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人件費率を「見ていない」経営者が直面するリスク──中小企業の人件費管理入門

「会社の人件費率、いくつですか?」

経営者の方にこう聞くと、売上や利益はすぐ答えられても、人件費率になると「えーっと…」と止まる方が、本当に多いのです。

売上は毎月見ている。
利益も気にしている。
でも、人件費率(人件費 ÷ 売上高)を毎月見ている経営者は、
ぐっと少なくなります。

実はこれ、静かに会社を蝕むことがあります。

この記事では、人件費率を見ないことのリスクと、中小企業が今日から始められる人件費管理の第一歩をお伝えします。


なぜ「見ていない」と危険なのか

人件費は、会社のコストの中でも特別な性質を持っています。
いったん上がると、簡単には下げられない「固定費」だからです。

仕入れなどと違い、人件費は「来月から半分に」とはできません。

だからこそ、じわじわ上がっていることに気づきにくく、気づいたときには利益を大きく圧迫している、ということが起きます。

  • 一人ずつ昇給させていたら、いつの間にか総額が膨らんでいた

  • 売上は横ばいなのに、人は増えていた

  • 忙しい時期に合わせて採用したら、暇な時期に人が余っていた

どれも、「人件費率という体温計」を見ていれば、もっと早く気づけたはず。

人件費率は、会社の利益の"体温"を測る指標です。


人件費率とは?──まず「数字を出す」だけでいい

むずかしく考える必要はありません。

人件費率 = 人件費 ÷ 売上高 × 100(%)

ここで「人件費」には、給与だけでなく、賞与・社会保険料の会社負担・退職金の積立・福利厚生費、も含めて考えます。
(給与だけ見ていると実態より低く見えます)

業種によって、適正な水準はまったく違います。
ざっくりした目安は、こんなイメージです。

飲食・サービス業:30〜40%
介護・福祉:50〜60%台
製造業:15〜30%
建設業:15〜25%
小売業:10〜20%

ただし、この数字に一喜一憂する必要はありません。
業種・規模・業態で大きく変わるからです。

大事なのは他社と比べることより、
まずは、「自社の人件費率が、去年より上がっていないか」という推移を見ること。

上がり続けているなら、必ず理由があります。

補足:もう一歩踏み込むなら「労働分配率(人件費 ÷ 粗利益)」を見ると、原価構造の違いを吸収できてより本質的です。まずは人件費率から、慣れたら労働分配率も、で十分です。


人件費率が高くなる、3つの構造的な原因

人件費率がじわじわ上がる会社には、共通する「構造」があります。

① 非効率な業務配置
人はいるのに、手が空く時間が多い。
特定の人に仕事が偏り、別の人は待っている。
「忙しい/暇」の波が部署でバラバラ。

これは「人が多い」のではなく「配置と段取りの問題」であることが多いものです。

② 余剰人員
売上が伸び悩んでいるのに、人員はそのまま、あるいは増えている。

特に「繁忙期に合わせて採用し、閑散期も雇い続ける」と、
年間を通すと人が余ります。

③ 給与と生産性の乖離
年功的に給与が上がり続け、
「その人の貢献」と「その人の給与」が合わなくなっている。

本人が悪いのではなく、上がる仕組みしかない(下がる調整がない)ことが原因です。

この3つは、どれも「気づかないうちに」進みます。
だからこそ、定点観測が必要なのです。


「採用を増やす前に」人件費率を見る

人手が足りないと感じたとき、多くの経営者はすぐ「採用」を考えます。
けれど、ちょっと待ってください。

採用は、固定費を増やす意思決定です。
一人増やせば、その人の給与・社会保険料・教育コストが、毎月、長期にわたって積み上がります。

人件費率を把握しないまま増員すると、
「売上は増えないのに人件費だけ増えた」=率が悪化、
という事態になりかねません。

採用の前に、まず問うべきは、
「今の人員で、配置や段取りを変えれば回らないか?」
「今の人件費率は、増員に耐えられる水準か?」

人件費率という"地図"を持って初めて、「採用すべきか / 今の体制を見直すべきか」を冷静に判断できます。


今日からできる「月1回の簡易チェック」

立派な管理表は要りません。
月に1回、3つの数字を1枚に並べるだけで十分です。

【月次・人件費かんたんチェック】

① 今月の売上高  :     円
② 今月の人件費  :     円
   (給与+賞与按分+社保会社負担+退職金積立+福利厚生)
③ 人件費率(②÷①):     %
   → 先月・去年同月と比べて、上がった?下がった?

ポイントは、「率の推移」を3ヶ月・半年と並べて見ること。
1ヶ月だけでは波があってわかりません。
並べて初めて、「じわじわ上がっている」という危険なサインが見えてきます。

この習慣があるだけで、「気づいたら手遅れ」を防げます。


まとめ

人件費率は、会社の利益の「体温計」です。

  • 人件費は下げにくい固定費。見ていないと、じわじわ利益を圧迫する

  • まず人件費率(人件費÷売上高)を数字で出す。給与以外(賞与・社保・退職金積立等)も含める

  • 数値は業種で違う。他社比較より「自社の推移」を見る

  • 高くなる原因は①非効率な配置 ②余剰人員 ③給与と生産性の乖離

  • 採用を増やす前に人件費率を確認し、月1回の簡易チェックを習慣に

まず今月、自社の人件費率を一度、計算してみてください。
「うちは何%なんだろう」と知ることが、すべての始まりです。


(株)豊明コンサルティング 上口幸博

地方中小企業(10〜100名規模)専門の人事・組織コンサルタント。
北陸を中心に全国対応。
人件費・賃金の管理から評価制度・管理職育成まで、
「作って終わり」にしない伴走型支援が特長。


このnoteが参考になった方へ

「自社の人件費率を把握し、適正な水準に整えたい」
「採用すべきか、今の体制を見直すべきか判断したい」
という段階になったら、自社の数字に基づいた整理が必要になります。

初回45分は無料でお話を聞きます。
オンライン・北陸3県は訪問も対応しています。


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