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毎週ショートショートnote|ほんわか台風
サラリーマンが駅のホームで「殺す!」と小さく呪詛を唱えた。それを中澤は観察していた。彼の心にその言葉が強く突き刺さった。
中澤のバイトは週七の掛け持ちだ。バイト終わりでライブに出ても、結局知り合いが来たり来なかったりだ。同期芸人は固定ファンが付いていつ売れてもおかしくない奴もいるし、とっくに売れてしまった奴もいる。
季節外れの台風の中、中澤はバイト先から地下の劇場に走る。「くそっ。くそっ」と独りごちた。劇場に着くなり彼は濡れた服を脱ぎ捨て、衣装に着替えようとしたが、リュックサックの中もびしょ濡れで、黒パンツ一丁で途方に暮れた。
楽屋に放置された黒いテンガロンハットが目に入ったため、それを被ってそのまま舞台に上がった。そして「殺す!殺す!」とコミカルコーティングして五分間言い続けた。
劇場は騒然となったが、言い続けるうちに彼の中から全てを笑い飛ばしてやろうという気持ちが芽生え、それに伴い客席からも新しいお笑いを観たときの様な笑い声が拡がった。
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