【ショートショート】脳シェア
昔は他人の考えを推測するか、言葉や文字などで伝えることしかできなかったらしい。
さぞ不便だっただろう。
脳をリンクできないなんて。
まあ今更言うまでもないが、脳シェアの歴史を以下にまとめる。
2025年。
脳を共有しようという動きが起こった。
現在の感覚からすると理解不能だが、
脳をシェアすると、「自分の中の知られたくない考え」も伝わってしまう。と恐れられたそうだ。
自分の刹那的な欲望や攻撃性などは「他人に知られたくないもの」とされていたらしい。
単なる電気信号をなぜ知られたくないと感じるのだろう。
この感情を理解するのは、いずれ歴史学者が脳シェアしてくれるのを待ち、ここでは「こういう時代だった」と理解するしかない。
この理解不能な考え方がハードルとなり、長い間、脳シェアは一部の人の間でしか使用されてこなかった。
「脳シェア革命」が起こったきっかけは、「終わらない戦争」である。
「無理解が争いの原因である。」とやっと悟ったのだ。
シェアしてみると何のことはない。
むしろ、デメリットは見当たらなかった。
何も話さなくていいし、何も調べなくていい。
当然、誤解もなくなったし、脳の優劣もなくなった。
各国の首脳が集まって脳シェアした瞬間に戦争もなくなった。
ほどなく「首脳」もいなくなった。
いちいち相手の立場になって考えなくても自分が同時に相手の脳とリンクしているので近づいたら否応なしに全て理解できる。
犯罪を犯していた、かつての加害者たちも被害者の脳と繋がり瞬時に相互理解に至る。
あらゆる被害者も加害者もなくなった。
犯されると言った概念もなくなり、「強姦」という言葉もなくなった。
どんな劣情を抱いてもその感情ごと相互理解される。
「良い考え」、「悪い考え」と分類する意味も失い「世界中の考え」が大きな鍋の中に入れられ、グツグツと煮込まれ混ざり合い溶け合い、そして同じになったのだ。
まあ、これは蛇足だが、
不要な人は合意のもと処理されるか、合理的に自殺した。
(終わり)
