アップリンクの帯域不足で全体の通信が遅延『トラブル事例の話⑦』
ネットワークは生きているのに、全体的に遅い・重い・時々切れる──。
ログも安定、CPUも低負荷、ループもない。
それでも通信が詰まるときは、アップリンク帯域の飽和を疑うべき。
特定の誰かの大容量通信が、全社の帯域を食い潰している典型的なケースだ。
何が起きる?(症状)
社内全体で通信が遅くなる(Web表示が極端に重い)
Pingは通るが遅延がバラつく/時々タイムアウト
無線LANも有線も同様に遅い
モニタリング上はトラフィック常時90〜100%近く
夜間やバックアップ時だけ異常に遅くなる
クラウド接続やリモート会議が頻繁に切断
なぜ起きる?(原因)
上位スイッチ/ルータへのアップリンクが細い(1G×1本など)
一部端末・サーバがバックアップ/同期で帯域を独占
QoS(優先制御)未設定で全通信が同一優先度
P2P/動画配信/クラウドストレージの利用増加
トラフィック監視なしで飽和が長期間気付かれない
スイッチ間LAGの片側ダウンで実効帯域が半減している
図:アップリンクが細く詰まる典型構成
[Access Switch群]
│ (多数)
│
┌───┴───┐
│ 1G uplink│ ← 飽和
└───┬───┘
│
[Core / FW / Router]
切り分け(最短ルート)
トラフィック量を定量確認
→ SNMP/NetFlow/sFlow で上位ポートの帯域使用率を確認ピーク時間帯を特定
→ 毎日同じ時間に遅くなるなら定常負荷該当VLAN・ポートの通信内容を把握
→ トップトーカー分析(上位通信先/プロトコル)リンクダウン/LAG不一致を確認
→ show interface status / show etherchannel summaryQoS有無・設定状態の確認
→ 優先制御なしならベストエフォート競合状態
今すぐできる対処(テンプレ)
一時的に大容量通信(バックアップ・同期)を夜間限定運用に変更
上位リンクを2本に増設しLAG化(負荷分散)
**帯域上限設定(Rate Limit)**を端末・VLAN単位で適用
QoSポリシーを導入し、業務通信を優先
トラフィック可視化(sFlow/NetFlow)を有効化して常時監視
恒久対策/再発防止チェックリスト
アップリンク容量を定期的に見直し(利用率80%超を目安に拡張)
QoS設計で業務系通信を優先
LAG構成の健全性監視(片系ダウン検知)
トップトーカー分析を自動化
定期的に帯域レポートを作成・共有
バックアップ・動画配信など高負荷アプリの時間帯制御
新規VLAN追加時は帯域影響を事前評価
上位回線の契約帯域を“余裕を持って”設定
落とし穴(よくあるミス)
Pingが通るので「物理は正常」と判断して放置
QoSを入れてもキュー設定が不適切で逆に詰まる
LAGが片側死んでいても気づかず“半分帯域”で運用
クラウド同期アプリ(OneDrive, Dropbox)が常時帯域を消費
社内で動画ストリーミングを許可したまま帯域枯渇
変更後の確認ポイント
帯域使用率がピークでも70%以下で安定
Ping/Webレスポンスが改善
会議・VPNが安定し、切断が減少
トップトーカーが可視化され、異常トラフィックがすぐ判別可能
QoS統計で優先通信が正常に処理されている
まとめ
ネットワークの“重さ”は、
機器ではなく 上位帯域の詰まり であることが多い。
ハード障害でもバグでもなく、単なる容量オーバー。
「まだ1G空いてるはず」ではなく、
「80%超えたら拡張」──それが健全な運用設計。
帯域は目に見えない“回線の血管”。
詰まる前に、広げておくのが正解だ。
