2代目経営者が組織づくりで最初にやるべきこと──先代の影と自分の言葉の間で
「自分なりに会社を良くしたい。でも、何かを変えようとすると、必ず抵抗にあう」
事業を継いだ2代目・3代目の経営者が感じることかと思います。
「先代のやり方を変えようとすると、古くからの社員が動かない」
「親父のときはこうだった、と言われると、何も言えなくなる」
「自分のカラーを出したいのに、いつまでも先代の影がついてまわる」
事業承継の本当の難しさは、財務でも事業でもなく、
「先代の影と、自分の言葉の間」にあります。
この記事では、2代目経営者が組織づくりで最初にやるべきことを、
3つの柱でお伝えします。
なぜ「変えようとすると抵抗される」のか
まず、抵抗の正体を正しく理解することから始めましょう。
長く勤めてきた社員にとって、
先代のやり方は「自分たちが守ってきたもの」です。
その方法で、会社をここまで支えてきた誇りがあります。
だから、新しい経営者が「変えます」と言うと、社員にはこう聞こえます。
「これまでのやり方は間違っていた」=「自分たちの過去は無駄だった」
抵抗は、変化への反対だけではありません。
過去への敬意の、裏返しなのです。
ここを取り違えると、
「抵抗する社員=抵抗勢力」という対立構図に陥ります。
そうなった瞬間、組織づくりは戦いになり、誰も幸せになりません。
抵抗を「敵」ではなく「大事にしてきたものがある証拠」だと捉える。
ここがすべての出発点です。
柱①:先代を「否定」せず「再定義」する
2代目がやるべきは、先代の否定ではありません。
「受け継ぐ核」を明確にした上で、その上に自分の言葉を重ねることです。
順番が大事です。
まず、先代から受け継ぐものを、はっきり言葉にする。
「親父が大事にしてきた"お客様を裏切らない"という姿勢は、これからも会社の根っこにします」
こう宣言することで、
社員は「自分たちの過去は否定されていない」と安心できます。
土台を肯定されて初めて、人は次の変化を受け入れられます。
その上で、自分の言葉を一つ足す。
「その上で、これからは"新しいお客様にも届く伝え方"を一緒に作っていきたい」
全部を変えるのではなく、
変えないものを先に示し、変えるものを一つだけ加える。
これが、否定にならない再定義のやり方です。
理念やビジョンを刷新するときも同じです。
先代の言葉を消して書き換えるのではなく、
「この言葉に込められた思いを、今の時代の言葉に翻訳する」
という姿勢が、社員の納得を生みます。
柱②:自分の価値観は「宣言」ではなく「小さな行動」で届ける
「自分のカラーを出したい」という気持ちも、よくわかります。
でも、ここで多くの2代目がつまずきます。
価値観は、宣言した瞬間には伝わらないからです。
朝礼で「これからは風通しのいい会社にします」と言っても、
社員は様子を見ています。
「本当にそうなのか」を、言葉ではなく行動で確かめようとします。
だから、価値観は「言う」のではなく
「小さな行動で示す」しかありません。
現場をまめに歩いて、一人ひとりに声をかける
社員の提案を一つ、実際に採用して「ありがとう」と伝える
自分が決めたことの「理由」を、必ず添えて話す
派手な改革は要りません。
「この人は、本当にそういう人だ」と思える小さな行動が積み重なったとき、初めて価値観は現場に届きます。
理念やビジョンを掲げることが目的ではありません。
それが日々の判断や会話に「使われている」状態になって、
初めて意味を持ちます。
掲げるより、使う。
語るより、行動する。
これが順番です。
柱③:ベテラン社員との関係構築──3つの原則
組織づくりの成否は、
古くからいる社員(ベテラン社員)を味方にできるかにかかっています。
彼らは現場を知り、社員から信頼されている
「もう一つの中心」だからです。
関係を築くための3つの原則をお伝えします。
原則1:まず敬意を示す
「これまで会社を支えてくれて、本当にありがとうございます」
この一言を、本気で、何度でも伝える。
実績への敬意が、すべての土台です。
原則2:「教わる姿勢」から入る
いきなり指示するのではなく、
「この現場のこと、教えてください」と頭を下げる。
ベテラン社員は「自分の経験が役に立つ」と感じたとき、
強い味方に変わります。
教わることは、負けではありません。
原則3:小さな約束を、確実に守る
「検討します」と言ったことに、必ず返事をする。
「やる」と言ったことを、小さくてもやり切る。
信頼は、大きな成果ではなく、小さな約束の積み重ねで生まれます。
この3原則に共通するのは、
「自分が上に立つ」のではなく「相手を立てる」姿勢です。
逆説的ですが、相手を立てられる経営者こそ、
最終的に現場から立ててもらえます。
まとめ
2代目経営者の組織づくりは、「先代を超えること」ではありません。
「先代から受け継いだものの上に、自分の言葉を重ねていくこと」です。
抵抗は「過去への敬意の裏返し」。敵ではなく、大事にしてきたものがある証拠
先代を否定せず再定義する。変えないものを先に示し、変えるものを一つ加える
価値観は宣言ではなく小さな行動で届ける
長期社員とは敬意・教わる姿勢・小さな約束で関係を築く
まず明日、長期社員の誰か一人に、こう伝えてみてください。
「ここまで会社を支えてくれて、ありがとうございます。これからのことも、相談させてください」
あなたの組織づくりは、その一言から静かに始まります。
(株)豊明コンサルティング 上口幸博
地方中小企業(10〜100名規模)専門の人事・組織コンサルタント。
北陸を中心に全国対応。
事業承継期の組織づくり・理念再定義から人事制度設計まで、
「作って終わり」にしない伴走型支援が特長。
このnoteが参考になった方へ
「先代から受け継いだ会社を、自分の代で次の形にしたい」
「理念を今の時代の言葉に再定義したい」という段階になったら、
自社の歴史・社員構成・経営者の思いに合わせた組織づくりの設計が必要になります。
初回45分は無料でお話を聞きます。
オンライン・北陸3県は訪問も対応しています。
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