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琵琶湖は女神の涙だった──湖北・湖南・湖西・湖東の神々が守る永遠の湖 第十五話 湖を求める者たち

湖のほとりの村は
静かに豊かになっていた。

魚は多く、

水は清く、

山には獣がいる。

人は
この湖に守られていた。

村の火は
年々増えていく。

家が増え、

子供が増え、

舟も増えた。

湖は
人の命を支えていた。

だがある日。

湖の向こうの山から
別の人々が現れた。

知らない顔だった。

彼らは
武器を持っていた。

槍。

弓。

そして
鋭い目。

村人たちは
戸惑った。

「旅人か?」

男たちは首を振った。

そして言った。

「ここは良い水だ」

その言葉は
少し重かった。

村の老人が
前へ出た。

「この湖は」

「みんなの湖だ」

男たちは笑った。

「そうか?」

「なら」

「俺たちも使う」

その言葉に
村の空気が変わる。

青年は
少女の前に立った。

「ここは村だ」

「勝手なことはさせない」

男たちは
静かに青年を見る。

そして
ひとりが言った。

「湖は広い」

「だが魚は限られている」

その言葉は
静かだった。

だが意味は
はっきりしていた。

その夜。

湖のほとりに
重い空気が漂った。

村人たちは
火を囲んでいた。

誰も
笑わない。

少女は
湖を見ていた。

湖は
いつもと同じように
静かだった。

だが

何かが
変わり始めていた。

湖の中心で
光が揺れる。

女神、淡海は
岸の火を見ていた。

人が増える。

人が争う。

それは
遠い昔から

何度も繰り返されてきた。

女神は
それを知っている。

山の上では
四柱の神が湖を見ていた。

瀬田流神が言う。

「水は分けられる」

比良守神が答える。

「だが欲は分けられぬ」

伊吹嶺神は
静かに言った。

「人は豊かになるほど」

「争いを生む」

鈴鹿照神は
湖に光を落とした。

「それでも」

「人は希望も生む」

湖の岸で
青年は少女に言った。

「大丈夫」

「この湖は守られている」

少女は
少しだけ笑った。

だが

その胸には
小さな不安があった。

湖は

優しい。

だが

人は

時に
湖よりも
激しくなる。

その夜

女神の涙が
また湖へ落ちた。

それは

悲しみの涙だった。

(第十六話へ続く)

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