空飛ぶタコ ヘミングウェイ
老人は海を見ていた。
八十年、この海を見てきた。
イルカも、嵐も、戦争も、全部この海が見せてくれた。
「あれは何だ」
観光客の若者には見えなかった。
いや、見ようとしなかった。

スマホの画面の中にしか、世界がなかった。
老人だけが知っていた。
海の上に、空がある。
空の上に、夢がある。
夢の上に、タコが泳ぐ。
「ほら」
老人は何も言わなかった、、
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・:
ただ、指を一本、空に向けた。
若者が顔を上げた瞬間——
港の上空に、それはいた。
誰も笑わなかった。
誰も、もうスマホを見ていなかった。
老人は静かにコーヒーを飲んだ。
勝負は、もうついていた。
