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AI用半導体チップ市場と日系化学メーカーの戦略領域とは

我々はAI用半導体チップ市場のどこを獲得すべきか?

こんにちは。
マグナリープ株式会社です。

弊社の戦略コンサルティング&アナリティクスサービスは、「人とAIの共創」による独自のご支援スタイルをとることで、従来のコンサルティングファームにはない専門性と投資対効果を両立させています。

弊社の戦略コンサルティングサービスの1つに、「事業創出の為の技術マーケティングコンサルティング」があります。弊社では特に、化学、鉄鋼・金属、電機電子、通信、自動車、食品・ライフサイエンスといったモノづくり産業を得意としております。
今回のnoteでは、その中の1つからNVIDIAの株価乱高下などでも注目を集める「AI用半導体チップを支える材料市場」について、少しだけトレンドをご紹介しようと思います。


AI用の半導体チップ市場と材料市場のトレンド全体像

さて、そもそもAI用半導体チップ市場は2024年の約530億ドルから2030年には約3,000億ドルへ成長と、CAGR33.2%という驚異的な伸びが予測されています。
背景には生成AIの利用拡大、クラウド企業によるAIサーバー投資、そしてチップレット化・HBM搭載などパッケージ構造の複雑化があります。
従来、半導体の性能向上というと前工程にあるものが中心でしたが、チップレット化・HBM搭載による2.5D化/3D化などはすべて後工程がイノベーションの中心になります。
これに伴い、材料市場の検討も「微細化に貢献する前工程の材料」だけでなく、「熱対策」「絶縁・低誘電」「高密度配線」を可能にするパッケージ材料へと重心が移っています。

・チップレット化とは…
現代のAI向けGPUは異常に巨大化しています。例えば、NVIDIA A100のチップ面積は約826n㎡と言われており、これは一般的なスマホのチップと比べると10倍近いサイズ感です。

しかし、こうした巨大なAIチップをわずかな不良もなく完璧に作るのは簡単ではありません。面積が大きいほど歩留まりが発生する確率は上がりますし、わずかな不良でダメになってしまう損失も大きくなります。

またチップのうち、ロジック部分は3nm等の性能の良いものが必要でも、I/O等のアナログ部分は16nmのように昔ながらのもので十分ということもありますが、すべてまとめて最新の製造機械で作るとなればコストが跳ね上がってしまいます。

そこで、大きな1つのチップを、複数の小さなチップ(チップレット)に分割をして組み合わせるといった設計が考えられました。
そうすることで、チップ1枚が大きいゆえの歩留まり悪化を食い止め、かつ回路ごとに最適なプロセスを選択することで「性能最適化 × コスト最適化 × 電力効率向上」を実現させることをチップレット化と言います。

・2.5D/3D化とは…
従来の半導体チップは「横一面に並べる中で、いかに微細に作り込めるか」という戦いをしていました。
しかし、チップレット化のところでも記載したように、すでにAI用のGPUは異常に巨大化しており、横方向に広げるのにも限界が見えてきました。またその中で微細化するにも限界が見えつつあること、またいくら微細化したところで、横一面に並べるという構造上、本来近くに配置したいものを近くに置けないという物理的な問題に直面しています。

そこで、横ではなく縦にチップを積んでいこうというのが3D化です。
メモリを縦方向に積んだものをHBM(High Bandwidth Memory)と呼び、例えばHBM第三世代のAMD MI300Xでは、8層の積層構造になっているといわれています。今後はロジックでも3D化が進んでいくでしょう。

上記のチップレット化もそうですが、3D化はAI用半導体パッケージ材料ブームの中心にある設計変化です。

チップレット化と3D化は、設計思想としてはシンプルなものかもしれませんが、実現は思うほど簡単ではありません
異なる素材やプロセスのチップが1つになれば、当然、熱伝導性や導電性なども異なってきます。単純に繋げただけではどこかに負荷が集中するポイントができてしまうでしょう。
また、熱を逃がすとき、面方向はグラファイトシートなど優れた放熱材がある一方で、厚さ方向(垂直方向)に熱を伝えるのはやや難しい。しかし3D化では、垂直方向の放熱は極めて重要になります。

