箱根本箱で過ごす時④~人生はスイッチバック 2026-5
その③からの続きです。滞在2日目は朝ごはんを食べ、温泉に入り、館内のあちこちに仕込まれた不思議な読書スペースに入り込んだりしながら、宿での時間を過ごしました。
さようなら、本の王国
とうとう『箱根本箱』のチェックアウト時間になりました。
本好きにとって夢のような隠れ家。温泉も美食も満足いっぱいで、忘れられないブックホテルになりそうです。
帰りのバス停までは急傾斜を登らなくてはなりませんが、平坦な道を4分歩けば中強羅駅に着くと聞いて、ケーブルカーを選びます。
行きと帰りの路線を変える「一筆書きルート」が好きな私はウキウキです。

箱根登山鉄道・強羅駅(標高541m)
ケーブルカーで3駅乗って強羅に向かいます。
強羅公園って大きいのね~と思っているうちに到着。

駅にコナンの宣伝ポスターがありました。
え、箱根はエヴァンゲリオンの聖地でしょう?
箱根エリアは目下上映中の劇場版『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』の舞台の一つになっているそうです。
横浜の高速道路の話だけじゃないんですね。(未鑑賞)

箱根登山電車
強羅で箱根登山電車に乗り換えます。
ケーブルカーと電車の乗り換え・終着駅で、お土産屋さんも併設されており、観光客で賑やか。
もう小田原が近い気になりますが、ここはまだ標高541mの箱根の山の中です。

箱根登山電車がやってきました。窓が大きいアレグラ号です。
運良く、最前列に座ることができました。

この箱根登山線、平坦なエリアはほぼありません。ケーブルカーを除けば、日本で最も急な勾配を走る山岳鉄道です。
いつもこの電車に乗ると「世界の車窓から」のBGMが頭に流れます。ユングフラウヨッホとか氷河特急とか、そういうイメージ。
実際にスイスの登山鉄道を参考に設計したそうです。
3度のスイッチバック
日本一の急勾配を通るために、スイッチバックを行います。
スイッチバックとは、電車が通常の線路では上りきれない急斜面の線路を、進行方向を前・後へと切り替えながらジグザグに折り返して、少しずつ移動する進み方。線路の「つづら折り」ですね。
行ったかと思えばまた戻る、まるで人生のよう。私だけかもしれませんが。

スイッチバック、大好きです。日本で有名なのはこの3か所。
① 篠ノ井線の姨捨駅(長野県)
② 箱根登山鉄道(神奈川県)
③ 肥薩線の大畑駅(熊本県)
すべて乗りましたよ!どれも大興奮でした。
姨捨駅は棚田が広がる善光寺平を一望できる絶景。
大畑(おこば)駅は、古い平屋の駅舎も素敵な秘境駅。
そして今乗っている箱根登山鉄道です。上大平台信号場、大平台駅、出山信号場の三か所でスイッチバックを行い、箱根湯本まで標高差445メートルの急勾配を移動します。
線路を敷いた先人の方々の苦労をしのび、今度は頭の中を「プロジェクトX」のテーマが流れ出します。(いろいろ流れすぎ)
それではレッツゴー!
仙人台信号場で一旦停車(標高398m)

仙人台信号所で電車が停まりましたが、ここではスイッチバックはしません。
列車交換用の信号場なので、必ず一旦停車するそうです。
1st スイッチバック・上大平台信号場(標高346m)
先ほどの仙人台信号場は標高398m。次の上大平台信号場は標高346m。
標高差は52mあります。信号場間の距離は800mです。
想像してみてください。すごい傾斜です。普通の電車で直線で行こうとしても、とうてい無理ですね。滑り落ちてしまうでしょう。
それで、行ったり来たりしながら少しずつジグザグに降りていくわけです。

ただ私、友人との話に夢中になって、スイッチバックのことがすっかり頭から抜けていたので、目の前で運転していた運転士が電車を止めて、無言で降りて行ってしまった時には(えっ?)と思いました。
友人と「大丈夫かな?」「電車が故障したとか?」
「でも何のアナウンスもないよね」「私たち、どうすればいいんだろう?」
とひそひそと話し合います。
電車のドアは密閉されたまま。
「電車火災が起こっていたら、私たち煙に飲まれてしまう!」
「運転士さんだけ先に降りてっちゃったよ~!」

動揺していたら、後ろから制服姿の別の人がやってきて、運転席に乗りこみました。
(???)
と思っているうちに、電車はガクンと揺れ、今度は後ろに動き出します。
おっとっと。
それでようやくわかりました。
「これ、スイッチバックだよ!」
今までスイッチバックの時に運転士さんが移動する様子を見たことがなかったので、まったくピンと来ていなかったんです。
アナウンスされても、おしゃべりしていて気付かなかったのでしょう。
アクシデントじゃなくてよかった!
2nd スイッチバック・大平台駅(標高337m)

大平台駅では、駅でスイッチバックを行うため、電車のドアは開いて乗り降りができます。今度は落ち着いて、運転士さんと車掌さんの移動を眺めました。

ここでもまた、電車は逆方向へ動き出しました。
おお、後ろ向き!キャッホー!
友人はよくわかっていない様子で、私一人がキャッキャしていす。
そういえば、キョロキョロしているのは私くらいで、電車内のみんなはいたって静か。男性も子供も、外を眺めてさえいません。
あれ、みんな、どうして?スイッチバックだよ?
3rd スイッチバック・出山信号場(標高222m)

電車は出山信号場に到着。線路の先は行き止まりになっています。ここでは電車から降りられず、車内から運転士と車掌の移動を見守ります。
2人が場所を交代すると、電車が後ろ向きに動き出しました。3回目のスイッチバック運転です。

下り坂、トンネル、また下り坂。
さっきからトンネルばかりくぐっています。山を切り崩して作った線路なんですね。
塔ノ沢駅ホームで参拝(標高153m)
塔ノ沢駅では電車のドアが開いて、少し長めに停車しています。
もしかして、ホームに出ても大丈夫?

ホームに、緑に囲まれた荘厳な雰囲気の神社があって、お参りしにいらっしゃいと私に誘いかけてくるのです。
電車に置いて行かれるリスクがあれど、勇気を出して外に出て、神社を参拝。
大丈夫そうなので、近くもちょっと散策します。
ほかの乗客も、それを見て降りてきました。

神社は深澤銭洗弁天。ご祭神は瀬織津姫命です。
神社が駅のホームに直結していることってあるんですね。
駅の下を流れる川のせせらぎの音が心地よく響いています。
箱根湯本駅(標高96m)

塔ノ沢の次はもう箱根湯本駅。とうとう下界に降りてきました。
スイッチバックを3回も体験できるなんて大満足です。とても楽しく乗車できました。

ここで小田原行きに乗り換えます。ここからは平坦、といいたいところですが、まだ82m下ることになります。
そこそこの高低差ですが、ちょっと感覚が麻痺して(たいしたことないな)と思ってしまいますね。
小田原駅(標高14m)
強羅駅から小田原駅まで、約530m上から下ってきました。
小田原まで来たら、日常世界はすぐそこです。

今回は、箱根の自然に包まれながら、温泉で癒され、身体に優しい食事を味わい、本に囲まれて読書を楽しむという極上の時間を過ごしました。
帰りの登山電車ではスイッチバックに大興奮。天候にも恵まれて、充実した楽しい旅になりました。
<おしまい>
おつきあいいただき、どうもありがとうございました。
