『なるほどですね』には心がない
『なるほどですね』には、心がないとたね二郎はいふ。
『なるほど』が、単なる相槌に過ぎないと悟った。
それは同意でもなければ承認でもない、それはいい。
が、『ですね』は違和感といふ。
私は驚いてたね二郎を見る。
眉間にしわを寄せて納豆をこねる横顔は
五つの頃より変わらない、太くて短い眉毛だ。
どんより煙る眉根は
まるで梅雨空に立ち込める低い低い雲のようだ。
たね二郎はテレビの画面へ遠い目を向ける。
『なるほど』に『ですね』までつけるから
どれだけ言うのか数えてしまうのじゃないかと。
納豆をこねくり回すたね二郎の箸は躊躇しない。
『なるほどですね』には心がないとたね二郎はいふ。
ー それって、あなたの感想ですよね?
言いかけて呑み込む。
たね二郎の
あどけないうわの空の話である。
なんつって。

あるときのたね二郎の担当編集者さんの口グセが「なるほどですね」だったらしい。
しかも毎回、相当な頻度でそれを発するものだから、会話しながら頭の中で「なるほどですね」と言われるたび、カウントするようになった。
そんな自分にいたたまれなくなり、「なるほどですねって、ただの相槌ですよね」と聞いた。
聞いた、尋ねた、というより、たね二郎のことだから、会話に集中できないから止めてくれという強いニュアンスがあったと思う。
私の責任じゃないけれど、担当の方に何だか申し訳ない思いで気まずい。
いつもお読みくださる方は、親のカオが見たいとお思いのことと百も承知だけれど。
私だってこんなふうに育つなんて思ってもみませんでしたよ。
親でさえ、承服しかねる言動が大杉二郎です。
そんな二男との日常エピソードをちょいちょい晒していたら、この記事でいつの間にか16話になっていました。
ネタの塊たね二郎。
私の住む東一丁目に梅雨の気配が漂い始めた。
それは、ネタ二郎たね二郎に今年もまた梅雨が来ると、いふこと。
この前、雨に降られて帰って来た(雨男ですw)と思ったら、
「防水加工した衣類でよ、事故になりやすい洗濯機のタイプってあるんよ。知っとる?」
「防水加工の服を洗うときは気をつけた方がいいで」
洗濯しない、洗濯機を持たない、靴下裏返さない核衣類保有の三原則みたいなお方がいったいなんのお話でしょうか。
どの口がそれを言うのかと、持ち主のカオをしげしげと見てしまうけど。
同時に、あら?もしかして?と期待する気持ちも湧いてしまう私は愚かな母でしょうか。
「へぇ大変♪」「あらまぁ、そうなのね♪」
なんて、浮かれた相槌を打ってぬか喜びしたとて、また大量の洗い物を担いで帰って来るたね二郎に、こないだあんなこと言ってたくせにとボヤいて、買うなんてオレは言ってないと、すかされることはわかっているのに。
そんな私に癒しをくれるnoteの仲間がこんなイラストをくれた。

『たね二郎語録Tシャツ』だそうだ。
これまでのたね二郎エピソードで書き記して来た、たね二郎の迷言暴言戯言をTシャツにしてしまいなよと描いてくれた。
進次郎構文なるものがネット上でも持ち切りのように、たね二郎構文が私には山ほどある。
どうせなら『たね二郎の365』ってカレンダーもどうよと、商品開発に乗り出しそうな仲間もいる。
たね二郎の前でしれっとこれを着て、『日めくりたね二郎』をちぎる自分を想像してひとしきり笑った。
あどけない母の架空の話である。
繰り返すけど、たね二郎にまた梅雨が来る。
もう土下座でも何でもするから
いい加減、洗濯機買って。
