ファームウェア更新で既存設定が消える『トラブル事例の話①』
「ただのファーム更新だから、すぐ終わるはず」──。
再起動後、機器は動くが 設定が初期化されている。
L3ルート・VLAN・PoE・Syslog・NTP・SNMP……全部消失。
原因は、設定がファームと紐づいて保存されていなかった、または
更新時の“互換性チェック抜け”。
現場では珍しくない“最も痛いミス”のひとつ。
何が起きる?(症状)
更新後にインターフェース設定がすべて初期化
VLANやLACPの構成が丸ごと消える
Syslog/NTP/SNMPなどの運用設定が全滅
管理用IPが消えて機器に入れなくなる
ルーティングテーブルが空の状態で起動
DHCPサーバ機能がオフになりクライアント全滅
なぜ起きる?(原因)
設定ファイルが“起動OS”と紐づくタイプで、
新ファーム適用後に旧設定を自動マウントしないメジャーアップデートで構文/機能が変わり、
古い設定が読めず破棄される事前のコンフィグバックアップなし
デュアルイメージ(A/B)機能があるが、
設定保存先を片側にしか書いていないスイッチ/APメーカー独自の仕様で
“初期化してから更新” が必須の製品があるWeb GUI更新で 設定同期が走らず コンフィグが飛ぶ
図:起動OSの切り替えで旧設定が参照されない典型パターン
[Flash]
├─ Image_A(旧OS) ← Config_A(実設定)
└─ Image_B(新OS) ← Configなし
更新操作:
Image_B でブート → Configなし → 初期設定で起動
切り分け(最短コース)
コンソールで起動ログ確認
→ “Loading default config” の記述がないかスタートアップ設定の存在確認
→ show startup-config(空かどうか)フラッシュ内の設定ファイル確認
→ dir flash: で config のファイル有無デュアルイメージの起動元確認
→ show boot / “Boot image” がどちらか旧設定ファイルを手動で読み込み
→ copy flash:config_A startup-config
今すぐできる対処(テンプレ)
フラッシュに残っている 旧コンフィグを手動ロード
copy flash:config_A running-config write memory
起動イメージを 旧OS(Image_A)に戻す
boot system flash:image_A.bin reload
GUI機器は バックアップファイルをインポート
DHCP/SNMP/NTP など運用設定を最低限復旧
ネットワークの要所(ルーティング/VLAN)を即座に再設定
恒久対策/再発防止チェックリスト
ファーム更新前に 必ず設定バックアップを取得
デュアルイメージ機器は 両方の設定を同期保存
メジャーアップデートは 互換性リリースノート確認
更新手順書に 「初期化してから適用する機器」 を明記
テスト環境で先に面倒を見る(検証→本番)
更新後は 設定復元チェックシートで全項目確認
GUIよりCLI(SSH/コンソール)で更新し、ログを確保
“設定が飛ぶ可能性あり”をチーム内で教育
落とし穴(よくあるミス)
GUIでのファーム更新で 設定を引き継がない仕様を知らない
“設定保存済”と勘違いして reload
旧OSに戻したのに 設定が別フォルダにある
コンフィグが暗号化されており、
他バージョンでは読み込めないL2機器は軽視されがちで、バックアップ文化が定着しない
まとめ
ファーム更新は“安全な作業”ではなく、
設定が失われるリスクを伴う最も危険な作業のひとつ。
バックアップがあれば10分で戻るが、
なければ数時間〜半日を失う。
更新前にバックアップを取る。
更新後に設定が残っているか確認する。
この2つを徹底するだけで、この手の事故は限りなくゼロに近づけられる。
