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古都奈良の地下ダンジョン

 10月14日は「鉄道の日」。
 折角なので、地元・奈良の馴染みある駅について書いておこう。

 辿り着いた其処は地下に広がるダンジョンで、私たちはまず地上を目指すことにした。そして太陽の下に降り立った時、今までに見たことのない町の光景を知ったのだ。
 本当に同じ空の下なのかと、目を疑ってしまったほどだった。

奈良県民、奈良へゆく

 奈良県民だが奈良市民ではない私は、近鉄奈良駅や奈良公園周辺(奈良博や美術館、ならまち等々)へ向かうことを「奈良へ行く」と言う。

 おそらくこれは「『奈良』以外の奈良」に暮らす者にとって当たり前の物言いだ。「元々、奈良におるやん!」と家族や友人から突っ込まれたことは無いものの、県外の方や移住してきた方にとっては面白いポイントで、少なからず反響を生んだ話題でもある。

鹿のラッピング電車の床は若草山かな?

 さて少し話が逸れたけれど、生駒山の麓で生まれ育った私にとって奈良公園は庭のようなものでありつつも、「奈良へ行く」ことについては何となく "おのぼりさん" のような心持ちになる。

 何しろあそこは都なのだから。

最近は駅のホームでもバンビを見かけます。さすがは "えぇ庭(A28)" ですね。

Old History, New Discovery.

 世の多くの人にとって漠然としたイメージで凝り固まってしまうのは、観光地の定めなのかもしれない。けれど、その視野でもって「奈良が好き」と言われましても(奈良県民としての偉そうな感想)。

 SNSなどでイメージや雰囲気だけで捉えた投稿が9割以上を占めるのは、自らが発見したものではない。
 「すでに知られているものを自分も見た」
 ただそれだけのことではないか。それは修学旅行的な発見だと思うのだ。

ラッピング電車の良いところは車内高広告に統一感があることだと思う

 それは入り口としては良い。
 けれど奈良市が「Old History, New Discovery.」なるスローガンを掲げるのは、歩き回るほどに新しい発見がある場所だからだろう。それは何が閉店して新しいお店ができていた、などという話ではなく。

 奈良の鹿だって本来は風景の一部に過ぎず、お互いに害さないからこそ同じ空間での共生を実現してきた。鹿に蹴られたり角で突かれたりすることがあるなら、それは人間の方が節度を守らずに近づいてバウンダリーを侵している証拠である。構い過ぎなのだ。

鹿も人間も空間を共有するだけ|奈良公園のラッピング電車

 奈良公園周辺は奈良のほんの入り口に過ぎないし、奈良公園界隈だって解像度を上げればもっと違う姿が見えてくるはずだ。

私鉄とJR

 奈良には市街地に近いJR奈良駅と東大寺や奈良公園そして「ならまち」に近い近鉄奈良駅があるけれど、私の居住区には近鉄線しか通っていないので普段の県内の鉄道利用は基本的に近鉄電車一択である。
 奈良を走る鉄道の8〜9割は近鉄電車ということもあり、今では大変お世話になっている「青春18きっぷ」は実は遠い存在だった。

 「奈良は遠い」とやはり漠然としたイメージで語られることが多いけれど、大阪難波駅からは50分程度、京都からは大和西大寺での乗り換え次第で40分から1時間程度である。

 只それだけの間に不思議な体験ができることはあまり知られていないかもしれない。さっきまで平城宮跡が見える地上に居たのに、いつの間にか奈良の地下に潜ってしまうのだ。
 それはまるで地を這っていた蛇が土に潜るように。

日常がエンターテイメントになる

 アミューズメントパークで並ぶのも良いけれど、奈良で暮らすとこのエンターテイメントが日常になる。そういったことを適度に楽しむためには、あまり人が増えないことが重要であることは言うまでもない。
 大阪難波駅からは680円、京都駅からは760円で臨場感のある旅になるのだから、それを観光のついでに楽しめば良いのだ。
(*運賃、所要時間は2024年12月現在の近鉄電車のもの)

近鉄電車と阪神電車の相互乗り入れが実現してから早15年

 大阪・京都だけでなく、今では神戸まで乗り換えなしで一直線に向かうこともできるようになったのだから随分と便利になった。そしてこれ以上の便利さは必要なく、程々で留めておくのが肝要である。

