小説|夏日影に消ゆる君 #4
四、
草刈りを終え、湊と連絡先を交換した詩音は、家には帰らず、そのまま家主に教えてもらった品揃えの良いホームセンターと、安くて新鮮な野菜が買えるというスーパーに買い出しに出かけた。接近する台風に備えるためだ。
外はまだ明るいものの日没間近ということもあり人はまばらで、地元の人らしい何人かがいるだけだ。
詩音は近くの駐車場に車を停め、ビーチに降りてみることにした。
波打ち際からそう遠くない距離の砂浜に座り、寄せては返すさざなみのキラキラと光る泡粒を眺めていると、犬の散歩をしている五十代くらいの女性が詩音に挨拶をしてくれた。
女性が去ると今度は孫を連れて歩いている七十代くらいの男性が話しかけてきた。
東京に住んでいたときは行き来する見知らぬ人たちとこうして言葉を交わすことなどほとんどなかったが、人との繋がりを感じられるこの町でこれから生活していくのだと思うと、とても充実した気持ちになった。
詩音はふと琉生のことを思った。彼もこの町で生まれ育ったのだろうか。年は自分と同じようにも見えたが、どこか達観したような目をしていて、なのに掴みどころがなく儚げな印象すら感じさせる彼が、一体どんな人物なのか知りたいと思った。
あの時、彼があの場所を去ろうとした時、詩音はとっさに「また会えるか」と口にした。もう二度と帰らないどこかへ行ってしまいそうだと思ったからだ。
また会いたい。明日もあの場所に行けば会えるだろうか。
落日の光が波に混ざり合うのを見つめながら、詩音は暫しそんなことを考えていた。
