【特集】アイデアの源泉は社会課題。未来を見据えた「ものづくり」で人と社会を幸せにする | 有限会社小沢製作所 小沢達史
町プロタウンのBiz.会員のみなさんにお話をお伺いして、事業活動を通して実現したい想いにスポットライトをあてていく特集記事をお届けします。
今回舞台に登場していただいたのは、有限会社小沢製作所・代表取締役の小沢達史さんです。
小沢製作所は「板金屋のための板金屋」。大手メーカーの第一次サプライヤー企業から依頼を受け、半導体製造装置、医療機器、エレベーターや工作機械の筐体(きょうたい/機械を納める箱)や部品の製造・加工を手がけています。
ニューヨークの大学院で学んだ経営知識を活かし、自社製品のアウトドアブランド「OZOPS」立ち上げ、さらに現在は自然と触れ合う体験価値の提供という新たなチャレンジに取り組む小沢さんの物語の扉を開いてみましょう。
プロフィール

小沢達史(おざわ たつふみ)|有限会社小沢製作所・代表取締役
1986年東京都八王子市生まれ。東京薬科大学生命科学部卒業後、ニューヨーク州へMBA取得のため渡米。帰国後はB2B向けITベンチャー企業にて開発職に2年間従事する。その後家業である小沢製作所に入社、2019年に代表取締役に就任。「ものづくりは人と社会を幸せにするためにある」という理念を新たに掲げ、「作りたいに応える」ビジョンのもとに精密板金技術で製造業を支えている。
▶男の子二人のパパ
▶ロッククライミングやバックカントリースノーボードを始めたい
▶趣味:読書・ラジコン・ギター インドア趣味も多い
Xアカウント:https://x.com/Tazfumi
コーポレートサイト:http://www.ozawass.co.jp/
「ものづくりを続けるには?」逆算思考からの自社製品開発
「長期的な視野で見たときに国内の人口は減少する。大手メーカーさんとの取引きだけを事業にしていたら、いくら『作れます!』といっても『要らないよ』って言われる日が来るんじゃないか、と恐怖を感じたんです」
有限会社小沢製作所の小沢達史さんは、自社製品の開発・販売を始めたきっかけについてこう語る。
小沢製作所は1966年に小沢さんの祖父が創業した町工場だ。食品の安全検査装置などの産業機械やエレベータ向けの精密板金部品の製造を主軸に事業を展開してきた。
顧客は日本国内にある大手メーカーの第一次サプライヤー企業。大手メーカーとは直接取引をせず、「板金屋のための板金屋」を掲げ、専門技術で日本のものづくりを支えてきた。最終納品先の業界を意図的に分散させてきたので、業界の市況に左右されにくいというのが小沢製作所の強みだ。
祖父・父・自分と受け継がれてきた安定した事業を33歳で継いだ小沢さんだったが、入社前に決算書類を読んでいた時から、低い利益率と不安定な売上高に危機感を抱いていた。営業先に振り回されているのではないだろうか......。漠然と肌で感じていた危惧の念、それは2018年に『ライフシフト』という本を読んだ時、近い未来に迫る困難として浮かび上がってきた。
「デジタルと違って、『もの』って手で触れるじゃないですか。視覚や聴覚だけじゃなく、触覚で感じられるものを提供する『ものづくり』には普遍的な価値があると思っていて。事業を続けていくためにはどうしたらいいか考えたんです」
ニッチな領域でトップを取るか、M&Aなどで上流工程と下流工程の事業を取ってくるか、自社製品を開発するか。持続可能なビジネスモデルを模索していた小沢さんが選んだのは、自社製品の開発と販売だ。
2019年にアウトドアブランド「OZOPS」を立ち上げると、メスティン専用の調理ストーブ「M8 Stove」、金属工作と焚火を楽しめる体験型の焚き火台「小焚台」、影絵がテーブルやテント内を彩るフルメタルのランタンシェード「クラフトシェード」など、次々と新商品を開発。さぞアイデアマンなのであろうと思って尋ねたところ、意外な答えが返ってきた。
「『OZOPS』で大事にしているのは、開発は課題があるところから、という点です。最初から、アイデアを自分たちだけで出し続けるには限界があると思っていました」

