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【10章】step36 ビジネスを進めるための決断をする(2)

この話は、ささいなキッカケから、「新しいこと」をはじめることになった高校生の2人組が、経営者や起業家、ユーザーの声をききながら、サービスをつくりあげていく物語です。

■ 登場人物

■ 前回のストーリー


第10章 「やる」のか決める
どうしたいのかを決めよう!新しいことについて「意思決定」してみよう!

step36 ビジネスを進めるための決断をする(2)

爽太「ここまで、本当にたくさん考えて、考えて、みんなで考えた結果、僕たちの答えは…維持でも拡大でもなく、一旦、このジュースの事業はここでストップさせる決断をしました。」

ジョン「...ワォ!マジかよ。止める!?Ohーーー、そうなのね。」

舜「この数ヶ月で生まれたこの事業を、大きくすることもできます。もちろん簡単な道ではないけれど、今の売り上げだったら小さな店舗をいくつも持つことも可能だと思います。その自信も十分にあります。実際、8店舗までは行けるってところまでは4人で話し合ったんですよ。」

詩「でも私たちは、それぞれ全員が大学進学を目指していることも事実で‥それぞれにみんな叶えたい夢があります。」

蓮人「うんうん。せっかくだし、みんなの夢もぜひ聞きたいな。」

舜「僕は、大学に行ってもっとプログラミングとウェブデザインを勉強したいと思っています。あとは、気候変動を予測することにも興味があって、姉や兄と話していて海外にも留学してみたいと思っています。」

詩「私は、ヨガやダンスが面白くて、これをもっと極めたいなって。まわりにダンサーの方も多くて、私もダンサーの仕事をしてみたいって思ってます。」

健人「僕は会計と法律を勉強したいなって思い始めたんだ。今回の経験を通してというのもあるけど、もっともっと会社をうまく成功させるための会計の知識と法律の知識が欲しい。海外も視野にいれると国際会計士や国際弁護士‥なんてのも悪くない。もちろん、狭き門だけどやりがいはあるよね。少し前に調べ始めたばかりなんだけど。」

蓮人「みんなすごいなぁ。俺、高校生の時にここまではっきりやりたいことあったかなぁ。」

ジョン「わたし、120%バスケットやってました。」

爽太「僕は‥僕は正直、なりたい夢とかはなかったんです。でも、この数ヶ月の体験が本当に面白かった。だから、けっこういろんなことを調べました。こういう、使う人の体験をデザインするUXデザイナーという仕事があることを知って、まずはそれを専門的に学びたいのと、もう一度今回と同じような人を幸せにできるような起業にもチャレンジしたい。みんなの助けを借りて、今回、信じられないようなすごく素晴らしい体験をしたんだけど、同時に、まだ自分ではおんぶに抱っこって感じなんです。手応えとして。嬉しさと同じくらい悔しいっていうか、まだ半人前って気持ちがあって。大学生になって、視野も広げたり人と交流したりして学生起業家を目指したいって、そう今は思っています。」

健人「それで、僕たちがそれぞれ自分たちのやりたいことに本気になった時に、それでもこのジュース屋さんを続けることができるんだろうか?って。邪魔になっちゃったら大好きなジュース事業を嫌いになってしまう日が来るかもしれないと思って。中途半端にやるくらいなら一度、事業そのものを見直してもいいんじゃないか、って決断に至ったんです。」

ジョン「わぉ、クール!ジュース屋止める、って聞いた時は正直、なんで?って思ったけど。なんか嬉しいなぁ。」

ジョンは本当に少し涙ぐんでいた。フロリダ出身だし激情型なのかもしれない。

爽太「だから僕たちは‥拡大をしないこと、いや、ここで自分たちの事業を思い切ってストップすることに決めました。夜明けまで話し合って、僕が新たな事業を作り出す時には、3人にもう一度仲間としてサポートしてもらえる再結成できる約束をしたんです。」

蓮人は爽太をはじめ、4人を見ながら各々に頷くと明るく言った。

蓮人「うん。わかった。こういうものは、実は高校生も僕たちも親父の年齢でもきっと、答えがあるわけじゃないと思うんだ。ここまで一緒に進めてきた仲間と、どうしていくかを”主体的に選択できること”が大切なんだと思う。でも個人的には、止める、辞めるって決断は最も難しくて、勇気がいるものだと思うんだ。本当に、よく決断したね。」

