東京大学野球部が勝つということ
東京六大学野球には、早稲田・慶應・明治・立教・法政、そして東京大学が参加しています。
他の大学リーグと違って「2部」がなく、入れ替え戦もありません。つまり、この6大学だけでリーグが成立しているため、どれだけ負けても東大はずっと“1部”に居続ける仕組みです。
しかし…それが東大野球部のストーリーをいっそう面白くしています。
■ 東大だけ「スポーツ推薦なし」という現実
六大学の他の5校は、スポーツ推薦で全国から強い選手が集まります。
一方の東大は、共通テスト+二次試験(4教科5科目)を突破した学生のみが入部します。
つまり、野球で勝つために入ってくる選手と、学力で東大に受かってから野球部に入る選手では、スタート地点がまったく違うのです。
それでも東大は、頭脳を活かした作戦や効率の良い練習でレベルを上げ、毎年なんとか強豪5校に食らいつこうとしています。
「日本一難しい大学で“負け続ける野球部”が存在する」このねじれが、六大学野球を特別なものにしていると言ってもいいと思います。
■ 出身高校から見ても“東大らしさ”が出ている
六大学の強豪校の多くには、甲子園常連の高校から選手が入ります。
一方、東大は甲子園経験者すらほとんどいません。国学院久我山など、名門校から入部した選手が出ると“ニュース級”です。
「甲子園に行って、なおかつ東大に入る」
これはほぼ不可能に近いので、そういった選手が来るだけでファンがざわつくほどです。
■ “1勝”と“勝ち点1”は全く別物
大学野球は3試合制(先に2勝した方が勝ち点)。
東大が1勝することは年に一度程度ありますが、その多くはエースが絶好調で投げ切る試合です。
しかし「勝ち点1(=2勝)」となると、話は別。
1勝は偶然でもできても、2勝は実力がないと絶対に取れません。
だからこそ東大が勝ち点を取った試合は、普通の1勝よりも価値がずっと大きいのです。
■ 忘れられない“東大の応援席”での出来事
以前、東大 vs 明治 の試合を東大側応援席で見たことがあります。
試合は負けムードで、応援席もどこか静かでした。
ぼーっと見ていた私の横に、チアの女子学生が近づいてきて「さあ、応援しましょう!」と声をかけてくれたんです。
そのあと配られた応援紙を読んで驚愕しました。
そのチアの女子学生、なんと “理Ⅲ(医学部)” だったのです。
日本最難関の学部に通いながら、野球部を全力で応援する。
正直、度肝を抜かれました。
東大の運動部が勝つのは簡単ではない。でも、その「なかなか勝てないからこそ応援したくなる空気」が応援席にはありました。
努力する選手たちを、全力の笑顔で応援する東大生たち。
その姿には、どこか“人生の余裕”みたいなものを感じて、すごく温かい気持ちになりました。