「ギアはもう業界に溢れているから次は場所だよね」というバイヤーさんの言葉にヒントを得た
「ものづくり」への愛着を語りながらも、冷静な分析で次の手を打つ戦略家の横顔も見せる小沢さん。いったいどんな経歴を歩んできたのだろうか。
「ものづくりのDNA」xニューヨーク仕込みの知見
創業者である祖父の初孫かつ男子だった小沢さんは、幼い頃から「三代目」と呼ばれ、工場に隣接した家で育った。工場は巨大な遊び場で、六歳頃から遊び半分で家業を手伝い、小遣いを稼いでいたという。
「週末も工場に行き、祖父と午後三時ぐらいまで仕事をして、その後おもちゃ屋さんに連れて行ってもらっていました。『ものづくりは面白い』という純粋な気持ちが芽生えた原体験ですね」と振り返る。
高校生の時に祖父を亡くし、進路に迷った時期もあった。祖母から「おじいちゃんは『三代目』って言ってたけど、やりたいことやってもいいんだよ」と言われ、経営学部から生命科学部へと進路を変更。当時興味を持っていたライフサイエンスの研究職を目指したが、大学一年生の時にすでに「全然やりたくない」と思ったそうだ。四年制大学卒業後は再度経営に舵を切り直し、MBAを取得するためにニューヨークの大学院へ留学した。
2008年、リーマンショック直後のアメリカ。厳しい経済状況、心を折られていくアメリカ人を目の当たりにしながら、単一民族としての日本人の弱さも痛感した。
「日本人って欧米人に対して委縮して強く言えないところがあるじゃないですか。でも僕は『ここまで来たんだったら喧嘩してやろう、ちゃんとディスカッションして言い返せるようになろう』って思っていました」と、当時の心境を語る。クラスメイトに負けないよう、議論では自分の意見を主張し、学業でもトップを目指した。

このニューヨークでの経験は、小沢さんの精神的な成長の糧となった。二年間のIT企業勤務を経て家業に入ってからは、海外の人材を積極的に工場に雇い入れた。ボーダーレスの経営を実践する小沢さんの姿は、他の社員の刺激にもなっているという。
次なる挑戦、自然と触れ合う体験価値の提供へ
アウトドアという領域の中で、様々な人とのコミュニケーションを通して課題を発見し、それを解決する商品を開発する。アウトドアが好きだからこそ、楽しみながらモチベーションを維持してアイデアを探し続けてきた小沢さんだが、これから目指すところは単なるアウトドアギアの開発ではない。
「OZOPS」で得た経験から、小沢さんは新たなブランドの立ち上げを計画している。その理念は、自然と触れ合う体験価値の提供。都会に住む人々のアウトドアリテラシーを高めることで、自然の中で心を豊かにする時間を創出したいと考えている。これは、「小焚台」を通じて、親子で自然と触れ合うことが重要だと気づいたことから生まれた発想だ。
工場がある東京都・八王子市の自然が小沢さんに与える影響も少なくない。地域とのつながりを大切にしながら新しい価値を提供し続けたいと、工場見学を受け入れたり、子どもの体験型ワークショップを開催したり、といった活動にも積極的に取り組んでいる。

会員の企業の仕事体験ができる他、ワークショップも数多く企画されている
「ものづくりは人と社会に幸せをもたらすもの」と語る小沢さんの理念は、ただの利益追求にとどまらず、社会貢献をも視野に入れたものなのだ。
町プロタウンのコミュニティーと共に進化する未来を見据えた「ものづくり」
小沢さんは、町工場プロダクツの魅力を「常に新しい人が入ってくるところ」だと語る。新しい風が絶え間なく入ることで刺激を受け、化学反応が起こり、新たなイノベーションが生まれる。それは、他の団体にはない独自の魅力だ。
化学反応に対する熱量の度合いはメンバーそれぞれだが、コラボレーションに前向きな人たちが地域や年齢に関係なく集ってきて、それぞれが外を向いているところがすごいと感じている。
「困りごとがあると、必ずといっていいほど誰かが知見を持っている。情報の鮮度や収集の範囲には、本当に驚かされます。それを助け合い・お互い様の精神で共有しあっているのは、独自文化ですよね」
町プロタウンで刺激を受けながら、小沢さんの頭には次なるアイデアが浮かんでいる。「町工場X自然X教育」の可能性だ。

「自分のなかで像はまだ結べていないのですが、「OZOPS」の次のブランドがスタートしたら、やりたいことがどんどん広がる気がするんです。保育士や幼稚園の先生など、教育について僕の知らない知識や経験を持つ方々に仲間になっていただくのも面白そうですよね」と、今後の展望を語る。
社会課題をアイデアとした飽くなき探究心、町工場プロダクツの仲間とのコラボレーション、教育機関との連携...…。小沢さんの挑戦は、町工場の枠を超え、社会全体のwell-beingに貢献する可能性を秘めている。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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