーリア・トゥルッキラ&マティアス・ヴェルスルイス組も出演していました。この二人もまたシングルからの転向。ISUBIOによると2016年にアイスダンスに転向したようです(転向当時の二人は21歳)。そして2022年のヨーロッパ選手権では銅メダル獲得。
男性のヴェルスルイスさんは島田選手と同じ身長176cmですらりとした体型です。彼にとってのアイスダンスのロールモデルに思えたかもしれません。

「L'Apprenti Sorcier」の公演風景


大歳トレーナーとの出会い

島田選手はジュニアの頃から怪我に悩まされ、ここ何年かは股関節の状態があまり良くなかったといくつかのインタビューで話しています。トレーナーの大歳章祐さんとタッグを組み始めたのは2022年から。この年の全日本選手権は2位という好成績で、島田選手自身「心技体がかみ合っていた」と語っていました。「体」の部分に関してトレーナーの貢献度は小さくないはずです。ただやはり身体の状態に波があることはその後の試合結果にも現れています。それでもトレーナーさんとともに身体を作りケアをしてもらうことで競技を続けていく見通しができたのではないでしょうか。



振付師への憧れ

コラントッテのイベントでは「将来的にはコーチだったりとか振付師としてスケートにずっと携わっていくと思い描いている」ということも話されていたようです。
コーチをするならアイスダンスを経験することで指導の幅は広がります。

そして振付師。島田選手がこれまでに振り付けてもらった振付師をあげてみます。宮本賢二、佐藤操、ステファン・ランビエール、ニコライ・モロゾフ、サラ・ドラン、ジェフリー・バトル、シェイ=リーン・ボーン、村元哉中(敬称略)。ランビエールコーチ、サラ・ドラン、バトル以外はアイスダンサー。(バトルは子供の頃に少しアイスダンスもやっていたそうです) 
昨シーズンのシェイ=リーン・ボーンさん、村元哉中さんの振付は見る側として新しい島田選手に出会えたようで新鮮でした。島田選手ご自身も何か感じるものがあったかもしれません。アイスダンスを経験することは振り付けの引き出しを増やすことになりそうです。

パートナー:櫛田育良選手

私はBloom on Iceを2021年から毎年観に行っているので櫛田育良選手の演技を見る機会が何度かありました。正直なところ2023年までは「みんな上手だな」と思う「みんな」の一人で、ショーを見終わった後に特に印象に残るわけではありませんでした。
気になり始めたのが2023-24シーズンのフリー「The Little Prince」 最初のふっと息を吐く仕草と表情。ところどころに組み込まれた印象的な振り付け。この子の演技、好きかも…そう思い始めていました。そして2023年12月のメダリストオンアイス(MOI)でのFearless。リズム感、多彩な振り、観客へのアピール。なんてショー映えする子だろう。FODで何度もその演技を見返すくらいに魅了されました。さらに2024-25シーズンのショートプログラムのSwayはその衣装も相まってシーズンのmy favorite programのベスト5に入るくらい大好きなプログラムです。
(動画:ジュニアグランプリ2024ラトビア大会ショートプログラム)

その櫛田選手がパートナー!
滑走屋広島公演での二人を見て素敵な組み合わせと思った人がたくさんいるはず。

2021年11月の中日スポーツ

記事の中に「ペアやアイスダンスにもパートナーが現れれば再挑戦したい意欲もある」とあります。アイスダンスに「意欲」や「憧れ」のある二人が出会えたことを嬉しく思います。

パートナーが決定する過程は今後インタビューなどで明らかにされていくでしょうか?

滑走屋2025 広島公演より



2025年6月14日に日刊スポーツの単独インタビュー記事が出ました。

記事から引用

「シングルで得られなかったことに五輪や世界選手権という場での、達成感があります。シングルでも、もっと欲深くいけば良かったけど、置かれた状況もあって自分を柔らかくしてしまった。それでも『また頑張ろう』と思えるきっかけが、アイスダンスでした」

https://www.nikkansports.com/sports/news/202506130000837.html


23歳からのスタートは決して早くはありません。ノービス、ジュニアの頃からアイスダンスをしてきた選手に追いつくことは並大抵のことではないと誰よりも島田選手ご自身がわかっていることでしょう。
それでも早くはないけれど遅すぎるわけではない。0からのスタートですぐに結果を出すことは難しいでしょうが、五輪や世界選手権に向けて「頑張ろう」という気持ちを持ち続け、5年10年練習と経験を重ねていけばこの二人ならば開けてくる未来があるように思います。今のアイスダンスでの世界トップクラスの多くは30歳を超えています。高橋大輔さんは33歳での転向でした。

一ファンとしてアイスダンスへの0からの挑戦とその成長を見ることができることを嬉しく思います。

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