DHCPスコープが枯渇して新規接続できない『トラブル事例の話⑨』
「Wi-Fiが繋がらない」「IPアドレス取得中のまま」──。
APもスイッチも正常。通信障害でもない。
原因は DHCPスコープ枯渇。
新規端末に割り当てるアドレスがなく、
端末は延々と“IP取得待ち”のまま固まる典型トラブルだ。
何が起きる?(症状)
新規端末が「IPアドレスを取得できません」で接続不可
既存端末は通信できるため、障害に気づきにくい
DHCPログに “No free leases” が大量発生
APに多数の端末が接続/切断を繰り返す
ゲストWi-Fiで特に発生しやすい
一時的に “169.254.x.x” のAPIPAアドレスになる
なぜ起きる?(原因)
スコープサイズが小さすぎる(/25や/26など)
来客端末・BYOD増加で想定台数を超えた
端末の IPリース期間が長く、解放が進まない
タブレット・スマホがスリープ復帰で大量DHCP要求
ゲストVLANだけに利用者が集中
過去に追加した IoT 機器が大量にアドレスを占有
DHCPリレー/中継設定ミスで一部ブロードキャストが届かない
図:典型的なスコープ枯渇状況(/24前提)
DHCP Scope: 192.168.50.1 – 192.168.50.200
↑ 実質200台まで
接続端末 = 250台
→ 50台がIP取得不可
切り分け(最短ルート)
DHCPサーバの割り当て状況を確認
→ “利用中IP数” と “空き数” を見る対象VLAN・SSIDの接続台数を確認
→ APコントローラ・スイッチのMACテーブル端末の取得状況を確認
→ ipconfig /renew / dhclient で再取得テストリース期間を確認
→ 長期間(1日~1週間)になっていないかサブネットサイズの確認
→ /24 のつもりが /26 になっていないか設定を見る
今すぐできる対処(テンプレ)
スコープを当面拡張(/24 → /23 など)
リース時間を短縮(例:24時間 → 4時間)
使われていない固定IPを再整理しスコープへ戻す
ゲストVLANだけ別スコープを割り当てて“分散”
APやネットワーク機器でMACアドレスの残留セッションをクリア
DHCPサーバを冗長化し、複数スコープで分担
恒久対策/再発防止チェックリスト
端末台数調査を定期実施(実態把握)
DHCPスコープを“余裕を持って”設計(利用率70%以下)
リース期間を用途別に調整(ゲストは短め、固定端末は長め)
ゲスト・BYOD は専用VLANに分離し別スコープで運用
IoT の MAC 管理・固定IP管理を明文化
DHCPログ監視で枯渇警告を自動通知
新規SSID追加時は台数想定を必ず計算に入れる
/24 に固執せず柔軟にサブネット設計する
落とし穴(よくあるミス)
「/24だから十分」と思い込んで台数増加を放置
リース期間1週間のまま、短期利用端末が溜まり続ける
ゲストWi-Fiに社員端末まで接続し実数が倍増
DHCPリレーの誤設定で、一部のAPだけアドレス取得不可
固定IPを無駄に予約しすぎてスコープが実質狭い
変更後の確認ポイント
新規端末が即時にIP取得できる
DHCP利用率が60~70%で安定
AP・スイッチの接続端末数とDHCP割り当て数が一致
169.254.x.x になる端末が消滅
ログに “no free leases” の再発なし
まとめ
DHCP枯渇はネットワーク障害の中でも
**「気づきにくく、現場を混乱させやすい」**タイプ。
“既存端末は動く”ため、初期調査で見逃されがちだ。
ポイントは 容量確保・リース調整・利用状況の可視化。
台数は必ず増える前提で、
スコープは常に余裕を残しておくのが最適解だ。
