何だか夏っぽかったレポート
夏色カルピス
夏になるとカルピスに目が行くのは何でだろうと、スーパーの冷蔵ショーケースの前でカルピスたちを眺めている自分にふと気づいた。
幼い頃、カルピスは買うものではなく『頂く』ものだった。
熨斗のついた箱が届けられるのが七月だったから、カルピスは夏のイメージがあるのかもしれない。
氷を入れたカルピスを飲む午後は、どこかへ連れて行ってもらうこともなく、毎朝のラジオ体操と、朝顔の水やりと観察がルーティンだった夏休みをアップグレードしてくれた。
カルピスは夏の季語でイケるんじゃないかとそんなことを考えてただけなのに、いつの間にかそれがカゴに入っていて、私の中の市原悦子が(あら、いやだ)とつぶやいた。

プレーンでなく『ひんやりライチ』を手に取ったのはたぶん、『7/1 新発売』とあったのと、そういえばライチの風味ってどんなだっけ?と思ったから。
家に帰ってさっそくひと口。
後味にすこーし塩味を感じるものの、ライチが探せなかった。
そういえばライチって、食べた記憶もあまり浮かんで来ない。中華料理とか、ホテルの朝食バイキングみたいなところで食べたんだっけ。
味も香りも特にクセがなくて、ほおばるとほぼ水分の塊のような果肉はすぐにクシュっとなくなって、口の中にはビワみたいな大きいタネが残る。
ライチって自己主張しない謙虚さがいい。
はかない果実だけれど、でもカルピスならではの甘みを邪魔しないバイプレイヤーだと思う。
ライチってどんなだっけといいつつ、汗をかいたあとのカルピスならこれがいいって誰かにおススメしてみよう。
ひんやりライチカルピス。
夏の身体にもピース。
夏色チーズケーキ(というか、たね二郎?)
たね二郎が東京へ仕事で行った帰りに羽田空港でチーズケーキを買って帰ってきた。
「なんか、チーズケーキ喰いたいなぁ」
数日前、氷を入れた緑茶を飲み干してふと漏らしたたね二郎に「ちぃずけぇぇきぃい?」と、復唱して返した。
たね二郎の好きなスィーツ、というか甘味ベスト3は確か、
①かりんとう
②かりんとう饅頭
③ドラ焼き
と、記憶している。
なのに、緑茶を飲んで何でチーズケーキが飛び出したんだろう。
「え? オレ、前から好きだったけど?」
こんな一般常識を知らないの?みたいな言い方するけど、いやいやいや、生まれてこの方、あんたがチーズケーキと自ら発音したのを聞いたことない気がするよ。
味オンチだし、そもそも食べ物に対して「喰える」か「喰えない」、せいぜい「喰いやすい」しかないたね二郎にいきなり指名されたら、「お呼びになったのはワタクシでお間違いありませんか?」とチーズケーキは目を丸くして確かめに来ると思うよ。
土産菓子もたいていは『白箱』(いわゆる観光用に大量生産され、販売地域の包装が施されたもの)を買って来てしまうし、以前広島へ行ったときはなぜだか長崎文明堂のカステラをぶら下げて帰って来た。
そんなたね二郎が、「美味しいチーズケーキはどこで買えばいいのか」と訊くので、どうせ東京行くんなら羽田空港内で人気のショップを検索しておいて、帰りに買って来たら?と答えた。
羽田空港はチーズケーキの宝庫だよ。
そうしてたね二郎が選んだのはバスクチーズケーキだった。
ひゃ~びっくり。
出塁したことがないバッターたね二郎が満塁ホームランを打ったに等しい功績。
みんなで賛辞を送りまくり、拍手喝采&ハイタッチで讃えた。
「チーズケーキでオレこんなに褒められるん?」
たね二郎は怪訝なカオをして言った。

『母の日限定』容器の
画像しか探せませんでした
税込¥3,780 (直径約10㎝)
チーズケーキと夏。
というか、チーズケーキをお土産に帰って来たたね二郎が何だか夏だなぁと思った。
何でだろう?
夏に入荷する秋
先週、七月生まれの知り合いに暑中お見舞いを出した。
というか、誕生日を過ぎてしまったので暑中見舞いということにした。
誰かにちょっとした挨拶を出すときはたいてい季節のメッセージカードにしている。

メッセージは裏側に書けるようになっている。
定型外封書なので料金を測ってもらいに郵便局へ行った。
窓口の横には夏シリーズのメッセージカードがたくさん並んでいた。
それを横目に料金を払いながら、「秋シリーズのはいつ出るんですか?」と対応してくれた局員さんに話しかけた。
「あぁ、秋シリーズのものは夏には出ますね」とおっしゃるので「え?今って夏じゃないんですか?」と聞いたら、「夏…、ですね」とカレンダーに目をやって答えた。
「ですよね」と答えて、財布をしまいながら私は続く言葉を待ったけど、局員さんは「ありがとうございました」と会釈をしただけで、もう何も言わなかった。
夏色千切り瞑想
大して包丁の扱いが上手くはないのに、なぜだか千切りが好きだ。
野菜が細く切断されて行く感触と、まな板に響く刃音で私は無になれるからかもしれない。
ボウルに溜まっていく千切りのキャベツやニンジンに心も満タンになって行く。
近くのデパートに四半期に一度、私が20年ほど愛用している包丁メーカーが出張販売に来る。そのときに無料で包丁研ぎもやってくれるので今回は行こうと決めていた。
包丁研ぎをしてもらいに行くのに決意が必要なのは、そこの職人さんがコワいからである。
ルーティンで代わる代わる出張で来るのだが、愛想良かったのはかつて一人だけ。あとの人は不愛想極まりない。
黙ったまま包丁を受け取ってぶっきらぼうに対応されるのがまるで「どうせ何にも買ってかねぇんだろ」と言われてるみたいで苦手なのだ。
すみません、その通りです。
でも、切れ味の鈍った包丁では千切り瞑想に入れない。
自分じゃうまく研げないから行くしかない。
恐る恐る包丁を差し出すと、当番の職人さんが「いらっしゃい」の挨拶もなく黙って手を出した。
コワいので包丁を渡すとさっさとそこを離れて出来上がりまでの数十分、フロアをウロウロする。
仕上がり時間になって受け取りに戻る。
「あのぉ…」と、ビクビクしながら声をかけると、職人さんはチラリと視線だけを私に向け、黙ったまま包丁の入った箱を差し出す。
ピョコっと頭を下げそそくさと去ろうとする背後に声がした。
「よぉ切れるようにしといたから、指切らんようにな」
振り向くと、次の包丁を研ぎながら職人さんがチラリと視線だけをこちらに向けた。
「あ…りがとうございます」
包丁の箱を抱えて私がおどおど礼を言うと、職人さんの口元がちょっとだけ緩んだ。
帰宅して早速、試し切りがてら『瞑想』に入った。
サクサクの違いをどう表現すればいいんだろう。
手元が信じられないほど軽い。負荷をまったく感じない。
タマネギもミョウガもキラキラ輝く透明な断面を見せてくれる。
コレ、おんなじ包丁?と惑うほどのキレ味だった。

千切りしたタマネギとミョウガをこんもり乗せて冷や奴にした。
包丁で千切りした野菜は何でこんなに美味しいんだろう。
勝手に怖がって申し訳なかったな…と、職人さんのカオが浮かぶ。
おかげで極上の千切りを頂けています。
千切り野菜の旨い、夏。
以上、今月バラバラ書いてた下書きをまとめてみたら、
何となく夏っぽいなと思ったことでした。