蓮人のこの言葉を聞いて、4人ははーっと息を吐いた。自分たちが決めることであったとしても、この数ヶ月伴走してくれた蓮人の反応は、やはり気になるものだったのだ。いくら温厚な蓮人さんでも、さすがに怒られるかもしれない。そういう覚悟をして切り出した話でもあった。

蓮人「今回の決断を聞いて、僕はとても納得した。だから異論はない。ただ、僕からも1つ提案がある。僕は健人の兄で、君たち4人にとってはもう全員からみて兄みたいな存在だと思う。でも同時に、ビジネスをやっている経営者でもある。この事業、経営者という立場で見ると、ここで辞めてしまうのはあまりにももったいないし、これからせっかく利益が出るから辞めるべきではない、と思うんだ。」

健人「そうなんだ。KUSS JUICEのファンになってくれたって人もいて、それは広がっている。事業がここまで育ったのに、本当に申し訳ない、残念な気持ちがあるし、そこだけ最後までみんなでどうしようって話してたところなんだよね。」

健人の声に3人は思い思いに頷いた。それは全員が同じように感じていたことだった。

その言葉を聞いて、いつもは陽気なジョンが真剣な面持ちで口を開いた。

ジョン「・・・私、このジュース屋さんの事業、譲り受けてもいいですか?一番、相談に乗ったからこの事業のポイントもみんなの想いもよくわかっている。いい事業だから、みんなの代わりにこれやりたい。」

詩「え、事業、もらうとか譲るってあるの?」

4人はジョンの方へ注目した。

ジョン「実は、僕は今アサインされているプロジェクトの関係で、年が明けたらマレーシアにしばらく定住するんだ。2年くらい。それで、これまで視察にいった体感から、実は、僕はこのジュース、KUSS JUICE 事業がきっとマレーシアで大人気になると踏んでいたんだよ‥」

ジョンはこの事業をマレーシアに持っていきたいこと、東京の1号店は自分で会社を作ってスタッフを雇い継続したいこと、もしうまくいったらみんなをマレーシアに招待してその様子を見にきて欲しいことを伝えた。

ジョンの話を聞きながら、育て始めた事業を譲るなんてことがあるんだ、という驚きと、諦めなければならないと思っていたジュース事業が、思わぬ展開で大きくなりそうなワクワク感、そして、その行く末がすぐ近くにあることを感じて、次の育ての親が決まったような気持ちになった。

何より、ごめんなさい、潰れます、ってことをみんなにお詫びしなくて済む。謝ることよりも応援してくれた人たちの残念な顔を見ることに耐えられるのかを心配していたのだ。

4人の表情はどんどん明るくなっていった。

爽太「僕たち4人はもちろん大賛成です。蓮人さんは、それでいいですか?」

蓮人「君たちさえよければ大歓迎だよ。」

詩「ジョンさん、私たちの KUSS JUICE よろしくお願いします。」

ジョン「やっぱり返してって言ってももう返さないからね?(笑)ワタシ、この事業、大好き!今の会社でこの事業とっても大きくするから!!楽しみにしていて!」

その日、みんなで握手を交わしながら もう1回レモンソーダを飲み、これまでのことやこれからのことを語った。

仲がいいとはいえ、やらなきゃいけない、と言われ、みんなで契約書という何やら難しい書類を一生懸命、理解しながら、サインをした。


ーこのステップのポイントー
・何かを止める、辞めるという決断は勇気が必要です。しかし、時にはその決断をすることで何か大きな物事を動かすための推進力を生むこともあります。
・大切な決断をする時には、周りの声を聞くことが大切です。信頼できる人にたくさん話を聞くことで自分の中に選択できることが広がります。
・意思決定をする時には、自分の内なる声に耳を傾ける必要があります。誰かの意見ではなく、自分自身がどうしたいのか、最後は自分とよく対話をして決める必要があります。

ー考えてみようー
・中途半端に諦めたり、適当にやめてしまったのではなく、しっかりと考え抜いて、辞めたり、止めたりした経験はありますか?それはどんなものでしたか?そのときどんな感情が芽生えましたか?
・大きな決断をするにあたって信頼できる人たちに相談したことがありますか?その相談は自分の期待していたものでしたか?期待が外れましたか?
・何かを決めなければならない時に、自分自身で自問自答し、答えを見つける作業をしてみたことがありますか?それはどんな決断でそのときどんな感情をもちましたか?


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