CAFESで考えるカフェ開業のすべて|E|Economics なぜ、忙しいのに儲からない店が生まれるのか。
CAFESで考えるカフェ開業のすべて|E|Economics
なぜ、忙しいのに儲からない店が生まれるのか。
図面の上では、うまくいっている。
コンセプトも決まった。
誰に来てほしいかも見えてきた。
どう来てもらうか、どう通ってもらうかも考えた。
それでも、なぜか不安が消えない。
「……これ、本当に大丈夫かな」
美咲はノートを閉じながら言った。
「何が?」
カフワは静かに聞く。
「人は来そうなんだよね」
「うん」
「でも、それでちゃんとやっていけるのかが、わからない」
少しだけ間が空く。
カフワはゆっくり頷く。
「いいところに来たね」
「え?」
「それが、Eの話」
■ 売上と利益は違う
「人が来る設計はできてる」
カフワは言う。
「でもね」
「それで“成立する”とは限らない」
美咲は首を傾げる。
「どういうこと?」
「売上が立つことと、残ることは別だから」
■ 一度、数字にしてみる
カフワはノートを引き寄せる。
「仮にこうしよう」
客単価:800円
席数:15席
回転:1.5回転
「売上は?」
「えっと……18,000円くらい」
「そう」
「で、ここから削られる」
家賃
人件費
原価
「ざっくり、売上の7割前後」
美咲の手が止まる。
「……え、そんなに?」
「うん」
「だから、残るのはかなり少ない」
■ なぜこうなるのか
「カフェってね」
カフワは続ける。
「構造的に、利益が出にくい」
長く滞在する
回転が上がりにくい
単価が上げにくい
「つまり」
「普通にやると、成立しない」
美咲は少し笑う。
「それ、先に言ってほしかったんだけど」
「みんな、ここで気づくから」
■ だから“モデル”を決める
「じゃあ、どうすればいいの?」
カフワは言う。
「どの構造で成立させるか、先に決める」
■ ① 高回転モデル
「例えば、駅前やオフィス街」
すぐ出る
テイクアウト
毎日来る
「これは“回転で成立させる”」
「ドトールとか?」
カフワは頷く。
「そう。あとはコンビニのコーヒーも同じ構造」
「考えずに買う、ってやつか」
「そう。“習慣で回す”モデル」
■ ② 高単価モデル
「逆に、長く過ごす店」
空間がいい
食事もある
少し高い
「……コメダ?」
カフワは少し笑う。
「いいとこ突くね」
「コメダ珈琲は典型的な高単価モデル」
「回転は遅いけど」
「単価と滞在価値で成立してる」
■ ③ 常連モデル
「住宅地ならこれ」
毎日来る人
顔が見える
習慣になる
「これは“関係性で成立させる”」
美咲はゆっくり頷く。
「……全部、違うね」
「うん。でも共通点がある」
「なに?」
「人の行動を設計してる」
少し間が空く。
「人ってさ」
カフワは続ける。
「合理的に選んでるつもりで」
「ほとんど無意識で動いてる」
朝だから寄る
いつもの店だから入る
なんとなく落ち着く
「それを設計してるだけ」
■ 価格は“味”では決まらない
美咲は少し考えてから言う。
「じゃあさ」
「値段ってどうやって決めるの?」
カフワは少しだけ笑う。
「味じゃないよ」
「え?」
「味だけで決まるなら、全部同じになる」
「じゃあ何で決まるの?」
「文脈」
誰が
どこで
どんな時間に飲むか
「その中で、“払える価格”が決まる」
■ もう一つの考え方
少し間を置いて、美咲が言う。
「……じゃあさ」
「コーヒー以外で稼ぐのは?」
「物販とか、イベントとか」
カフワは少しだけ笑う。
「いい視点だね」
「実際、そういう店も多いよね」
「じゃあ、それやれば成立する?」
少し沈黙が流れる。
カフワはゆっくり首を振る。
「それは、“強くなる方法”であって」
「成立する方法ではない」
美咲は黙る。
「飲食が成立していない店は」
「何を乗せても、崩れる」
「逆に」
「飲食が成立している店は、何を乗せても強くなる」
「コミュニティとかイベントは」
「“拡張”なんだよ」
「基礎じゃない」
■ CAFESはここで繋がる
カフワは静かに言う。
「Cで人を決めて」
「Aで来方を決めて」
「Fで通い方を決める」
「その全部が」
「Eで“成立するか”になる」
美咲はゆっくり頷く。
「……でもさ」
「うん」
「同じような条件でも、選ばれる店と選ばれない店あるよね」
少しだけ、空気が変わる。
カフワはすぐには答えない。
「それが、最後の話」
ノートの上には、まだ答えが書かれていない。
このまま進めば、店はできる。
でも、それが選ばれるかは、まだわからない。
カフェは「人が来るか」ではない。
「成立する構造になっているか」で決まる。
