その「FDE」。誰のために前線に立っていますか?バズワード化する「FDE」と、私たちが19年前からやってきたこと
エム・エー・ディー 代表の高橋守です。
ここ最近、「FDE(Forward Deployed Engineer)」という言葉を急に見かけるようになりました。直訳すれば「前線に配備されるエンジニア」。会議室で仕様書を書くのではなく、顧客の現場に自ら入り込み、課題の発見から実装、運用までを一気通貫でやり切る、そんな職種です。
OpenAIやAnthropic、Salesforce、そして元祖であるPalantir。名だたるAI企業がこぞって採用を強化し、国内のスタートアップや大手も追随しています。「the hottest job in tech(いま最もアツい職種)」とまで呼ばれ、高い報酬水準も相まって、転職市場でも大きな話題になっています。
この潮流自体を、私は心から歓迎しています。
ただ、これだけ持ち上げられている今だからこそ、ひとつだけ、現場の側から言っておきたいことがあります。
それは、その「FDE」は、いったい「誰のために」前線に立っているのか、という問いです。
まず、FDEという考え方は本物です
誤解のないように言うと、私はFDEという発想そのものを高く評価しています。
なぜなら、これは多くの企業が抱える「AIを入れたのに、現場で使われない」という根深い問題への、ひとつの正しい答えだからです。
優秀なAIモデルを作っても、PoC(実証実験)止まりで終わる。ツールは導入したのに、現場では誰も使っていない。この「PoCの墓場」が生まれる原因は、たいてい技術力の不足ではありません。現場の暗黙知を、AIが動ける要件へと"翻訳"できる人がいないことにあります。
FDEは、まさにこの断絶を埋める存在です。顧客の業務現場に入り込み、何が本当の課題なのかを自分の目で見極め、その場で手を動かして「使われる仕組み」にまで落とし込む。コンサルタントのように「提案して終わり」でもなく、受託開発のように「言われたものを作って終わり」でもない。だから「第三の存在」とも呼ばれます。
この思想は、間違いなく正しい。問題は、その「正しさ」が、いまどんな文脈で語られているか、です。
落とし穴:FDEは「自社プロダクトを売る人」でもある
いま語られているFDEの多くは、AI企業やSaaSベンダーが自社で採用しているポジションです。
ここに、見落とされがちな構造があります。ベンダーに所属するFDEは、どれだけ現場に深く入り込んでも、最終的には「自社のプロダクトを定着させること」がミッションの中心にあります。Palantirなら自社プラットフォーム、SalesforceならAgentforce、各AI企業なら自社のモデル。彼らが優秀であればあるほど、その製品は現場に深く根を張っていきます。
もちろん、それ自体は悪いことではありません。優れた製品が広がるのは良いことです。
しかし、事業者の立場で冷静に考えてみてください。前線に立ってくれるそのエンジニアは、「御社にとって最適な解」を探しているのでしょうか。それとも「自社製品が最適だと示せる解」を探しているのでしょうか。
この2つは、似ているようで決定的に違います。
本当に必要なのは、「どの製品を入れるか」ではなく、「御社の事業にとって、どのツールを、どう組み合わせ、どう全体を指揮するか」を、しがらみなく考えてくれる存在のはずです。特定のプロダクトを背負った瞬間、その中立性は、どれだけ個人として誠実な人であっても、構造的に揺らぎます。
これが、流行語FDEに潜む、いちばん大きな落とし穴です。
私たちは19年前から、それを「指揮」してきた
ここから少し、自分たちの話をさせてください。
実は、エム・エー・ディーがやってきたことは、世間が「FDE」と名付けた働き方そのものです。私たちは2007年の創業以来、ずっと顧客の現場に入り込み、事業の本質的な課題を、事業者と同じ目線で解決してきました。ただ淡々と。
そして私たちには、売るべき「自社プロダクト」がありません。だからこそ、完全に事業者の側に立って、最適なツールの組み合わせを「指揮」できます。これは以前のnoteで書いた「自動化からオーケストレーションへ」複数のAIやシステムを、オーケストラの指揮者のように束ねて全体を調和させる、という考え方と、まっすぐつながっています。
さらに言えば、私たちは「前線に出る」だけでは終わりません。3つの事業の軸が、それを物語っています。
①DX Solution :事業戦略という超上流から、設計・開発・運用、その先のグロースまでを自社で一気通貫に担う。FDE的な「最後までやり切る」仕事そのものです。
②Start-up Support :労務出資型の開発モデルで、新規事業に資本参加までしてコミットする。前線に立って終わりではなく、出資者として事業の成否を背負い、「同じ船」に乗ります。
③In-house Support :お客様自身が変革を回し続けられる組織・人材・開発文化を育てる。ベンダー依存を残すのではなく、「自走できる組織」を残します。
つまり私たちは、前線に出る(Forward Deployed)だけでなく、資本ごとコミットし、最後は所有権ごと現場に残していく。FDEという言葉の、さらに一歩先にいる、そう自負しています。
御社のFDEは、御社の側に立っていますか
FDEブームは、本質的には良いことです。「現場に入り、やり切る人材こそが必要だ」という認識が広がるのは、私たちにとっても追い風です。
ただ、その言葉に飛びつく前に、一度だけ問い直してみてください。前線に立つそのエンジニアは、御社の事業の側に立っているのか。それとも、誰かのプロダクトの側に立っているのか。
エム・エー・ディーは、特定のツールを売るベンダーではありません。御社の事業を起点に「何が本質的な課題か」を見極め、最適な組み合わせを当事者として指揮し、最後は自走できる組織を残す、そのために19年間、現場に立ち続けてきた会社です。
「FDEのような人材・パートナーがほしい」「AIを入れたが現場で使われていない」「もう一段、事業の本質から変えたい」。そんな課題があれば、ぜひ一度ご相談ください。御社の「指揮者」として、私たちが前線に立ちます。
