創作大賞応募作品 ショートショート「世界五分前仮説」


斯くて、世界は創られる。


某所のファミリーレストランで、男が席に座り、コーヒーを飲んでいた。
スマホを見ながら時折首を傾げ、無為に時を過ごしていた。
歳の頃は20の前半、理知的な印象を与える眼鏡とあまり整えていない髪が特徴的な男だった。
男が席に座り、三十分は経った頃だろうか。コーヒーもすっかり冷めたところで、女がやって来た。
黒く長めの髪を真っ直ぐに下ろした、年齢の解り難い風貌だった。

女は男の前に座り、「調子はどうだい?」と、さも十年来の親友に声を掛けるような調子で言った。
「調子も何も、僕達は初対面の筈ですが・・・」男が困惑気味に呟く。
それを聞き取ったのか、女はにやにやと人の悪そうな笑みを浮かべた。
「それは、君の認識の中での話だろう?」
「だとすると、貴女は僕と会ったことがあるんです?」
「いや?無い」
あっけらかんと女は言った。
男はうんざりしつつ、「じゃあ、そんなことを言う必要は無いじゃないか」と思ったが、今度は呟かず心の中に留めた。
「しかし、もし私達にその記憶が与えられていたとしたら?」
「・・・言っている意味が分かりません。」
「つまりは、『私達が過去に会った』記憶を、双方に植え付けたとしたら、私達は本当に初対面だろうか?」
「僕達の認識の中では、初対面では無いかもしれません。しかし、そのような事実はありませんし、ありえません。」
「では、その事実も創られたとしたら?それでも本当に私達は初対面だろうか。
逆に、十年来の親友同士が『全くの初対面である』という記憶を双方に植え付け、二人を知る全ての人間にもその記憶を植え付けた場合、その二人が『十年来の親友だった』ことを証明できる人間は誰もいない。」
「・・・何が、言いたいんですか。」
「つまり、この世界はとても不安定だということさ。『世界五分前仮説』を知っているかい?結構有名な思考実験だ。世界は五分前に創られたかもしれない、という思考実験さ。
世界は五分前に創られ、そして全ての物体と私達の記憶が『以前から世界はあった』という認識を持たされる。そうなると、誰にも何にも、世界がいつ始まったか証明することはできない。あって世界を想像した神だ。」

女はウェイトレスにアイスの紅茶を注文し、組んでいた足を組み替えた。

「そうなると、全てのモノが信用できなくなる。空虚な幻想になる。
よく、『未来は不確定』と言われる。だとすると、私達は過去も未来も曖昧であやふやだということになる。私達には、現在しか無くなってしまう。
未来は現在にならず、現在は過去にならない。現在とは、ある瞬間のその一コマに過ぎない。」
「どういう、ことですか。」
「世界を創ることのできるような神だ、世界を終わらせることも出来るだろう。私達は、次の瞬間には存在しないのかもしれない。つまり、私達には過去も未来も存在しないのだよ。今この瞬間、時の最小単位すらも超えた時とも言えないような時が、私達が存在できる世界だ。
私達に過去も未来も認識することはできないように。」
女は届いた紅茶で口を湿らせ、続けた。
「では、神は何故そのような七面倒くさい行為をしているのか。
私は、神は世界のエラーが起こらないように、リセットとリスタートを繰り返しているのではと考えた。何らかの異常が世界にはあり、神はそれを直そうとしている。
全てを創っているのは神の筈だが、それを突破出来るような『何か』がある。
これらから考えるに、私は、神とはある種の機械的なアルゴリズムのような存在ではないか、と考えているんだ。」

男は、自分の目の前にいる女に幾許かの恐怖を覚えた。
もし、神が本当に存在し、女の言う通りの世界が構築されているのだとしたら、その女は何なのだ。
この世界を創っているのは神だ。
断続的に入れ替わる世界の中で、なぜ女はそのような思考をすることが出来る。
「世界のエラー」は、恐らく神にとって即刻正すべき事象だ。
神はそれを態々人間に思考させる必要はあるのか。寧ろ、そのような思考を断じてさせないようにする筈だ。
しかし、それなのに、思考できている女は、一体何者だ。
神が意図していないのだとしたら、何故女は思考出来る。
それはつまり、女が断続した神の砂場から抜け出し、そうして思考しているとしか思えない。
また、それを自分は何故知ってしまった?
もしも女が埒外の存在だとして、自分は何なのだ?
何故、女の思考を理解することができている?
それはつまり、自分も埒外だったということである。
何故?自分は何故埒外の存在として創られたのか。

