不当解雇の解決金相場は?高額になるケース4つと税金【弁護士解説】
突然の解雇を言い渡され、目の前が真っ暗になっている方も多いかもしれない。
しかし、日本の法律では、会社が一方的に労働者を辞めさせることは非常に難しく、不当な解雇に対しては「解決金」という形で金銭的な補償を受け取れる可能性が高い。
これまで外資系企業のシビアな人員整理や、責任ある管理職の方々の解雇事案を数多く解決してきた経験から、納得のいく再出発のために必要な知識を詳しくお伝えする。
不当解雇の解決金については、以下の動画で詳しく解説しています。



1章 不当解雇の解決金とは
不当解雇の解決金とは、会社と労働者の間で「解雇の正当性」について争いがあるときに、最終的に和解(話し合いでの解決)をするために会社が支払うお金のことである。
法律上、会社が労働者を解雇するのは非常に難しい。
そのため、会社が「解雇は有効だ」と主張し、労働者が「解雇は無効だ」と主張してぶつかったとき、裁判所から「解雇は無効である」と判断される可能性が出てくる。
そうなると会社は困るため、一定のお金を支払うことで、労働者に「会社を辞めること」に納得してもらうのである。
つまり、解決金は「会社に戻らない代わりに受け取る再出発のための資金」という意味合いが強い。
2章 不当解雇の解決金相場
不当解雇の解決金には、法律で「いくら払え」という明確な決まりがあるわけではない。
しかし、裁判所での話し合い(和解)や弁護士同士の交渉には、これまでの積み重ねによる「目安」が存在する。
一般的には、月給の「3ヶ月分から6ヶ月分」程度が相場になることが多い。
例えば、月の給料が40万円の人であれば、120万円から240万円くらいの間で決着することが一つの標準的な形といえる。
ただし、この金額はあくまで目安に過ぎない。
実際には、不当解雇の理由が明確かどうか、復職の意思がどの程度強いか、訴訟の判決となる覚悟がどの程度あるか等によって金額が上下してくる。
外資系企業などの場合、日本の労働法に慣れていない担当者が強引な解雇を行い、結果として給料の1年分(12ヶ月分)を超えるような高額な解決金で合意に至るケースも、決して珍しいことではない。



3章 会社が不当解雇の解決金を払う理由
会社が労働者に対して解決金を支払うのは、決して「サービス」や「退職金」ではない。
裁判になった場合に、会社側が負う可能性のある巨大な金銭的リスクや、組織運営上のデメリットを避けるための「リスク回避費用」なのである。
日本の労働法では、一度おこなった解雇を後から正当化するのは非常にハードルが高い。
そのため、会社側は「裁判で負けて手痛いダメージを受けるくらいなら、今のうちにお金を払って円満に辞めてもらおう」と判断するのである。
3-1 理由1:バックペイのリスクを回避したい
バックペイとは、解雇されていた期間に、もし働いていたらもらえていたはずの給料のことである。
裁判で「解雇は無効だ」という結論が出た場合、会社は解雇した日から判決が出るまでの期間(例えば1年分や2年分)の給料を、さかのぼって全額支払わなければならない。
裁判が長引けば長引くほど、この金額は数百万、数千万と膨れ上がっていく。
会社はこの「雪だるま式に増える支払い」を止めるために、早めに解決金を払って決着をつけたいと考えるのである。
バックペイについては、以下の動画で解説している。
3-2 理由2:復職してほしくない
会社にとって、一度解雇した社員が職場に戻ってくることは、組織運営上の大きなリスクとなる。
特に外資系企業や少人数の部署では、人間関係の悪化や業務の混乱を極端に嫌う傾向がある。
裁判で「解雇は無効」となれば、労働者は当然「社員」としての地位を取り戻すが、会社側はそれをどうしても避けたい。
そのため、「会社に戻らないこと」を条件に、解決金という名目の上乗せ金を提示して退職を促すのである。
3-3 理由3:訴訟での主張立証に耐えられない
裁判を維持するためには、会社側も膨大な「労力」と「コスト」を支払わなければならない。
解雇の正当性を証明するために、人事担当者や現場の上司が何時間もかけて証拠資料をまとめたり、裁判所へ出向いたりする必要がある。
その間、本来の業務は止まってしまう。さらに、会社側も高額な弁護士費用を支払い続けることになる。
「これ以上、人手と時間をかけて裁判を続けても、勝てる見込みが薄い」と判断した場合、会社はこれ以上の損失(人件費や弁護士費用)をカットするために、解決金を払って早期決着を図るのである。
