無人運転の実用化。

 2025年は電気自動車(EV)と自動運転技術が本格的に社会実装され、都市の交通インフラとモビリティの概念そのものを塗り替えた年として、後世に記憶されるだろう。
ロボタクシー、すなわち完全自動運転による無人タクシーの実用化は、移動の意味を根底から変え、米国や中国の大都市ではすでに日常の足として定着化しようとしている。
 ロボタクシーとは運転手を必要としない自動運転車によるタクシーサービスであり、車両に搭載されたAI(人工知能)とセンサー群が環境認識、経路計画、車両制御のすべてを担う。
 米国の非営利団体SAEインターナショナルが定める自動運転レベルにおいて、レベル4(特定条件下での完全自動運転)またはレベル5(あらゆる条件下での完全自動運転)に該当する技術が求められる。
 この分野で先頭を走るのが、米アルファベット傘下のウェイモである。16年にグーグルの自動運転部門から分社化された同社は、10年以上にわたる走行データと安全検証を積み重ね、25年にはサンフランシスコ、フェニックス、ロサンゼルスの3市で高速道路を含む有償サービスを開始した。年間乗車件数は1400万件を超え、空港アクセスや都市間移動の利便性を飛躍的に向上させた。
 ウェイモの戦略は安全最優先の段階的な拡大によって、慎重な技術検証と限定地域での運用を重ねることで信頼を築いてきた。現在は東京やニューヨークを含む26都市での展開を視野に入れており、今年は欧州初の拠点としてロンドン進出を計画している。
 これに対し、テスラは対照的なアプローチを採用している。同社は高精細マップに依存せず、カメラ映像をAIで解析するエンド・ツー・エンドA方式を採用し、ソフトウェアの進化によって車両性能を定義するソフトウェア定義車両の概念を体現している。
 25年後半にはテキサス州オースティンで、ロボタクシーサービスを開始し、一部地域では完全無人のテスト走行も実施された。まだ安全監視員の同乗が必要であり、レベル4の壁を越えるには課題がある。
 アマゾン傘下のズークスは、さらに異なる視点から市場に参入している。ズークスはハンドルもペダルも持たない馬車型の専用EVを開発し、移動空間そのものを再設計した。
 25年にはラスベガスとサンフランシスコで公道走行を開始し、年1万台規模の量産体制を整えつつある。乗客の快適性と効率性を最優先に設計されたこの車両は、従来の車両改造型ロボタクシーとは一線を画す。
 一方、中国のバイドゥが展開するアポロ・ゴーは、武漢市全域をカバーし、無人運転による週間乗車件数は25万件を突破した。これはウェイモに肉薄する水準であり、中国政府の強力な支援と都市全体を実験場とする大胆な戦略が功を奏している。さらにバイドゥは米ウーバーやリフトと提携し、ロンドンでの実証実験を開始した。米中のロボタクシー大手が欧州で直接対決する構図が現実となった。
 こうした国際的な動向に対し、自動車大国のわが国はEVと自動運転技術の両面で大きく遅れている。本来は5年前に実証実験が始まり、2、3年前からは実用化の段階に入っていなければならなかったが、現実には法制度の整備、インフラ投資、産業構造の転換において、後手に回っている。
 今なお、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故、園児の列に車が突っ込む悲劇、高速道路での多重事故など、人間の判断ミスによる交通事故が後を絶たない。自動運転技術はこうした事故の大半を未然に防ぐが、それにもかかわらず、安全装置の実装も遅々として進まず、国際競争の舞台から取り残されている。
 ロボタクシーの普及は、EVの大量導入と畜電池の進化と密接に結びついている。さらに開発が必要なことは言うまでもないが、車両の稼働率が高まると、バッテリーの性能の向上や耐久性の整備が急務となる。
 また都市部での電力需要の増加に対応するため、太陽光発電を装備したロボカーなど再生可能エネルギーとの連携やスマートグリッドの整備も不可欠である。さらに運転手という職業の再定義、交通事故責任の所在、プライバシーと監視の問題など、社会制度全体の再設計が求められる。
 今年は世界各地の大都市で普及する年となる。高齢人口の多いわが国において、ロボタクシーやロボカーは移動手段として極めて有用であり、とくに過疎地域や公共交通の空白地帯における新しいインフラとなり得る。各自治体は早急に導入して後期高齢者に対して無償で利用権を配布したり、ロボカーを供与したりして、政策的に後押しをする必要がある。高齢者の社会参加や健康寿命の伸長にも大きな貢献をするだろう。
 いずれにしても、昨年ロボカーは私たちが未来の技術として夢を見てきたことが日常の現実へと変貌を遂げた。これも科学の輝かしい成果であるが、わが国が自動車大国、技術大国としての地位を維持し、次世代モビリティの主導権を握るためには、もはや猶予はない。
 車の概念が一変する。

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