 始発駅の近鉄奈良駅を出発してコスモスやススキを横目に平らな奈良盆地を駆け、山の土手っ腹をぶち抜いて幾重ものビル群をかわしに躱し、そうこうしているうちにいつの間にか終着・神戸三宮駅に辿り着いている。

そんな旅がこの地下空間から始まる

その巨大地下空間に潜むもの

 あれは2024年の秋ごろだったか、近鉄奈良駅で新入りを見かけた。

ビビットなカラーリングと奥底から光を灯す黄色い瞳

 近鉄奈良駅へ到着すると大抵は皆ゾロゾロと地上へ向かうため、運が良ければこのように無人の地下世界をじっくりと探検することができる。

白地に青、赤、グレーのブチ・ボディ……新種のウシ科?

 電車の車体に沿って駅地下のホームを歩いていると、巨大な蛇か龍の巣にでも迷い込んだ気分になる。まさに辰年と巳年の過渡期においては。

反対側は赤い眼をしていた

 この地下空間はかなり広く、ここに暫く停車している車両たちは、人間で腹が満たされたら西へ向かって走り出すのだ。

EXPO2025ミャクミャクのラッピング列車

 この新種の龍は大阪・関西万博(EXPO2025)のラッピング車両で、赤・青・白の分かりやすいデザインはシンプルで好きだなと感じた。

誰も居なくて撮り放題だった

 それにいつまでも見られるわけではないだろうから、この日に見たのだと記録しておきたいと思って周辺をウロウロと歩き回った。

いっしょに奈良へいこな

黄色い電竜

 EXPO2025のラッピング車両のデザインは1種類ではなかったようで、別の日には黄色い車両にもお目にかかった。

河瀬直美さんは奈良県奈良市出身・在住の映画監督
良い庭(1128)

 黄色いレトロな車両って可愛いのだけど、白と黄色のデザインがとても爽やかで、近鉄電車のエンジ色を内包している姿も好ましい。

赤と青のミャクミャクと色の三原色を補完し合うような黄色が映えている
車内広告も黄色と白で統一されていてどこか神秘的

もしもタイムマシーンがあったら、あなたはそれに乗りますか?

Dialogue Theaterいのちのあかし

 近代的とも、未来的とも、そして過去から紡がれて来た夢とも言えそうな問いかけに、あらためてハッとさせられた。

地上を目指す道のり

 地下2階にあるプラットホームから地上を目指す。
 近鉄奈良駅のコンコースは地下1階で、近年やけに近代化しつつあるように思う。観光地として気合いが入っているのだろう。

いつの間にこんな風になったんだっけ?

 奈良っぽいようなそうでないような装飾もされつつ。

 それはさておき、改札横の駅員さんの窓口に近鉄特急のペーパークラフトが飾られていたのが可愛らしく、お声がけして写真を撮らせてもらった。

上から、青のシンフォニー、ひのとり、しまかぜ、あおによし

 ちなみに私が一番好きな近鉄特急は「青のシンフォニー」だが、唯一乗った事があるせいかもしれない。吉野からの帰りの特急チケットが、たまたま「青のシンフォニー」だったのだ。そんな感じで乗れてしまうのも素敵だ。

改札外のカオスなフォトスポット

 観光案内や色々な観光マップ、土産物屋を横目に地上を目指す。
 近鉄奈良駅に足りていないのは、装飾的なものではなくて、充分な個室数のある小綺麗なトイレだと思いながら。

あらゆる時代への導線

 いつ地下へと潜ったのか、いつも分からないけれど、地上は自家用車やバスに譲って、鉄道は地下に潜る。これは近鉄電車と相互乗り入れをする阪神電車の三ノ宮駅も同じだ。

 ただ神戸の街はこの先の未来も近代化を進めてゆくだろう。
 震災後の復興がバネになったとも言えるし、穿った見方をすれば「一旦更地になったから開発しやすかった」と解釈する人もいる。

最近のポストは頭に被り物をするのが流行りらしい

 そうでなくとも、日本の各地で絶え間なく開発が続いている。

 けれど奈良の街は、それも観光地としての「奈良」だけでなく、古くからの歴史と共にあるこの四方山に囲まれた土地くらいは、古きを潰して新しいものをこさえるのではなく、修繕を繰り返して未来にその姿を遺して欲しいと願う。

道端の象形文字のようなもの

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