オレはアンチになった
カメムシ二郎こと、たね二郎がコンパクトな黒いケースをテーブルに置いた。
鼻が少し膨らんでいる。
そっと滑らせたジッパーが開くと、中からさらに漆黒のモノがのぞいた。たね二郎はそれをチラリとこちらに向ける。
ああ、はいはい。「これ見て」のサイン。
ブレーキランプ点滅5回のサインがなんだって?の歌詞も面倒くせと思ったけど(ファンの皆さんすみません)、たね二郎、おまえもそのクチか?
カオは無表情のままだけど、鼻はさらに膨らんでいる。
興味ないフリしてテーブルを片付けていたけど、これは乗ってやらなきゃいけないらしい。
(オンナはオトコのそういう幼稚さをわかっていても一応乗ってやっているのだぞ。口にしないのは面倒くさいだけだぞ。)
「キタ!」
眉を大げさに動かして私は言ってやった。
つられてたね二郎も表情筋をクシャっとさせた。そういうところは5歳児のまま過ぎて吹き出しそうになる。
それはさておき。
たね二郎のもとへようやく届いた、ソレ。

もう年を越すのかと思っていたら、ちょっと早いサンタさんのサプライズ?
年の瀬に来て今、悲願のソレw
さぁ、手にされてみていかがですか?
ヒーローインタビューみたいにマイクに見立てたビール缶を向けたら、たね二郎はムッとして、さっきまでの5歳児表情筋をリセットしてしまった。
「もうどうでもよくなったわ。ってか、むしろアンチになったし」
あらあら。
↑ この記事は初夏だった。
まだかまだかと膨らみ過ぎた期待は、秋を過ぎた頃に行き場を失った。そうして短い秋は行き、長袖もヒートテックに入れ替えて越冬を迎えた頃、そのエネルギーは反転していた。
6回目も落選したと聞いたときは、どんだけツイてないヤツなんだろうと関係ない私もさすがに言葉がなかった(とはいえ、ウケちゃったけど)。
抽選に落ちまくった2025年。それでもなお、Dreams Come Trueを信じて。
何度でも何度でも何度でも立ち上がり 呼ぶよ
君の名前 声が枯れるまで
待って待って、待ち焦がれたこの半年。
そして、キライになった。
愛の反対は無関心と誰かが言っていた。関心を寄せることが愛なのか?と、どこか腑に落ちないのは、私が愛というものがわかっていないのかもしれない。けど、慕わしさと憎さが表裏一体なのはわかる。
アンチも執着よね。可愛さ余って憎さ百倍。
ここのところカメムシカメムシとうわ言のように語っていたのは、その執着解放のカタルシスだったのか?
気にするまいと頑なに閉ざしても、塞いでも、小さな隙間から侵入して自尊心を脅かすメタファーがカメムシ?
カメムシのハナシがぴたりと止んだのはそれでか。
そうか、カメムシもアイシテルのサインだったのか。
4K解像度?とかでYouTubeをつけて見せたり、コントローラーの着脱や、本体のキックスタンドをまるで実演販売のようにして見せながら、ひとしきり説明する。私が使うわけじゃないんだけど。
でも、一応つき合って「へぇ」とか「ほう」とか言ってみる。
なのに、楽しそうじゃないのと笑うと、やりたかったゲームももう興味失せたわーとか返して来る。
だったら私がもらってやるよ?
でもどうせ、そういうことじゃないって言うでしょうに。
「なんかさー、アンチの気持ちがようわかったわー」
アンチアンチとぶっきらぼうに繰り返してるけど、ソレを持つ指はとっても丁寧だったりしてんだよね。
皆さまにおかれましては、毎度、馬鹿馬鹿しいおハナシにおつき合いいただきまして恐縮です。
そんなこんなでたね二郎のところにもようやく悲願のアレが届きました。
