ストーンヘンジとローマンバスとお城の孔雀
1991年2月半ばから3月末にかけて、四天王寺大学短期大学部英語科のカリキュラムに従い、イギリスで40日間のホームステイを経験した。
8割がアメリカにホームステイする中、2割だけイギリスに行くことができた。
私達の年度は、イギリス内だと更に20人ずつ、内陸のソールズベリーと海沿いのボーンマスという場所へ行き、二手に別れての暮らしをするという決まりであった。
私は憧れていたイギリス内陸部にあるソールズベリーを希望し、それが叶ったのである。
ソールズベリーと一口に行っても、40日間通学する学校に歩いて通えるほど近いお宅にステイする者から、有名なストーンヘンジの麓にあるお宅に分散しての滞在であり、バス通学をせねばならない生徒も数名居た。
私は友人とダブルステイだったこともあったからか、学校より一番遠い、このストーンヘンジの麓にあるホストファミリー宅に迎えられた。
その為、ステイ先に到着した翌日には、ホストマザーにバス停を案内してもらい、バス通学に使用する1か月定期券を購入することから、イギリス生活が始まった。
そして、大学側が用意してくれた現地での休日活動については、土日の休みに必ずイギリス内のどこかに小旅行へ連れて行ってもらえることが決まっていた。
ソールズベリー内でCathedralや有名所(ゆうめいどころ)に行くことは学校帰りにできた。
だから、ソールズベリーの外に出て、歴史探訪を大学側の用意するバスで連れて行って頂けたのは、日々の生活上、金銭的にかなり有難かった。
よく耳にする土地の名前や、反対に全く知らない所など、様々な場所を訪問した。
基本的にイギリスは歴史遺産が多くあり、古城や教会、遺跡を毎週楽しむことが叶った。
友達の中には私と同様、自称「歴女」がひとり居て、私と歴史談義に花を咲かせたものである。
彼女は世界史が好きで城に訪問するたび、
「ギロチン部屋あるかな?地下に牢屋あるかな?」
と、目を輝かせていた。
私は日本史のほうが好きではあるが、日本の歴史を知れば知るほど、世界との繋がりを理解し、世界史にも興味を持ち出していた。
そういう年頃だった故、初めてソールズベリーのホスト先からほど近い「ストーンヘンジ」へ、ホストファミリーに連れて行ってもらえた時は、随分と感動したものである。
「ストーンヘンジ」の案内板には、
「古代の時計台」
だと記載されており、日本で流行っていたUFO関連の番組で、
「『ストーンヘンジ』はUFOの発着場だ」
という話が、ガセネタであると先ずはハッキリして、モヤモヤしていた気持ちが雲散霧消したのだった。
また、学校からの旅で、ヤマザキ・マリ先生の「テルマエ・ロマエ」が執筆される前に「ローマンバース」を訪問できたのも良かった。
「ローマンバース」にはイタリアの「真実の口」に似た、口をうっすらと開けて顎髭をたくわえた男性の顔を彫刻した石造物が、壁にかかっている。
異国情緒溢れる遺跡だが、大衆浴場あるいは温泉に近しいとわかれば、親近感が急に湧いた。
石の突起が一面にあり、この上を湯が覆っていたと想像すると、日本の江戸時代にあった銭湯のように立って入るスタイルだったのだろうと推測できる。
水が貴重なイギリスに、いにしえは日本に通じるこんな習慣があったとは驚きだった。
ヤマザキ・マリ先生の「テルマエ・ロマエ」が刊行されてからは、この時に感じた歴史観を胸に灯しながら拝読できた。
それから、何故かイギリスの古城にはどこの庭園にも孔雀が居た。
動物園でしか見ない孔雀が、史跡内を麗しい羽を広げながら、優雅に歩いている姿を認めると、
(これぞ異世界だわ)
と思ったのだった。
日本と似た史跡もあれば、全く違う文化。
石柱時計である「ストーンヘンジ」や「ローマンバース」には、日本へのホームシックを掻き立てられたが、城や庭園に居る孔雀、それに教会と神社仏閣の違いからは、反対にイギリスをもっと堪能したい気持ちが芽生えた。
シェークスピアの家や、ケンブリッジ・オックスフォード大学という歴史建築物も思い出深い。
1991年の我々がホームステイに向かいし時代は、私を含め飛行機に搭乗するのが初めてという生徒がほとんどだった。
そういう私達が異国文化に浸れたのは贅沢な経験だった。
「大英博物館」のミイラを横に写真撮影したのも、今では懐かしい。
父親には、
「お前はホームステイに参加したらアカン」
と言われたが、これは四天王寺大学短期大学部英語科の卒業論文になる、ホームステイ中、毎日、日記をつけホストファミリーにチェックして頂いたノートを提出せねば卒業できなかった。
だから、私もホームステイに参加し、異文化・世界史・イギリスと行き来があったヨーロッパ諸国に興った世界の歴史を始め、かなり貴重な経験ができた。
それは、世界に於いていにしえからのいぶきを見聞できた神様からのプレゼントであり、実家からお金を出してもらえたことに、今だ感謝は尽きない。
