明日、仕事ができなくなったら?一人で仕事をする人の「もしも」の備え
もし、明日の朝から、あなたが仕事をできなくなったら。
誰かがパソコンを開けば、仕事の続きをできるでしょうか。
取引先に連絡できるでしょうか。
今月の請求が何件あるのか、分かるでしょうか。
契約がいつまでなのか、分かるでしょうか。
毎月引き落とされているサービスを、誰かが把握しているでしょうか。
そして、
「この仕事は、どうすれば終わるのか」
を、誰かが分かるでしょうか。
一人で仕事をしていると、こうしたことのほとんどを、自分自身が知っています。
だから、普段は困りません。
むしろ、それが当たり前です。
自分で仕事を受けて、
自分で判断して、
自分で連絡して、
自分で請求して、
自分でお金を管理する。
会社員なら何人かで共有していることも、一人で仕事をしていれば、自分の頭の中に入っている。
それで仕事が回っている。
でも、それは別の見方をすると、
「自分が動けなくなった瞬間、仕事も一緒に止まる」
ということでもあります。
「自分が分かっているから大丈夫」だった
私自身も、個人で仕事をしてきました。
そして、仕事をしている途中で、がんを経験しました。
そのとき初めて、
「もし自分が仕事をできなくなったら、どうなるんだろう」
ということを、現実の問題として考えるようになりました。
それまでは、
仕事のことは自分が分かっている。
必要なことは自分が対応すればいい。
そう思っていました。
実際、それで何も問題はありませんでした。
でも、それは、
自分がいつでも動けることを前提にした仕組み
でもあったのです。
元気なときには、それに気づきません。
今日も仕事をする。
明日も仕事をする。
来月も仕事をする。
それが普通だからです。
けれど、病気や事故などで、その「普通」が突然なくなることがあります。
そのとき初めて、
「自分しか知らないこと」が、どれだけあるのかに気づくのかもしれません。
一人で仕事をするということは、一人で生活を支えているということでもある
そして、もう一つあります。
一人で仕事をしている人の場合、
「仕事」と「生活」が、きれいに分かれていないことが少なくありません。
仕事用の銀行口座。
仕事用のメール。
契約書。
請求書。
税金。
パソコン。
スマートフォン。
クラウドサービス。
ホームページ。
仕事上のアカウント。
こうしたものは仕事のためのものですが、その仕事から得た収入で、自分の生活も成り立っています。
つまり、
仕事が止まることは、生活が止まることにもつながる。
一人で仕事をしているということは、
単に「一人で会社を経営している」という話ではありません。
その仕事が、自分の暮らしそのものにつながっている。
だからこそ、
「もし自分がいなくなったら」
だけではなく、
「もし自分が仕事をできなくなったら」
というところから考える必要があるのだと思います。
終活というと、「亡くなった後」を考えるものだと思っていた
終活という言葉から、多くの人が思い浮かべるのは、
葬儀やお墓。
財産。
相続。
遺言。
エンディングノート。
家族へのメッセージ。
そういったものかもしれません。
もちろん、それらは大切です。
でも、一人で仕事をしている人には、それだけでは足りない。
なぜなら、
自分が亡くなる前に、仕事が止まる可能性があるからです。
病気になるかもしれない。
事故に遭うかもしれない。
入院するかもしれない。
しばらく仕事ができなくなるかもしれない。
判断ができない状態になるかもしれない。
そのとき、
仕事はどうするのか。
取引先には誰が連絡するのか。
契約はどうするのか。
入金や支払いはどうなるのか。
パソコンの中には何が入っているのか。
そして、最終的に仕事をどう終わらせるのか。
これは「亡くなった後」の話だけではありません。
自分が仕事を続けられなくなった、その瞬間から始まる問題です。
「自分しか知らない」は、強みでもあり、弱点でもある
一人で仕事をすることには、たくさんの良さがあります。
自分で決められる。
自分のペースで働ける。
会社の都合に振り回されない。
自分の経験や専門性そのものを仕事にできる。
だからこそ、一人で仕事をすることを選んでいる人も多いと思います。
そして、
「自分しかできない」
ことは、その人の大きな価値でもあります。
ただ、
「自分しか知らない」
ことまで増えてしまうと、少し事情が変わります。
仕事の進め方も、
顧客との関係も、
契約の内容も、
お金の流れも、
サービスの契約も、
データの場所も、
全部、自分の頭の中にある。
本人が元気なうちは、それで何も問題ありません。
でも、
本人がいなくなったら。
本人が判断できなくなったら。
