琵琶湖は女神の涙だった──湖北・湖南・湖西・湖東の神々が守る永遠の湖 第七話 東の神 ― 鈴鹿照神
北には
伊吹嶺神が立った。
南には
瀬田流神が生まれた。
西には
比良守神が嵐を受け止めている。
三柱の神によって
湖は少しずつ安定し始めていた。
だが湖には
まだ一つだけ足りないものがあった。
それは
光。
夜になると
湖は暗くなる。
山の影が水面を覆い、
風が湖を揺らす。
その闇の中で
湖は不安になる。
水は
光を求めていた。
女神、淡海もまた
夜の湖を見つめていた。
涙はまだ
完全には止まっていない。
湖は広がり、
水は静かに揺れている。
だが闇は
心を不安にさせる。
そのとき
東の空が輝いた。
湖の東には
大きな山脈がある。
それが
鈴鹿山脈
古くから
朝日が最初に触れる山。
夜が終わり、
光が生まれる場所。
その山の頂に
ひとりの神が立った。
若い神だった。
長い黒髪。
静かな瞳。
そして
その手には
月の光。
神の名は
鈴鹿照神(すずかてるのかみ)。
東の守護神。
光の神。
鈴鹿照神は
湖を見つめた。
夜の湖。
揺れる水面。
そして
涙を流す女神。
神はゆっくりと
空を見上げた。
そして
手を掲げる。
すると
月が輝いた。
光が湖へ降りる。
静かな光。
優しい光。
その光は
水面を照らした。
湖は
初めて夜の光を得た。
湖の波は
光を映す。
揺れる水面が
月の光を広げる。
湖は
闇の中でも
輝くようになった。
その光を見て
女神は気づいた。
この湖は
もう孤独ではない。
北には
伊吹嶺神。
南には
瀬田流神。
西には
比良守神。
そして東には
鈴鹿照神。
四柱の神が
湖を囲んでいる。
女神は
静かに言った。
「ありがとう」
その言葉は
風に乗り、
山へ届く。
四柱の神は
同時に湖を見た。
それが
初めての瞬間だった。
琵琶湖四神が揃った瞬間。
湖は
完全な守りを得た。
水は溢れない。
嵐は荒れない。
夜も恐くない。
琵琶湖は
女神の涙でありながら
世界を守る湖になった。
だがこの神話は
まだ終わらない。
なぜなら
この湖には
まだ
大きな秘密があるからだ。
女神が
なぜ泣き続けるのか。
それは
誰もまだ知らない。
その真実が明かされるのは
もっと後のことになる。
そしてその物語は
ここから始まる。

(第八話へ続く)
