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第四章 禁断の恋(続き1)

    彼の義弟とのお見合いは、彼夫妻の自宅で催されることになりました。

    当日、私の実家まで彼が車で迎えにきました。

    私を助手席に乗せると、いきなり手を撫でられました。
    (一体何?)
と怪訝に思いました。しかし、手を引っ込めることもできず、されるがままになりました。

    更に、また、
    「お前を俺の身内にしたい。俺のそばに置いておきたい」
と言われたのです。

    持ち物のような言われ方に嫌な気持ちがしました。

    でもこれから彼の自宅に行きお見合いをするのです。

    お見合いと言っても堅苦しくはなかったのですが、奥様の弟ということについては緊張していました。

    それに、車内は二人きりです。これ以上、何かをされては……と思う気持ちもありました。だから、おとなしく助手席で身を沈めていたのです。

    義弟は私とお見合いをする時、既に彼女が居て、しかもその彼女は妊娠していました。

    それを知ってか知らずか、彼夫妻は私を自宅に招き義弟と合わせたのでした。

    奥様の親御さん、特にお母様に私は大変気に入られました。
    「息子と結婚してくれるなら嬉しいわ。編み物をすると言っていたから、私と趣味も合うし。編み針のセットをプレゼントしようと、買っちゃった」
と、お母様は仰っていました。

    しかし、肝心のご子息は私になど全く眼中にはなかったのです。

    後日、彼から会社で、
    「義弟(おとうと)には好きな人が居て妊娠しているから、大急ぎで挙式することになった。お前との話はなかったことにしてもらうから」
と言われました。

    この時、彼は、
    「義弟(おとうと)が羨ましい。結構美人な女で若いのを連れてきたからなあ。なかなかやるなあと思ったね」
と言ったのでした。私は耳を疑いました。

    男性というのは、女性をそんな風に見ているのかと……。

    彼の奥様からは手紙がきました。
    「弟とのことは残念です。縁がなかったと思って下さい」
という冷淡な物でした。

    私は義弟に、彼女は居ないと言われ、私を騙してお見合いに臨まれたことが許せませんでした。義兄の頼みだから断れなかったのかもしれませんが、子供まで作っておきながら、
    (あわよくば、私を保険にという考えがあったのではないか?)
と疑い、
    (この方は、彼女に対しても、彼女のお腹に居る子供に対しても失礼な。全くもって誠実ではない)
と憤りました。

    お見合い以降にも思わせぶりな電話があったから、尚更怒りがこみ上げました。



    この後には、彼の実弟とのお見合い話を持ってこられました。が、これには母が反対しました。

    彼に写真をせがまれて渡しましたが、お見合いはしませんでした。

    その後、写真を返して欲しいと言いましたが、彼は返してくれませんでした。写真は実際、彼が持っている可能性も未だにあります。

     この頃、後に執筆する、上司からのお見合いを受けました。それを知った彼はソワソワし出しました。

    今思えば、上司のお見合い話に身を委ねたほうが良かったのかもしれないと、少し後悔しています。

    しかし、こちらの方(かた)とは縁がなかったのでしょう。また当時の私は恋愛がしたかったのだとも思います。その辺りのことについては、第五章に詳しく記すつもりです。



    義弟とのお見合いの後、彼が、
    「申し訳なかった。お詫びに食事でもと思っているから、今夜どうかな?」
と誘ってきました。

    自宅での彼は愛妻家に見えましたから、私は気をゆるしていました。

    いえ、気をゆるしたのではありません。そう思うことで彼と合う口実にしたのです。罠が見え隠れしているのに引っかかってもいいと考えている自分が何処かにいました。

    彼に対して抱(いだ)いた気持ちは不思議でした。

    嫌だと思ったことが何度もあるのに、何故か一緒に居たいとも思う複雑な感情が渦巻いていました。

    奥様に対しては、お見合いの時とは明らかに違う私への態度……弟が大事だという思いから、冷淡にあしらわれたことへのあてつけがあったのかもしれません。

    繁華街の一角で彼と食事をしていたら、
    「俺は、お前と結婚したい。嫁とはもうダメだと思っている。だから、嫁と別れてお前と一緒になりたい。お前とは性格が合うとわかっているから」
と告白されました。

    その言葉を信じてはいけなかったのです。

    これは、後に知ったのですが、当時の男性にはよくある話でした。

    妊娠中の妻が相手にしてくれない時の遊びであり、
    「嫁と離婚してお前と結婚したい」
は、口説き文句の常套句だったのだと。

    でも私は物の見事に彼が張り巡らした蜘蛛の糸に捕まったのでした。

    結婚という言葉の餌に食らいついてしまいました。

    店を出て、繁華街の雑踏を2人で歩いていたら、彼が急に、私の襟元から手を突っ込んで、胸を触りました。

    突然のことでびっくりしていると、ラブホテル街を歩いていることに気付きました。

    抵抗することなく、彼に絆され、その闇に私達は消えました。

     後に彼が、会社の同僚にこう吹聴したことを耳にしました。
    「俺は、あの堅物を落としたぞ。処女を奪った」
と。

    どうやら男性のステータスだったのでした。

    そんなこともわからず、社会経験に乏しい私は、彼と1年間付き合ったのです。



to be continue.