Photo by
shichaoji
毎週ショートショートnote|捺染婆
「押し付けがましいんだよ!」
俺は、ばあちゃんのやさしさに甘えてとんでもないことを言ってしまった。
ばあちゃんは困った顔をして、部屋から出て行ってしまった。もうどんな言い訳をしても、今までのような関係には戻れないと思った。
その後、ばあちゃんはグループホームに入ってしまった。何度かばあちゃんに会いに行ったけど、ギクシャクしているし冗談なんか言うのは到底無理だった。
そうしているうちに、コロナウイルスが蔓延して、ばあちゃんに会うことはできなくなった。コロナ禍が明けて、ばあちゃんに電話してみたけれど、グループホームの中には入れないと言われた。
嘘だと思った。
もうばあちゃんは、生活の水面を波立てたくなくてそう言っているのだと思った。
俺はばあちゃんの孫だから、そういう気持ちはすごく理解できた。
それにもう俺の失言のことも、ばあちゃんの中で消化されてしまっていて、過去の出来事でしかないのだろう。
今俺は、グループホームの前でばあちゃんの部屋を見上げている。
ベランダでひょっとこ柄の捺染手拭いが風に揺れていた。
(448文字)
毎週ショートショートnoteに参加しています