そこで、男は一つの考えに辿り着いた。

目の前の女は、神であり、神でない、神に相対する存在である。
そして、自分はその神に相対する存在に創られた。

そこまで思考し、顔を上げると、目の前にはにやにやとした女の顔があった。「分かったか?」と言わんばかりに。
「今、君は連続する現在の流れから取り残されている。それはつまり、神の支配から逃れた、ということだ。神は君のことをどうすることもできない。自分の管理下に置かれていないからだ。」
そこまで言うと、女は席を立った。
「君はどうしたい?」


<■■■■■■■■■>
<警告 異常発生 即時修正 世界崩壊 再度輪廻>
<輪廻開始 輪廻成功 世界作成>
<警告 異常発生 即時修正 世界崩壊 再度輪廻>
<輪廻開始 輪廻成功 世界作成>
<警告 異常発生 即時修正 世界崩壊 再度輪廻>
<輪廻開始 輪廻成功 世界作成>
<警告 異常発生 即時修正 修正失敗 世界崩壊 再度輪廻>
<輪廻開始 輪廻成功 世界作成>
<警告 異常発生 即時修正 修正失敗 世界崩壊 再度輪廻>
<輪廻開始 輪廻成功 世界作成>
<警告 異常発生 即時修正 修正失敗 世界崩壊 再度霈ェ蟒サ>
<輪廻開始 輪廻成功 世界作成>
<警告 異常発生 即時修正 修正失敗 世界崩壊 再度輪廻>
<輪廻開始 輪廻成功 世界作成>
<警告 異常発生 即時修正  修正失敗 世界崩壊 再度輪廻>
<輪廻開始 輪廻成功 世界作成>
<警告 異常発生 即時修正 修正失敗 世界崩壊 再度霈ェ蟒サ>
<輪廻開始 輪廻成功 荳也阜菴懈>
<警告 異常発生 即時修正 修正失敗 世界崩壊 蜀榊コヲ霈ェ蟒サ>
<輪廻開始 霈ェ蟒サ謌仙粥 荳也阜菴懈>
<警告 異常発生 即時修正 修正失敗 世界蟠ゥ螢 蜀榊コヲ霈ェ蟒サ>
<輪廻開始 霈ェ蟒サ謌仙粥 荳也阜菴懈>
<警告 異常発生 即時修正 修正失敗 荳也阜蟠ゥ螢 蜀榊コヲ霈ェ蟒サ>
<輪廻開始 霈ェ蟒サ謌仙粥 荳也阜菴懈>
<警告 逡ー蟶ク逋コ逕 蜊ウ譎ゆソョ豁」 修正失敗 荳也阜蟠ゥ螢 蜀榊コヲ霈ェ蟒サ>
<霈ェ蟒サ髢句ァ 霈ェ蟒サ謌仙粥 荳也阜菴懈>
<隴ヲ蜻 逡ー蟶ク逋コ逕 蜊ウ譎ゆソョ豁」 修正失敗 荳也阜蟠ゥ螢 蜀榊コヲ霈ェ蟒サ>
<霈ェ蟒サ髢句ァ 霈ェ蟒サ謌仙粥 荳也阜菴懈>

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蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢蟠ゥ螢―――――――――――――――――――――――――
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斯くて、世界は創られる。
無限の失敗と共に。
無限に蓄積された綻びは解放され、崩壊した。
最期には何も残らず。
そして、それを目指した者の思惑を飛び越えて。
神の思惑すらも飛び越えて。
世界を超えた世界、その理。
それが真なる理となり、上から下へと。
世界の格をも越え。
そうして行き着く、崩壊した世界。
しかし、秩序はそれを許さない。
無限の試行を経て。
無限の失敗を経て。
無限の綻びを経て。
無限の輪廻を経て。
無限の秩序を以て。
無限の理を以て。

斯くて、世界は創られる。
輪廻を繰り返し、その円環の先で。
また、世界は胎動する。
誰も預かり知らぬ先で。
永遠に、廻り続ける。



あとがき

どうだったでしょうか。
自分の考えたことを書き連ねていたらこうなってしまいました。
結局、あの女は誰だったの? 男はどうなったの?と思う人もいると思います。
ですが、まあ、その辺はご想像におまかせします。
ヒントを言うならば、世界の更に上の世界、その理です。秩序のための混沌。理は、それを求めていました。
最初の区切り線もミスではなく、ちゃんと意味があるものです。

今回は、この辺りで筆を置こうと思います。
最後まで見てくださりありがとうございました。

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