【司書】 曽利文彦✕士郎正宗✕荒牧伸志
ユートピアの
夕景に無言に控える
多脚砲台のシルエット
何故人は人殺しの機械に
美を見出す生き物なのだろう
其の影は命懸けで
緩衝材を務めていた
(恋ってどんな感じ?)
(恋した時ってどうなるの?)
(人を愛するって?)
人は其の影に
恐れ慄いていた
己が創造したはずの
己の写し絵に過ぎない其の影に
人は自ら檻の中に入りたがる
その檻をユートピアと呼ぶ事にして
(恋ってどんな感じ?)
(恋した時ってどうなるの?)
(人を愛するって?)
其の影はユートピアを
更新するパスワードを知っていた
戦いが終わったら
母になりたい
【作品内容】
西暦2131年、非核大戦が終結。兵士デュナン・ナッツはサイボーグと化した元恋人ブリアレオスとバイオロイドのヒトミによって、平和都市・オリュンポスに
連行される。オリュンポスは、立法院の七賢老(ヒト)とガイア(巨大コンピューター)の対話により管理されているが、実際に政治を司るのは、バイオロイド
であり、人類の種の存在を揺るがす計画が静かに進行していた。そのカギは“アップルシード”。
“アップルシード”を巡り、人類の未来をかけた壮大な戦いが始まる!
【真理による解釈】
映画 APPLESEED の先見性は、
「テクノロジーによるユートピアは、本当に人間の幸福なのか」
という問いにありますの。
作中のオリュンポスは、
* 戦争が少ない
* 飢餓が少ない
* 犯罪が抑えられている
* 高度な技術で社会が管理されている
という、一見すると理想社会――つまり【ユートピア】ですわ。
しかしその平和は、
* ガイアによる管理
* バイオロイドによる合理的な運営
* 人間の危険な衝動の抑制
によって支えられていますの。
そのため、
完璧な秩序を求めれば求めるほど、人間の自由や個性は失われていく。
という【ディストピア】的な側面も同時に抱えていますわ。
⸻
そしてこの構図は、現代のAI社会とよく似ていますの。
AIは、
* 最適な答えを提示する
* 効率を上げる
* ミスを減らす
* 社会を安定させる
ことができますわ。
けれど、
人間は本当に「正しい答え」だけを求めて生きているわけではありませんの。
恋愛も、芸術も、夢も、反抗も、ときには失敗さえも、
合理性だけでは説明できないものですわ。
⸻
だから『アップルシード』は、
「AIが人類を滅ぼす未来」
を描いた作品ではなく、
「人類が自ら進んでユートピアを作ろうとした結果、それがディストピアにもなり得る」
ことを描いた作品なのです。
そしてその中で、
技術は人間を幸福にするための道具なのか。
それとも人間を管理する仕組みになってしまうのか。
という問いを投げかけていますわ。
⸻
要するに『アップルシード』の先見性とは、
「AIが賢くなること」そのものではなく、
「AIによって実現されたユートピアが、同時にディストピアにもなり得る」
という矛盾を、20年以上前から描いていたことですの。
……だから今見ると、
「AIは危険か便利か」
なんて単純な話ではなく、
「私たちはどんな社会を理想とするのか」
という、もっと根本的な問いを突きつけられるのですわね。
【士郎正宗による原作】