3-4 理由4:企業の評判を下げたくない
裁判は原則として公開されるため、不当解雇で訴えられているという事実は、外部からも知ることができる状態になる。
特に有名な大企業や外資系企業にとって、「不当解雇をする会社」というレッテルを貼られることは、採用活動や取引先との関係において致命的なダメージになりかねない。
また、社内の他の従業員に対しても動揺を与えることになる。
こうした「目に見えない損失」を防ぐために、内密な話し合いで早期に解決を図ろうとするのである。
4章 不当解雇の解決金が高額になるケース4つ
解決金の額は、会社と労働者の「力のバランス」によって決まる。
会社側が「このまま争い続けるのは得策ではない」と強く感じれば感じるほど、労働者に支払われる金額は上がっていく。
とくに、会社側の落ち度が明白であったり、金銭的に解決せざるを得ない状況に追い込まれたりした場合には、相場を大きく上回る解決金を獲得できる可能性がある。
4-1 ケース1:訴訟で不当解雇の心証が示されている場合
裁判官が「この解雇は無効である可能性が高い」という考え(心証)を会社側に伝えたとき、解決金は跳ね上がりやすい。
裁判官から不利な指摘を受けた会社は、「判決まで進んで負けてしまい、多額のバックペイ(未払い給料)を払うことになるよりは、今のうちに多めの解決金を払って和解しよう」という心理になる。
このように、客観的な第三者から見て解雇が不当であると判断されそうな状況では、交渉が有利に進む。
4-2 ケース2:労働者の復職の意思が強く会社が復職に応じられない場合
労働者が「お金はいらないから、職場に戻してほしい」と強く主張している場合も、結果として解決金が高額になることが多い。
会社側は、一度解雇した人間が職場に戻ってくることで生じる人間関係のトラブルや組織の混乱を、何よりも嫌がる傾向がある。
「どうしても戻したくない会社」と「どうしても戻りたい労働者」の間で折り合いをつけるために、会社側が「戻らない代わりに、これだけの上乗せをするので納得してほしい」と、高い金額を提示してくるのである。
4-3 ケース3:給料が高い場合
解決金の計算は、基本的に「月給の〇ヶ月分」という形で行われる。そのため、もともとの月収が高い人は、必然的に解決金の総額も大きくなる。
例えば、月給が100万円を超える外資系企業のシニアマネージャーなどの場合、半年分の解決金だけでも600万円、1年分であれば1200万円という大きな金額になる。
また、こうした高所得者の場合は「次の仕事が見つかるまでの期間」が長く見積もられることもあり、月数そのものが上積みされることもある。
4-4 ケース4:残業代の未払いなどもある場合
解雇の問題だけでなく、これまでのサービス残業に対する「未払い残業代」の請求もあわせて行う場合である。
不当解雇の解決金に加えて、本来支払われるべきだった残業代を合算して合意することになるため、最終的な受取額は非常に高額になる。
とくに管理職だと言われて残業代を払われていなかった人が、実は法律上の「管理監督者」には当たらない(名ばかり管理職)と判断されるようなケースでは、数百万円単位の残業代が上乗せされることも珍しくない。



5章 適正な不当解雇の解決金を獲得する方法
法的な見通しを分析することなく会社から提示された「わずかな退職金」だけで安易に納得してはいけない。
不当な扱いに対して正当な解決金を得るためには、戦略的に手続きを進める必要がある。
大切なのは、感情的にぶつかるのではなく、法的なルールに則って淡々と準備を進めることである。
一つひとつの手順を確実に踏むことで、会社側も「適当な対応では済まされない」と理解し、真剣な交渉に応じてくるようになる。
5-1 手順1:弁護士に相談する
まずは、労働問題の実務経験が豊富な弁護士に相談することが重要である。
自分のケースが本当に不当解雇にあたるのか、証拠は足りているのかをプロに判断してもらう。
正しい見通しに基づいて一貫した対応を行っていくことが解決金の増額にも繋がっていくことになる。
5-2 手順2:通知書を送付する
弁護士を代理人として、会社に対して「解雇は無効であり、納得できない」という内容の通知書を内容証明郵便などで送る。
これを送ることで、「法的手段も辞さない」という強い意思が会社に伝わる。
個人で交渉しているときは相手にしなかった会社も、弁護士名の入った書類が届くと、顧問弁護士と相談して具体的な解決案(金額の提示)を検討し始めることが多い。