また、そうでなくとも、AIプロセッサの消費電力はどんどん増加しています。
例えば、1世代前のデータセンター用GPUであるNVIDIA Tesla V100は公称の最大消費電力が250Wとされていましたが、現在のデータセンター用AIプロセッサは700~1,000W級と言われています。
単純に数倍の発熱を抱えるうえ、これが3Dパッケージになれば1平方センチメートル当たりの配線密度は桁違いに増えます。
「熱のマネジメントができるパッケージ材料」は、AI用半導体チップにとって欠かせないものなのです。

実際、こうした「半導体性能の限界がウエハー工程からパッケージ工程へ移る」という業界構造の変化を反映してか、高機能パッケージ材料市場はかなりの成長が期待されています。
上記の熱対策はもちろん、低誘電材料絶縁膜ヘテロ集積用の封止/接着剤再配線層材料など、AI用途やチップレット化や3D化といった設計変化に伴って多くのパッケージ材料に革新が期待されています。結果、2024年~2036年にかけてCAGR13%以上での成長が予測されています。


日本が復権できるテーマ:高熱伝導材料を例に

前述のように、AIチップ時代におけるボトルネックの1つは「発熱」にあります。NVIDIA H100級ですでに700W以上、次世代は1,000W級が現実味を帯びるなかで、根本では「熱を伝える材料の性能」が使用W数の限界を決めます
そこで、日系化学メーカーが強さを持つ「無機材料・炭素材料・シリコン化学」が重要性を増すでしょう。

(1) ダイヤモンド材料:日本が最も世界に近い領域

ダイヤモンドの熱伝導率は銅の5倍以上(1,700–2,000W/mK、アイソトープ純度によっては3,000W/mK超2,000 W/mK級)にもなり、しかもあらゆる方向に均一に熱を伝える特徴があります。これは3Dチップの垂直方向の放熱に理想的です。
実際、AIチップのホットスポットを10〜20℃下げる可能性も示唆されており、GPU用ヒートスプレッダとして有力な候補になりつつあるといえるでしょう。日系化学メーカーでは住友電工・昭和電工系を中心に、

  • 高品質なCVDダイヤの量産

  • 表面処理・金属接合技術

  • 熱膨張制御

などで世界上位の技術を保有しています。米国系スタートアップもダイヤ試作で攻めていますが、量産・均質化にはまだ日系メーカーに一日の長があると考えます。

(2) グラフェン・炭素系材料:粉末・配合技術に強み

グラフェンは薄膜・パッドの双方で熱拡散能力が高く(熱伝導率約70W/mK)、従来のシリコン系パッドの5〜40倍、銅の約2倍もの熱拡散性能を持ちます。
ダイヤモンドと比べると異方性の問題や熱拡散性能も劣るように見えますが、グラフェンは柔軟で圧縮耐性にも優れるため、長期使用でも隙間を確実に埋め、熱膨張や振動による接触劣化を最小限に抑えられます

近年では、スーパーコンピュータに厚さ0.5mmのグラフェンシートを搭載したところ、チップ温度が最大28℃低下、冷却ファン速度が40%低下、結果システム全体の消費電力が15%削減したとの有用な報告もあります。
日本企業は炭素材料の配合や薄膜形成、分散技術で実績があり、

  • 三菱ケミカル

  • 日東電工

  • 東レ

などが「均一性」「耐久性」「量産性」で競合に1歩先んじていると言えるでしょう。炭素材料は品質の安定性が技術ハードルであり、日系の得意分野でもあります。

(3) 焼結銀エポキシTIM:無機-有機技術の融合

熱を発するもの(チップ)とヒートシンクなど放熱するものの間を充填し、接着する役割を持つ材料をTIM(Thermal Interface Material)と言います。
従来、どうしてもこの充填剤/接着剤の部分の熱伝導が遅く、少しでも熱伝導を良くしようと様々工夫が考えられてきました。
基材となっている樹脂部分の熱伝導性の改善は物理的に難しいため、熱伝導性の実力は、樹脂の内部に分散させているフィラー(粉末)の純度・粒径制御・表面処理技術となっていました。フィラーには、

