『最後の一色』(和田竜)連載挿絵を終えて
本日2025年4月25日、1年半にわたって挿絵を担当させていただいた和田竜さんの『最後の一色』(北海道新聞、東京新聞、中日新聞、西日本新聞 掲載)の最終回を迎えました。
感無量です。
自分たち世代のイラストレーターにとって新聞連載の挿絵はいつかはやってみたい目標とも言える仕事であり、自分のところには一生まわってくることのない仕事だと思っていた。
そのため、この仕事の打診をいただいたとき、「え?私のところに新聞連載?しかも和田竜さんなの?そんなことってあるの???」と驚きつつ、断るなどという選択肢は自分の中になかった。
その後、自分に確定したと連絡をいただいたあともしばらく本当に自分がやらせてもらえるのか半信半疑だった。
しかし、このときは「私はなんにもわかっていなかった」のだ。
子どもの頃からアクション映画やマンガは大好きで、将来の夢は『ジャッキー・チェンになること」(←大丈夫なの?)だった私は和田さんのお話の世界を描けることにワクワクした。
とは言え、これまでの私は「止まっている絵を描く人(イラストレーター)」だったため、自分が挿絵を描くとしたら記号的、象徴的に描くことになるだろうと考えていた。
でも、和田さんの原稿が届いた時点で「そんなわけにはいかないじゃないの」と思った。
魅力的な登場人物たち、その言動や表情、それぞれの勇姿。
否が応でもこちらのテンションを爆上げされ、合戦等で発せられる下知に自分自身も全身を貫かれ、「この顔を描きたい。このシーンを描きたい。」となった。
そうなってしまって、描き始めると、安土桃山時代は本当にわからないことだらけなのだ。
あらかじめ、具足(甲冑等)の資料等を集めていたものの、いざそれを着せて、戦わせるとなると必要な資料はそれだけでは全く済まず、絵を描く時間よりはるかに、資料探しに時間を割くこととなった。
強い表情など普段描き慣れないものや、現代に生きる自分が見たことないものや人を描くとこんなことになってしまうのか、と自分の絵にしばし呆然とした。
膨大な資料が蓄積され、装束の構造やその時代の環境等がかなりわかってきて(残念ながら最終回まで描き終えても自分の知識はまだ欠けている)、登場人物たちを描き慣れてきた今ならこう描くのにという挿絵が山ほどある….。
できることならもう一度第1話から描きたいけれど、そんなことは絶対無理なので、せめて「今ならこう描くバージョン」の挿絵集を自費で作りたい…。
本当に無謀だった、と今ならわかる。
そのことで、読者の方などにご迷惑をかけてしまったこともあるかと思うけれど、無知で無謀だった故に、この仕事が引き受けられたことをよかったと思うし、そうした自分を許しながら最後まで登板させてくださった和田さんや新聞社の皆さんには一生頭が上がらない。
未熟なまま走っていた自分に、多大なサポートを与えながら1年半の長距離伴走をしてくださった新聞連載中の担当編集者、新聞三社連合の栄藤さん、
最後まで心を揺さぶるお話で私を鼓舞してくださった和田さん、
さまざまな形で関わってくださった関係者の皆さんに深くお礼申し上げます。
そして何より、ずっと私やたくさんの読者を魅了し続けた五郎や、
「全くもってこの子は」と見守る中、飛躍的に成長していった忠興、
二人を取り巻くそれぞれに魅力ある家臣たち、
みんなを描くことは、みんなと暮らすことでした。
こんなイケメンたちと暮らせた1年半、幸せでした。
みんな、本当にありがとう。
