物価と生活費の動向について。

 厚生労働省の4月の毎月勤労統計調査によれば、物価変動を考慮した1人当たりの実質賃金は前年同月から0.7%減少し、マイナスは25ヶ月連続となり、物価の上昇が賃金の上昇を上回った。
 これほど野放図に物価が上がっても、物価の抑制宣言、消費税の廃止、円安対策など政府は有効な対策を打たないで、見て見ぬふりをしている。この状況は国民の生活に直接的な影響を与え、とくに固定収入の高齢者や低所得者層にとっては厳しい状況を強いている。
 今年、大企業を中心に大幅な賃上げが行われた。実際に3月5日、わが国最大の労働組合である連合は、平均で5.28%の引き上げとなり、33年ぶりに5%を超えたと公表した。
 満面の笑みを湛えた芳野会長は、「日本のステージ転換にふさわしいスタートができた」と胸を張った。しかし、その笑顔は物価上昇の影響で、実質的な賃金はマイナスになるのを知っていることを隠すためだったかもしれない。
 それはそれとして、いったいこの現実は何ということだろう。賃上げの話はまやかしか欺瞞だろうか。名目賃金(物価変動を考慮しない賃金)は2.1%増加の29万7千円で、28カ月連続でプラスとなった。一方、消費者物価指数は2.9%も上昇したため、実質賃金(物価変動を考慮した賃金)はマイナスとなったという。
 いつも数値に踊らされて、実感が湧かない。それならスーパーに出かけてみると、良く分かる。やはり、高齢者は夫婦連れが多く、ゆっくりとカートを押しながら、慎重に値踏みをしている。奥さまがカートに品物を入れようとすると、「高い」と旦那が止める始末で、なかなか買い物が捗らない。中年の婦人も商品の前をうろうろするだけで、買い物には時間がかかるようだ。
 買い物は戦場であり、商品は敵である。それもそのはず、リンゴ1個200~300円、インスタントラーメン5袋558円、ブロッコリー1個258円である。パンや弁当も値上がりしたが、全体に小作りとなって中身はすかすかで、1個では腹が膨らまない。
 おしなべて買い物客の顔色は悪く、笑顔などは皆目見られない。狭いスーパーの中でみんなギスギスした感じで、世相は険悪になっている。これからも、これが続くかと思うと、わが国の前途は険しい。
 一方、大企業を中心とする経済界は、最高記録の連発で空前の利益を上げ、内部留保も莫大な金額に膨らんでいる。社員の賃金を1.5倍、2倍に引き上げることは容易に思われる。良く分からないが、それをしないのは何か理由があるのだろうか。この疑問はわれわれが直面している経済状況を深く理解するための鍵となるかもしれない。

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