第6夜 買っても買っても、満たされない夜
お金で埋めようとした、こころの空白
その女性は、診察室に大きな紙袋を持って入ってきました。
淡いベージュに、上品なロゴの入った紙袋でした。
彼女は椅子に座る前に、それを足元へそっと置きました。
そして、少しだけ肩をすくめるようにして、自嘲気味に笑いました。
「また、買ってしまいました」
私は、机の上に置いていたカルテから顔を上げました。
紙袋は、とてもきれいでした。
中には、今日買ったばかりの服が入っているのだと、彼女は言いました。
「本当は、そんなに必要ではなかったんです」
彼女は、視線を紙袋に落としたまま続けました。
「クローゼットには、まだ着ていない服もあります。似たような色のワンピースも、何枚もあります。バッグだって、靴だって、もう十分あるんです」
そこで一度、言葉が止まりました。
「でも、買ってしまうんです」
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