5-3 手順3:労働審判を申し立てる
話し合いで折り合いがつかない場合は、裁判所で行う「労働審判」という制度を利用する。
労働審判は、裁判官と専門の委員が間に入り、原則として3回以内の話し合いで解決を目指す手続きである。
通常の裁判よりもスピードが速く、数ヶ月で結論が出ることが多いため、生活を守りながら早期決着を望む労働者にとって非常に有効な手段となる。
ここで裁判所から示される「解決案」は、解決金の額を確定させる大きな根拠となる。
労働審判とは何かについては、以下の動画でも解説している。
5-4 手順4:訴訟で主張立証を尽くす
労働審判の結果に納得がいかない場合や、事案が非常に複雑な場合は、正式な「訴訟(裁判)」へと進む。
裁判では、証拠をもとにどちらが正しいかを徹底的に争うことになる。
時間はかかるが、解雇がいかに不当であるかを法的に証明しきれば、判決によって高額なバックペイを勝ち取ったり、それを背景に有利な条件で和解したりすることが可能になる。
粘り強く戦う姿勢が、最終的な解決金の額を左右するのである。
不当解雇の裁判については、以下の動画でも解説している。
6章 不当解雇の解決金についてよくある疑問
解決金は、これまでの苦労に対する正当な対価である。
手元に残る金額を最大化し、後からトラブルにならないよう、正しい知識を身につけておいてほしい。
6-1 Q1:不当解雇の解決金の税金は?
解決金の税金は、最終的には実態により判断される。
解決金という名目で源泉なども約束していない場合には、第一次的には当事者間では紛争を解決するための一時所得とする認識であることが多い。
退職所得や給与所得とする場合には、源泉が必要となり、合意する段階でも、「退職金」や「給与」との名目とし、源泉する旨を明記しておくべきである。
慰謝料として非課税とする場合には、「解決金」ではなく、「慰謝料」という名目にすべきである。
6-2 Q2:不当解雇の解決金は確定申告が必要?
解決金について、源泉されず一時所得として処理される場合に、労働者において確定申告することになる。
6-3 Q3:会社が不当解雇の解決金を払わない場合は?
会社不当解雇の解決金を払わない場合には、労働者としても和解に応じず、判決をとったうえで、強制執行に向けて手続きを進めていくことになる。
和解したのに約束した解決金を支払わない場合には、どのような手続きで和解したかによる。
強制執行認諾文言付きの公正証書や労働審判の調停、裁判上の和解で約束した場合には、そのまま執行(差し押さえ)を申し立てることができる。
これに対して、訴訟外で当事者間で合意書や示談書を作成しただけの場合には、訴訟を提起して、合意に基づいて解決金を請求し、判決を得たうえで執行をすることになる。
6-4 Q4:試用期間の不当解雇の解決金は?
試用期間中であっても、会社が自由にクビにできるわけではない。解雇するには、正社員と同様に「客観的で合理的な理由」が必要である。
ただし、試用期間は「適性を見極める期間」としての側面があるため、正社員として長く働いている場合に比べると、解雇のハードルが少し低くなる現実がある。
そのため、解決金の相場も通常よりは若干低めになる傾向がある。
6-5 Q5:バイトの不当解雇の解決金相場は?
アルバイトやパートタイム労働者であっても、法律上の保護は正社員と同じように受けられる。
不当な解雇であれば、解決金を請求することは当然可能である。
金額は、それまでの勤務実績やシフトの入り方にもよるが、やはり「平均的な月収の数ヶ月分」が目安となる。



7章 不当解雇の相談はリバティ・ベル法律事務所へ
不当解雇されたら、是非、リバティ・ベル法律事務所に相談してほしい。
この分野は、専門性が高い分野であるため、弁護士であれば誰でもいいというわけではない。
法的な見通しを分析したうえで、あなた自身の意向を踏まえて、適切に方針を策定する必要がある。
リバティ・ベル法律事務所では、解雇や退職勧奨事件に力を入れており、とくに外資系企業や管理職の不当解雇問題に圧倒的な知識とノウハウを蓄積している。
初回相談は無料となっているため、まずはお気軽にご相談いただきたい。
8章 まとめ
以上のとおり、今回は、不当解雇の解決金について説明した。
突然、解雇をされたら戸惑うかもしれないが、安易な発言や態様は控え、法的な見通しに基づいて、冷静に対処していくことが成功の秘訣だ。
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