いいワークショップは、始まる前に9割決まっている―― お客様が主役であり続ける「場」のつくり方
マクニカ 営業統括本部 DXコンサルティング部の吉田です。

私たちは数年にわたり、製造業のお客様と一緒に「勉強会」や「ワークショップ」という場をつくってきました。半日から数日という短い時間で、特定のテーマについて、お客様自身が「自分たちの現在地」「ありたい姿」、そしてその間にあるギャップを言葉にしていく――そんな場です。
ありがたいことに、終わったあとに「やってよかった」と言っていただけることが少なくありません。ただ、その理由は、当日に私たちが何か特別なことをするからではないと感じています。
むしろ逆で、いいワークショップは、始まる前にほとんど決まっている。今日はその「準備の中身」を、できるだけ正直にお話ししてみます。
ワークショップの成否は、始まる前に9割決まっている

ワークショップというと、当日その場の空気をどう温めるか、いかに対話を引き出すか、という「ファシリテーションの腕」が語られがちです。もちろん大切ですが、私たちの実感は少し違います。当日の出来は、準備でほぼ決まっている。乱暴に言えば、準備が9割、当日が1割です。
ここで言う準備とは、資料をきれいに整えることではありません。アジェンダ(当日の細かな流れ)、ワークの設計(何を個人で考え、何をグループで議論するのか、どんなアウトプットをめざすのか)、そこで使うフレームワーク――こうした骨格を、お客様の状況に合わせて一つひとつ設計しておくことを指します。
逆に、ここが甘いと、当日どれだけ場を盛り上げても、終わってみれば手元に何も残りません。
「自分ごと」は、つくれる

ワークショップがうまくいくかどうかは、参加者が「自分ごと」として取り組めるかにかかっています。そして私たちは、この「自分ごと」を、当日の雰囲気づくりに頼らず、あらかじめ構造として準備できると考えています。
私たちが大切にしているのは、「企画窓口」「参加者」「マクニカ」という3者の体制です。
企画窓口とは、「短い時間で、自分たちのテーマを整理しよう」という発想に共感し、一緒に場を立ち上げてくださる、お客様側の旗振り役です。この方とは、いわば運命共同体になります。一方、当日集まる参加者の方々が、最初から前のめりとは限りません。日々忙しいなか時間を割いていただくのですから、それは自然なことです。
だからこそ、私たちは企画窓口の方と一緒に、参加者一人ひとりについて「なぜ、この場にこの人なのか」「この場を通じて、その人が得られるものは何か」を、事前に丁寧に言葉にしておきます。ここがあいまいだと、せっかくの時間が「とりあえず席に着いているだけ」になってしまいます。
もう一つ。人が真剣になるのは、自分の考えが「誰かに届く」とわかっているときです。だから私たちは、ワークの結果を最終的に「誰に向かって発表することになるか」まで、あらかじめ設計します。
直属の上司の前で。あるいは、その上の経営層の前で。届く相手が見えていると、場の真剣さは自然と変わります。これは参加者の性格の問題ではなく、設計の問題だと考えています。
当日、私たちは「何もしない」ことに力を注ぐ

準備を終えて迎えた当日。私たちが一番気をつけているのは、「マクニカが入りすぎないこと」です。
ワークの主役は、あくまでお客様の参加者です。私たちはファシリテーションに徹します。時間を管理し、議論が詰まれば少し角度を変えた問いを投げて前へ進める。けれど、ワークそのものに「マクニカの一員」として加わることは、基本的にしません。
ときどき「マクニカも各チームに一人ずつ入ってほしい」とお声がけいただくこともあります。それでも、あえてお断りすることがあります。参加者の方が普段考えていること、普段は言いづらいことを引き出すことこそが、この場の価値だからです。私たちの意見に引っ張られてしまっては、もったいない。
同じ理由で、ワークのアウトプットを私たちが代わりにまとめることも、あえてしないことがあります。自分たちの考えを、相手に伝わるように整理し、構造化する――その作業ごと、参加者の方々に体験していただきたいからです。
ワークには、もう一つ小さな工夫があります。グループで議論する前に、必ず一度、個人で考える時間を取ること。いきなり「ではグループで話し合ってください」と始めると、どうしても声の大きい人に引っ張られ、いい考えを持つ物静かな人の意見が出てこなくなります。限られた時間でも、まず一人で書き出してから議論のテーブルに乗る。それだけで、アウトプットの質は大きく変わります。
当日の流れは、おおよそ「導入 → 講義 → ワーク → 発表 → 総評」です。時間が押すこともありますが、そのとき私たちが削るのは講義であって、ワークと総評は最後まで守ります。参加者が自分の手と頭を動かす時間と、その努力を経営層がその場でねぎらう時間。この二つだけは、何があっても譲りません。
余談ですが、先ほどの「各チームに一人ずつ入ってほしい」とお声がけいただいたワークショップ。終わったあと、企画窓口の方が「お金をかけてでも、やってよかった」とおっしゃってくださいました。もし私たちが入っていたら、たぶんあの言葉は聞けなかったと思います。
誰と、その場をつくるか
これだけ準備の話をしておいて何ですが、すべての出発点は「誰と一緒にこの場をつくるか」です。
私たちが何より大切にしているのは、企画窓口の方が「熱い変革マインド」を持っているかどうか。やり方も方向性もまだ見えていない。それでも「現状をどうにか変えたい」という思いを抱えている――そういう方と組めたとき、ワークショップは驚くほどうまくいきます。
言い換えれば、私たちはお客様に「正解」を持ち込む存在ではありません。変えたいという熱を持つ方の隣で、その熱が形になる場を整える。それが私たちの役割だと思っています。
実際、この考え方で場をつくると、終わったあとのお客様の様子が変わります。誰かから与えられた答えではなく、自分たちの言葉で現在地を語り、次の一歩を自分で決めている。だからこそ、その場で出た結論は、後々まで自分たちの手で動かし続けられます。
私たちが何かを教えたから、ではありません。最後まで主役であり続けたお客様自身が、それを成し遂げた。その結果だと思っています。
お客様が、主役であり続けるために
いいワークショップは、始まる前に9割決まっている。そして当日、私たちは「何もしない」ことに力を注ぐ――。
矛盾しているようですが、私たちにとってこの二つは同じことです。お客様が主役であり続けられるよう、場の条件を、見えないところで徹底的に整えておく。派手なことはしません。けれど、終わったあとにお客様自身のなかに何かが残る場を、これからもつくっていきたいと思っています。
「自分たちのテーマでも、こういう場をつくれるだろうか」。そう感じていただけたら、ぜひ一度、お声がけください。
お問い合せ先:AsgDcd@pn.macnica.co.jp
