ガラスが割れた。noteはじめた。
ガラスが割れた。
器の底を加工していると、不自然な光の反射が目に入った。
まさかと思いつつ、加工を続けると、底を横断するクラックが走った。
膝から崩れ落ちそうになるとともに、寒気が全身を走った。
気を確かに保たねばと腹に力を入れ、もう戻らない器を、ただ眺めた。
今年の挑戦も終わってしまった。こんなところで。
私は神戸市を拠点に、吹きガラスと切子の技法で作品を制作している。
手作りの温かみを感じる素朴な民芸風の器でもなく、観賞用のアート作品でもない。
「用の美」を志向する工芸品に魅力を感じている。
日本伝統工芸展(本展)は、全国の工芸作家が目指す特別な舞台だ。
ここ数年、本展への入選を目指して、渾身の一作をつくろうとしてきた。
しかし、作品を審査いただくところまで、たどり着けていない。
今年もまた、その段階で終わってしまった。
自分の覚悟だけでは足りないと、今年は本展への挑戦を周囲にも伝えた。
あとに引けない状況をつくれば、もう一歩、追い込めると考えたからだ。
それでも結果は変わらなかった。
本当は制作に追い込みをかけているはずだった一か月。
「今年も割れてしまって……ダメでした」と周囲に伝えつつ、
何が悪かったのか、どうすればよかったのかを考えた。
スキル不足は否めない。
慎重に加工すれば、回避できただろうか。
もっと早く着手し、予備の器を制作できなかったのか。
ないものねだりはできない。私には制約がある。
私はサラリーマンだ。
平日はフルタイムで、ガラスと関係のない仕事をしている。残業も多く、 平日はほとんど制作できない。
そのうえ週末は、自分の工房で切子教室も開いている。
圧倒的なスキルがあるわけでもなければ、制作時間も限られている。
でも、この制約は誰かに押し付けられたものではない。自分で選んだ道だ。
この制約の中、本展入選を実現したい。そこに価値を感じている。
自身の覚悟や、周囲への宣言では、まだ足りなかった。
自分でも「実力が足りないので、仕方がないかな」と思ってしまうし、
周囲も「来年こそは、また頑張って」と慰めてくれる。
まだ甘えが出てしまう。もっと強い覚悟で取り組めないか。
考えた末、この選択に行きついた。
noteを始めた。
多くの人に読まれなくてもいい。
世の中に発信することで、甘えを許さず、制作に向き合っていきたい。
来年こそは作品を完成させ、応募につなげたい。
このnoteでは、来年の本展挑戦までの記録に加え、
制作で大切にしていること、切子や吹きガラスのこと、教室のことなども 発信していくつもりだ。
失敗したって、切子しようぜ。
