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パラレルワールドから来た未来の俺が23歳の俺を覗きに来たときの話

(1300文字くらいです)

西暦1999年。
団塊ジュニア世代の俺は就職氷河期も直撃して、結局就職出来なかった。
父は定年間近のため、何としても早期に自立しなくてはならない。マイペースな俺は、友だちが公務員試験なんかを受けている事に今更気が付き、公務員予備校的な所に行く事にした。
しかしながら、そんな大層な施設は札幌にしかなく、仕方なく実家から札幌まで電車に乗って通う事になった。親はもう、苦笑いするしかなかった。俺の半生でも一、二を争う惨めな時期だった。
どうしようもなく田舎者の俺は、札幌という大都会にすぐ呑まれた。楽しかった。楽し過ぎた。定期券だったので、無駄に札幌に行ったりした。
だが電車内の人数に酔った。駅の人ゴミにも酔った。とにかく畑作地帯でのびのび育った俺はパーソナルスペースがかなり広いらしく、「密」が苦手だった。しかし当時は、「パーソナルスペース」や「密」などと言う、そんな洒落た言葉は北海道まで来ていなかった。従ってこの気持ちは「なんかやだ」程度にしか言語化できず、誰にも理解されなかった。

あの頃の俺は、田舎者なりに服装には気を遣っていた。
この日も札幌で買った襟付きの白シャツを着て、シュッとした黒ズボンも履いて、つまりキレイめな感じで札幌に向かった。
札幌駅に着いたとき、無性に小便がしたくなって、北口のトイレに寄った。
小便器の上の仮置きスペースに、ヨドバシカメラの紙袋を置いた。
当時の俺は、ヨドバシカメラが最先端だと思っていた。だからその紙袋に勉強道具などを入れて、ちょっとスカしながら、それにダルそうな感じも少しプラスして通学していたのだ。就職出来なかったくせに、何を痛々しいイキりをしていたのか全く不明だが、実際にそうだったので仕方がない。
閑話休題。
とにかく俺は小便器の上の仮置きスペースにヨドバシカメラの紙袋を置いて小便をした。
すると、今の俺と同じくらいの年齢(49さい)の小汚いオッサンが、同じくヨドバシカメラの紙袋を隣の小便器の上に乗せた。
しかし、その隣の小便器も、そのまた隣の小便器も全部空いていた。つまりこの未来の俺はわざわざ隣に来たのだ。
パーソナルスペースが広い俺は、この時点でかなりの不快指数を示していたのだが、未来人は首を伸ばして、俺の陰部を覗き見して来た。もうハッキリ言って俺の顔の前くらいに未来人の後頭部が来ている感じだった。
そして未来人は、

「オニイチャン、カワイイネ。
○○○(男性器)シャブラセテ」


と言って来た。
俺は一瞬にして悟った。
ヨドバシカメラの紙袋を札幌駅北口トイレ小便器上仮置きスペースに置く、という行為は、男色家を繋ぐキーパーツで、俺は偶然にその複雑な条件を満たしてしまったのだ、と。
従って男色家はルールに則り上記セリフを吐いた訳で、つまり俺が怒ったり、嫌がったりするのは筋違いなのだ。
それ故、「いや、違うんです、でへへへ…」と意味不明な弁解をしながら、俺は手も洗わずにその場を立ち去る事しか出来なかったのだ。

俺は未だに札幌駅が怖い。
また偶然に何かの条件をコンプリートして、パラレルワールドに迷い込んでしまうのではないか、と想像してしまうからだ。

(終わり)


#岩男を笑わせろ杯

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