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「土練り」するってよ

陶芸を始めた。

教室へ入会し、「長く続けるつもりなので、基礎からしっかり学びたい」と伝えた。

先を急ぐ必要はない。時間はたっぷりある。
将来を見据えた選択だからこそ、基本を大切にしたかった。

先生は「それなら、土練り(つちねり)をマスターしましょう」と、見本を見せてくれた。

土には空気が入っている。
そのまま焼くと、割れや破裂の原因になる。
まずは、土を均一な状態に整える「荒練り」。
その後、微細な気泡を追い出す「菊練り」。
ろくろでの器制作は、その先だ。

荒練りを繰り返すこと、二か月。
菊練りを繰り返すこと、六か月。
器用でないので、時間が掛かった。
それでも、長期目線で陶芸と向き合えているな、と妙な満足感があった。
仕上がった菊練りの状態を、そのまま焼いて、カタチに残したいと思うほどに上達した。

ようやく、ろくろの許可が出た。
ろくろを回し始めた。矢先、転勤が決まった。

新しい土地にも、有名な焼き物の産地があった。
さっそく、めぼしい陶芸教室を見つけ、予約を入れた。

教室初日。
粘土を受け取り、いつものように練ろうとすると、担当スタッフが笑いながら、
「土練りするってよ」
と、奥にいるスタッフへ声を掛けた。
私は、言葉の意味を理解できなかった。

この工房では、真空引き装置で粘土の空気を抜いていた。
土練りは必要なかったのだ。

「土練りは完璧ですね。」
そんな言葉を期待していただけに、ショックだった。

八か月近く続けてきたことは、何だったのだろう。

今なら分かる。
最初の工房は作品制作を後押しする工房だった。
転勤先の工房は、体験中心で効率を重視していた。
どちらが正しいという話ではない。

当時の私は、そこまで整理できなかった。
努力の方向を誤ったように感じた。
長い時間をかけて取り組むつもりだったが、気持ちは萎えてしまった。

陶芸をやめることにした。

決断の理由は、土練りだけではなかった。
その話は、また次回。

基礎からしっかり、切子しようぜ。

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