死神をステージに誘い出した男 ナイル・ロジャースが「Get Lucky」に込めた執念
一度聴いたら忘れられない、あの軽快なカッティング・ギター。
ダフト・パンクの「Get Lucky」は、2010年代を代表する世界的大ヒット曲になりました。
でも、あの曲を弾いている伝説のギタリスト、ナイル・ロジャースが、録音当時どんな状況にいたかを知っている人は、そう多くありません。
突如訪れた「死の宣告」と、彼が取った型破りな行動
話は2010年に遡ります。
ナイルは、医師からガンの告知を受けました。
「攻撃性の高い前立腺ガンだと診断された瞬間、僕の幸せな音楽人生は一瞬にして崩れ去った」と、本人は後に語っています。
最悪の事態を考え、静養に入るという選択もありました。
しかし、ナイルが取った行動はその真逆でした。
「狂ったようなペースで働き、手術が失敗するかもしれないという恐怖から、意識を遠ざけることにした」と彼は言います。
ステージに立ち続けることで、自らを奮い立たせたのです。
闘病中に生まれた、21世紀最大のアンセム
そして、闘病の真っ只中で、彼はフランス人の二人組に出会います。
ロボットのようなヘルメットを被った、素顔の見えないデュオ。
ダフト・パンクです。
手術から約1年後、万全とはいえない体で、ダフト・パンクとの共同作業が始まりました。
そして生まれたのが「Get Lucky」。
皮肉だと思いませんか?
もっとも「不運」なはずの男が、世界中に向けて「幸運を掴め」と歌い、踊らせた。
あの理屈抜きに明るいリズム。
あれは単なるポジティブな曲なんかじゃない。
「死」という闇を、「生」の光で焼き切ろうとした、執念の結晶だったんです。
寛解、そして伝説へ
結果、どうなったか。
2013年7月、ナイルは「オール・クリア」の報告をSNSで発表しました。
そして翌2014年の第56回グラミー賞では、ダフト・パンクが「Random Access Memories」でアルバム・オブ・ザ・イヤーを含む5部門を制覇。
「Get Lucky」はRecord of the YearとBest Pop Duo/Group Performanceを受賞しました。
医師の宣告から、わずか数年。
彼は音楽によって、運命そのものを書き換えたんです。
逆境さえも「ヒット」に変える力
ナイル・ロジャースは、自分のギターを「Hitmaker(ヒットメーカー)」と呼びます。
それは単にヒット曲を量産したからではありません。
過酷な生い立ちも、理不尽な差別も、そして病魔さえも、すべてを音楽というポジティブなエネルギーに昇華し、人生を成功(ヒット)に変え続けてきたからです。
もし今、あなたが「最近ついてないな」と感じているなら、彼のギターを聴いてみてください。
彼のギターは、いつだって私たちに教えてくれます。
どんなに暗い夜でも、リズムを止めてはいけない。
踊り続けてさえいれば、運命は変えられるということを。
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