  • BN(窒化ホウ素)

  • AlN(窒化アルミニウム)

  • SiC(炭化ケイ素)

などが使われており、日本メーカーが長年のノウハウを持つ分野でもありますが、実際のところ、TIMは使用する分量がそう多くはないうえ、頑張っても改善できる性能は知れているだろうことから、想定できる売上に対して、純度・流径制御・表面処理をR&Dするのは投資対効果が悪い場合が多かったように思います。

それに対し、焼結銀エポキシTIMは150〜250 W/mK 以上の高熱伝導率を狙える高いポテンシャルを持っています。
これは、たんに樹脂の中に粉末を分散させているのではなく、接着工程で銀粒子同士を焼結して銀粒子同士を金属結合させるためです。
これにより、高い熱伝導率を持つだけでなく、高い信頼性や接着強度も持つことができます。

ただ、この方式も焼結させる都合上、プロセス的な課題が複数あります。
しかし、有機と無機をハイブリットさせた扱いにおいて、日系化学メーカーは1歩先んじている印象を持ちます。

(4) 液体金属系TIM:日本の化学品質が差を生む

Ga系やIn系をベースに、液体金属をTIMとして充填剤に使うことも考えられています。例えば、下記の種類などがあります。

  • Ga–In 合金(ガリウム–インジウム系)

  • Ga–In–Sn(三元系ガリウム合金)系

  • Ga–Sn(ガリウム–スズ)系

  • In–Sn(インジウム–スズ)系

流動性ある液体金属を充填することで、熱を発するもの(チップ)とヒートシンクの間をより密着させることができ、また金属ゆえ熱伝統性も比較的高いものが多くなっています。
Ga系液体金属TIMは信頼性など諸課題も多くあり、現時点でハイエンド向けに実装されているとは言い難い印象ではありますが、低粘度・高熱伝導の「次のTIM候補」として、AI向けに大きな実証テーマになる可能性はあると考えています。

日系化学メーカーでは、現在確認できるところでは日産化学が米Ariecaの製造パートナーとなっています。
他分野と比べ、日系メーカーの強みが明らかとは言えませんが、無機材料の扱いにも長けたメーカーであれば十分検討できるでしょう。


おわりに:AI時代、日本が材料で再び主役に挑戦する

AIチップの性能向上は、半導体プロセスそのものよりも「材料とパッケージ技術」に重心が移りつつあります。

これは日系化学メーカーにとって追い風であり、特に高熱伝導材料は、無機材料・粉末化学・炭素材料・高純度プロセスといった、日本の伝統的強みがそのまま競争力につながる「復権テーマ」も少なくないでしょう。
日系化学メーカーが、10年後も変わらず世界の重要なポジションを維持していることを期待してやみません。


さらなる分析レポートが必要な方は…

私たちマグナリープ株式会社では「新規事業創出」・「研究開発効率向上」をキーワードに、R&Dマネジメント手法の導入市場理解・アイデア発出研究所のDX化といったR&D改革に取り組んでいます。
そこでは、市場/技術調査~新規事業戦略の立案~R&Dテーマ化まで、ワンストップでご支援することができます。

今回ご紹介した「AI用の半導体チップ市場と材料市場」のように、次世代の市場をつくる製品トレンドや、それに必要な部材/材料のトレンドまで、専門的な調査が必要な方はぜひご相談ください。

今後ともマグナリープ株式会社をよろしくお願いします。

編集:マグナリープ株式会社
※本記事の一部は、生成AIを活用して作成しました。
内容は社内で確認・編集を行っていますが、表現や情報に誤りが含まれる場合があります。参考情報としてご利用ください。