本人が長期間仕事をできなくなったら。
それまで「当たり前」だったものが、一気に「誰にも分からないもの」になります。
「誰かに託す」といっても、その相手は一人ではない
ここでいう「誰か」は、必ずしも家族である必要はありません。
家族に託せる人もいるでしょう。
家族には負担をかけたくない、という人もいるでしょう。
親しい友人に連絡だけお願いする人。
仕事仲間に、取引先への連絡をお願いする人。
税理士や行政書士などの専門家に相談する人。
契約しているサービスや専門業者に対応を依頼する人。
場合によっては、複数の人に役割を分けておくこともできます。
大切なのは、
「自分が動けなくなったとき、誰が、何をすればいいのか」
が分かることです。
すべてを一人に任せる必要はありません。
すべてを引き継いでもらう必要もありません。
むしろ、
「この人には取引先への連絡だけ」
「この人にはお金のことだけ」
「この人には契約や手続きのことだけ」
というように、自分の状況に合わせて考えればいい。
そして、
「ここだけは、誰かに知っておいてほしい」
というものを残しておく。
それだけでも、残された人の負担は大きく変わります。
だから、「自分がいなくても仕事ができるようにする」のではない
ここは、少し誤解してほしくないところです。
一人で仕事をしているからといって、
「会社のように業務をマニュアル化しましょう」
と言いたいわけではありません。
すべてを誰かに引き継げるようにする必要もありません。
一人で仕事をする人には、一人で仕事をする人なりの働き方があります。
むしろ考えたいのは、
「自分がいなくなったときに、残された人が何も分からず困らない状態にしておくこと」
です。
仕事を引き継ぐ必要があるのか。
一時的に止めればいいのか。
契約を終了すればいいのか。
誰かに連絡してもらえばいいのか。
何もしなくてもいいものは何なのか。
そして、
最終的に、この仕事にどうやって幕を引くのか。
全部を残す必要はありません。
全部を整理する必要もありません。
ただ、
自分がいなくなったときに、どうすればいいのか分からないものを少しずつ減らしておく。
私は、それだけでも大きな意味があると思っています。
すべて完璧でなくても、一つだけでも、少しでも残された人がわかればいい。
その分、どう対応したらいいか把握できます。その分、負担は減ります。
「終活」は、人生の終わりを待って始めるものではない
私は、終活を、
「人生の最後に向けて準備すること」
だけだとは考えていません。
自分がこれからも仕事をしていくために、
自分の仕事と生活を一度見渡してみる。
自分に何が紐付いているのかを知る。
もし自分が動けなくなったら、何が止まるのかを考える。
そして、必要なところだけ少しずつ整理しておく。
それも、一人で仕事をする人にとっての終活だと思っています。
だから、年齢だけで区切るものでもありません。
30代でも、40代でも、50代でも。
個人事業主でも、フリーランスでも、一人社長でも。
「自分一人で仕事を回している」なら、一度考えてみる価値がある。
私はそう思っています。
あなたの仕事は、あなたがいなくても「終わらせられますか?」
最後に、一つだけ考えてみてください。
もし、明日の朝から、あなたが仕事をできなくなったら。
誰かがパソコンを開けるでしょうか。
取引先に連絡できるでしょうか。
今月の請求や支払いを把握できるでしょうか。
契約を確認できるでしょうか。
そして、
「この仕事は、ここまでやれば終わり」
というところまで、誰かがたどり着けるでしょうか。
一人で仕事をしている私たちは、
思っている以上に「自分」に仕事が紐付いている。
だからこそ、
「自分がいなくても仕事を続けられるようにする」のではなく、
「自分がいなくなっても、仕事をどうすればいいのか分かるようにしておく」。
そのための準備が必要なのだと思います。
それは、人生を終えるための準備ではありません。
これからも自分らしく仕事をし、生活していくために、自分の仕事と暮らしを一度整理しておくこと。
私は、それを
「一人で仕事をする人の終活」
と考えています。
今、この記事を読んで、
「自分だったら、どんなことがあるだろう」
と、少しでも頭の中で考えていただけたなら、
もう、終活の第一歩を踏み出しているのだと思います。
大切なのは、いきなり全部を整理することではありません。
まずは、自分の仕事と暮らしに、どんなものが紐付いているのかを知ること。
そして、
「もし自分が動けなくなったら、どうなるだろう」
と考えてみること。
これからは、その第一歩を、少しずつ形にしていくための情報をお伝えしていきたいと思います。
一緒に、「ひとりビジネスの終活」をはじめましょう。

