上諏訪の駅ソト、甲州街道と温泉の町
中津川と塩尻の間、どこだったか半端なところで、運転見合わせによりそれ以上進めず、降ろされたホームで待ちぼうけることになった。焦燥感の中しばらくして復旧したが、そもそも列車の本数はそれほど多くない上、特急が優先して運行された。
普通列車はただでさえ時間がかかるのだから尚更焦りは募る。その日は上諏訪まで行く予定だった。結局は諦めて塩尻まで特急列車に乗ることにしたのだけど、「秋の乗り放題パス」があるにも関わらず、追加の特急料金だけでなく通常運賃も合わせて必要だからやるせない。
そうして辿り着いたJR上諏訪駅は、そこが駅であることを忘れてしまう異次元空間だった。旅行しているはずが、過度な疲労から脳内麻薬によりトリップしてしまったのだろうかと疑ったほどである。
足元を見て歩こう
駅構内の足湯と温泉たまご処によって身も心も温まった翌日、諏訪湖周辺を散策しながら、再び明るくなった街を歩いた。

見知らぬ町ではデザインマンホールを探してしまうけれど、町の地下に埋め込まれているのはそれだけではない。所変われば見知らぬそれらにも出会うことがあるから、つい足元を見て歩いてしまう。

全くの予備知識ゼロで街を歩くと、見るもの全てが新鮮だ。
通りすがりに登録有形文化財の建造物を見つけたりすると無性にウキウキしてしまう。


歴史に見る人の心の拠り所
不意に少し開けた空間があって、なんだこれはと近づいてみれば、何やら赤と青のバルブが密集している。

どうやらこれも温泉らしい!
甲州街道沿いの宿場町・上諏訪は、下諏訪と共に古くから温泉地として知られている。(と、私は今回の旅で知った)
案内板によると、最も古い記録に『湯ノウ権現』という名のお宮さんが登場したり、諏訪湖の御神渡りを記録した史書に『平湯渡』という言葉が登場するという。
宿場町として栄えるより以前、少なくとも鎌倉時代にはなんらかの温泉の存在が知られていたと見られ、市内の温泉湧出地や湧出跡地から縄文土器が発見された例もあるのだとか。
古の時代から続く温泉……
人類はいつから湯に浸かるようになったのだろう。
下の諏訪に温泉三処あり、上の諏訪に四所有
この記述にある四所の温泉の一つが、かつてここにあった『精進湯』だと考えられているそうだ。
そう、これは温泉跡地なのである。

JR上諏訪駅構内の足湯同様、とても綺麗に維持されている
古くから温泉と共にあったこの土地は、諏訪大社の門前町として、高島藩の城下町として栄えてきた。
湯量豊富で家老が湯屋敷を構えたり、武士や庶民が集ったりした。
殿様も利用したらしい登城口の『虫湯』は高温で、蒸気を利用した「蒸湯」があったと見られているそうだ。
ダジャレやん!(超訳:言葉遊びは日本人の心ですよね)
ちなみに私は日本史や世界史はからきしである。地理選択だったせいにしている。だからこそなのか、旅の中でその土地の歴史に触れるとビシバシと好奇心が刺激されてしまう。

花火輝く泉のほとり
JR上諏訪駅もそうであったけれど、とにかくこの街は遊び心にあふれている気がしてならない。

何やらカラフルなタイルが嵌め込まれた箇所を眺めてみると、どうも花火っぽいデザインだ。

これまで諏訪湖は壮大かつ神秘的な自然現象「御神渡り」が起こる場所として認識していたのだけど、どうやら夏の花火大会も相当なものらしい。
築城当時は諏訪湖に浮いて見えたことから『浮城』と呼ばれ、桜と紅葉の名所でもある高島城、そして氷塊が隆起する凍てつく湖と湖畔で眺める大輪の花火。
諏訪の地には四季を通して何かある

駅温泉の足湯、霧ヶ峰の美味しい水、街中の手湯、清潔な環境、そして歴史的背景についての知識も、その素敵な時間のすべて、この土地の人間の心意気によって形成され、維持され続けている。
JR上諏訪駅、再び
そうこうしている間にJR上諏訪駅に到着した。
昨夜は気づかなかったけれど、『JR上諏訪駅』の表示の左側に取り付けられた丸いパーツも、たまご割りレールと同じく(『レールで卵を割れる駅|JR上諏訪駅』を参照)鉄道由来の資源循環だろうか。
そうしてさりげなく遺してゆくのは素晴らしい発想だと思う。

明るい時間に眺めてみると、また違った所が目についた。
ガラス窓には「諏訪神仏プロジェクト」というポスターが貼ってあり、象に乗った普賢菩薩が大写しになっている。まだ見たことがない仏像だったし、諏訪周辺の寺社で一斉に公開される『諏訪神仏』というのが気になった。
そして「高島城」はまさにさっき知ったもので、昨日までは気にも留めていなかった。

駅への入り口の『上諏訪駅』の看板文字が、とても良い雰囲気を醸し出している。

(諏訪だし、地元の木材だと勝手に思っている……)
そして昨夜は気づかなかったけれど、改札前に足湯(+特急)の宣伝パネルあり。

私は駅構内に足湯があることに驚愕したけれど、昔は入浴施設があったらしい。(こちらの記事で記述されている)
やっぱり管理やメンテ、人の配置などの課題もあったのだろうか。
駅直結の温泉、駅前温泉は旅をする者にとってこの上なく有難い存在だ。
けれど旅をする時の、その土地にお邪魔させてもらってるという感覚からすれば、住民が日常使いできるような施設でないと「誰のための施設?」となってしまう。
ビジネスライクなスーパー銭湯や、さらに高額の滞在型の入浴施設が下手に参入してくるよりは、風情と共にこの足湯だけでも残ったのは嬉しい。

ショーケースに展示される花火玉も、昨夜は全く気づかなかった。
こうして飾られているということは、やはり歴史が古く規模の大きな花火大会なのだろう。

そして上諏訪駅 で面白いと思ったのは、『上諏訪』表示の種類が多いこと。これも新旧共存しているとか、そういった背景があるのだろうか。



やり残したことの多い上諏訪には、また行かねばなあと思う。
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