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わたしと父とTと

ゴン!
あんな顔の父は見たことがない
頭は痛くはない、痛かったのは心の方だ…


小学生も高学年となれば友達と遊びたくなる
友達だからTとしておこう
Tの祖母の家がわたしの家の近くにあるのだが
夏休みなどの長い休みに家族でやってくる

Tは同い年なので小さい時からよく遊んでいた
なので、親同士も少し交流があるようだった

まだ日が上がり始めたすぐから遊びに誘いに来るT
彼は朝が来る前に起きている

わたしも準備して外に出ていく
まだ眠い

彼はなぜこんな早朝から元気なのか

友達を連れ回す

誘いに来てくれるのはTだが
どこへいくのかはわたしが考える事が多い

どこへ行こう

今回は近くの小川だ
小川に小さい魚がいる
ここのところ、その魚を釣るのが楽しかった

いつものポイントに行ってみるが
全く釣れない
昼前まで粘ったが
わたしが数匹釣っただけだった
Tが少しつまらなそうだ
折角遊びに来てくれてるのだ
わたしも気になっていた

1人で行くときはあまり奥に行くのは恐いのだが
今日はTもいる
いつもより奥に下った所に行きたくなった

Tもやる気だ
2人で勇気を出して行った先には
小さいが白い橋があった
橋と言っても大きく切り出された石が
敷かれているような感じだ

全く人も来ない
釣り道具を広げて
気楽に釣り始める

釣れる

とにかく釣れる
いつもの魚じゃない種類も釣れる
楽しい

近くに落ちてた箱を拾ってきて
水を汲む
どんどん魚を入れて
いっぱいになった

楽しくて時間はあっという間に過ぎる
帰りたくないほど楽しい
それというのも家にいても
どこか、ないがしろにされているように感じていた
いなくてもいいのなら帰るのが遅くても
良いだろう

そんな考えだったと思う

Tは少し時間を気にしていた
わかってた、時間は確実に経っていく
日も暮れ始めて
さすがに帰る時間だ

帰ろう
私達は新しい遊び場を発見した喜びで
帰る時も頭の中はこの場所の事でいっぱいだった
次はアレをしてコレを持ってきて
帰り道も話はつきない


見えない所でそんな事に

小学生の足では帰るまでに時間がかかる
日も暮れていた
途中にあるお店で10円を払い
家に一度電話をかけてみる

どこにいるのか!
何をしてたのか!
質問攻めの母の声に
自分達のせいで何か大事になってると感じた
自分達、Tは悪くはないな
わたしが巻き込んだ形だ


怒られる恐さと、さっきまでの楽しさで
何とも言えない感情のまま
家が見えてくる一本道にさしかかった

わたしの家の前にはTのお父さんの車とご両親
そして、わたしのご両親
勢ぞろいでわたし達を待っている
凄い迫力だ
目の前がもし三途の川なら絶対渡らない
来てほしいならニコやかにしててほしい

Tのお父さんは恐い、Tはうなだれている
しばらく2人で立ちすくんだが
これ以上待たせても
さらに深刻になる

トボトボと歩き出した

「走れー!!」
T父の怒声が飛ぶ

わたしは足が遅い

先に着いたTは泣きながら怒られている
どうも今日は家族で昼頃に帰る事になったらしい
それに加えあまりにも、わたし達の帰りが
遅かったので心配されたのだろう



わたしの父は温厚だ

セミ、と言ってカーテンにぶら下がって壊しても
昇龍拳を練習しててアゴにヒットさせた時も
そんなに怒られた事はない

それは、わたしだけの事だったからだ
何があっても子供に怒らない、自分でそう誓っていたのだろう、そういう人だ

けれども、今回は色んな人に心配をかけた
そんなわたしは、初めてゲンコツをもらった

ないがしろにされてると感じてたのも
自分だけだった

良かった、わたしはどうでもいい存在ではなかった
ただ、怒らないと決めていただろう父を
怒らせてしまった

それをさせた申し訳無さ
それが自分の中に残っている


けれども

今ではそれは感謝に変わったように感じる
都合の良い話だが
その事がなければ今の自分もいない

今自分が良い状態であるのなら

その事も自分にとって、必要な出来事
だったのかもしれない
と今では思える



T、Tは次にあった時、わたしと比べ物にならない程凄く怒られたらしい
T父は恐い
わたしも恐いながらも謝りに伺った

逆に優しく笑って話してくれた

大人だ、と感じた

Tが、何で俺だけと落ち込んでたのは
ここだけの秘密だ
ごめんT

わたしはTにも申し訳無さがあった

なので、その日のわたしのオヤツ代で
アイスを奢った
良かった
いつもの元気なTだ

わたし達はその日、2時間程で帰った
反省が極端なのだ
もう帰ってきたの?
と言われたもどかしさは忘れない
父のゲンコツは、後にも先にも
その一回だけだ

書いてて懐かしい気持ちになった

また何か思い出したら書いてみたい

わたしの昔話を誰が読んでくれるのだろう
まあ、わたしの記事のほとんどが
わたし話だが
書いていていつもとは違う楽しさがあった

最後まで読んで頂いてありがとうございます



富士山が素晴らしかったです
小川がイメージと近くて
フォーカスさせて頂きました
おかのくら様、ありがとうございます




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