#001|金星の「1日」は「1年」より長い?|宇宙・心理・脳の雑学3選
「金星」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろう。明けの明星、宵の明星——夜空でいちばん明るく光る、あの星だ。名前はよく知っている。でも、その「1日」の長さがとんでもないことになっている、と言われたらどうだろう。
先日の自己紹介では、タコの心臓が3つある話をした。今日はシリーズの第1号。宇宙・心理・体の不思議から、僕が「これは誰かに話したくなる」と思った話を3本。最後には、ちょっとゾクッとする都市伝説も置いておく。
金星の「1日」の長さが、ちょっとおかしい
金星では、「1日」のほうが「1年」より長い。太陽系で、こんな星は金星だけだ。
初めて知ったとき、僕は思わず「逆じゃないの?」と声が出た。順番に説明しよう。「1日」は星が1回転する時間(自転)、「1年」は太陽のまわりを1周する時間(公転)のこと。地球なら1日は24時間、1年は約365日。当然、1年のほうがずっと長い。
ところが金星は、自転がとてつもなく遅い。NASAによると、金星の自転1周は地球の約243日ぶん。いっぽうで、太陽のまわりを1周するのは約225日で終わってしまう。JAXAの解説でも、自転周期243.02日・公転周期224.7日と、ほぼ同じ数字が確認できる。「1回転しきる前に、1周を終える」——だから、1日のほうが1年より長いという逆転が起きるわけだ。
しかも金星は、自転の向きがほかの多くの惑星と逆(逆行)になっている。地球とは逆回りだ。もし金星に立てたら、太陽は西から昇って東に沈むことになる。
もう一段おもしろい話がある。NASAの同じページには、金星で太陽が昇ってから沈むまで(sunrise to sunset)だけで、地球の約117日かかると書かれている。1日の長さそのものだけでなく、体感する昼の長さまで地球とは桁違いなのだ。
ひとつ誤解しやすいのは、「金星の1日が長い」を「24時間の1日が、ただ間延びしているだけ」とイメージしてしまうこと。正確には、自転1周にかかる時間が、公転1周(1年)にかかる時間より長いという「周期の逆転」の話だ。自転が遅いうえに向きまで逆、と考えると、なかなか異常な星だと分かる。
10秒で誰かに話すなら——「金星ってさ、1日のほうが1年より長いんだよ。自転が遅すぎて、1回転しきる前に太陽を1周しちゃうんだって」。夜空に金星が見えたときや、宇宙の話題になったときにさらっと出すと、かなり効く。

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「責任は私が取る」——その一言で、人はどこまでやるのか
ごく普通の人でも、白衣の権威者に「続けてください」と言われると、他人に強い電気ショックを与え続けてしまう。
1963年発表、イェール大学のスタンレー・ミルグラムによる有名な「服従実験」。参加者は、別室の相手が問題を間違えるたびに電気ショックの電圧を上げる役をやらされる。悲鳴が聞こえても、白衣の実験者は淡々と「続けてください」「責任は私が取ります」と促す。じつは電気は流れておらず、相手役は演技だ。結果、代表的な条件では約65%が、最大の450ボルトまで押し続けた。
ただしこの65%は、多くの条件のうちよく引用される一つの数字。服従率は設定しだいで大きく変わり、ミルグラムの全21条件・740人を合算すると43.6%まで下がる。一方で、「自分では電流を流さず、他人にスイッチを押させる」条件では9割超(最大92.5%)が最後まで従った。条件によっては、従うのはごく一部にとどまる。責任の所在があいまいになるほど、人は従いやすくなるらしい。
面白いのは、これが「残酷な人が押した」話ではないこと。事前に精神科医たちは「従うのは1%未満」と見積もっていた。カギは性格ではなく、"権威者がそこにいる"という状況のほうにあった、と考えられている。
10秒で誰かに話すなら——「人ってさ、偉い人に『責任は私が取る』って言われると、けっこうひどいこともやっちゃうらしいよ。有名な心理実験で、6割以上が最後までスイッチを押し続けたんだって」。仕事の指示や同調圧力の話になったとき出すと、妙に納得される。
記憶の「保管庫」は、あなたが思っている場所じゃない
大事な思い出を長くしまっておくのは、「海馬」ではなく「大脳皮質」だと考えられている。
海馬は、耳の奥あたりにある小さな器官で、「記憶の中枢」として有名だ。でも役割は「受付・仕分け係」に近い。新しい出来事は、まず海馬が一時的に受け取り、そのあと時間をかけて大脳皮質という広い場所へ移されて長く保存される——これが「システム記憶固定」と呼ばれる有力な説のひとつだ。移し替えの多くは睡眠中に起こるとも言われている(クイーンズランド大学の脳研究機関などの解説)。ただし細かい仕組みはまだ研究の途中で、諸説ある段階だ。
もう一段。この見方を決定づけたのが、有名な患者「H.M.」。てんかん治療で両側の海馬を含む部分を切除された結果、新しい出来事を長期記憶として覚えられなくなった。ところが、鏡を見ながら図形をなぞる練習をさせると日ごとに上達したという。本人は練習した覚えがまるでないのに、腕だけは上がっていく。記憶にも種類があり、脳の中で担当が分かれていることを示す症例だ。
ちなみに「海馬=記憶の金庫」というイメージは半分だけ正しい。長期の置き場所はむしろ大脳皮質側で、とはいえ「もう一切関わらない」と言い切るのも早いらしい。
10秒で誰かに話すなら——「記憶って海馬にしまわれてると思いがちだけど、あれは一時倉庫で、長く残るぶんは大脳皮質に移されるらしいよ。しかも移し替えは寝てる間に進むんだって」。勉強や睡眠の話題で出すと、「だから寝るのは大事なんだな」とつながって盛り上がる。
今日、増えた3つの引き出し
金星は、1日のほうが1年より長い。人は権威者の一言で、驚くほど従ってしまう。そして記憶の長期保管庫は、海馬ではなく大脳皮質のほうにある。今日で、誰かに話したくなる引き出しが3つ増えた。
今日の都市伝説:カリブの海賊の骸骨は「本物」か
ディズニーランドの人気アトラクション『カリブの海賊』。船着き場に転がる骸骨の一部は、じつは本物の人骨だ——そんな噂が、昔からささやかれている。
「実際のところ」——米カリフォルニアのディズニーランドでは、これはあながち作り話ではない。1967年のオープン当初、偽物の骸骨は「リアルさに欠ける」と判断され、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)医療センターから調達した本物の人骨が飾りに使われていた、と元プロデューサーが自著で明かしている。その後、造形技術が上がって本物はレプリカへ置き換えられ、回収された骨は供養のうえ返却された、と伝えられている。
ちなみに東京ディズニーランドは開園当初からすべて作り物、とも言われるが、はっきりした裏付けは見つからなかった。あくまで"そう伝えられている"話として楽しむくらいが、ちょうどいい。
情報源
金星の自転と公転:NASA「Venus Facts」(2024) / JAXA「金星探査」
ミルグラムの服従実験:Simply Psychology「The Milgram Experiment (1963)」 / NIH・PMC「Meta-Milgram(Haslam, Loughnan & Perry, 2014)」
記憶と海馬:NIH・PMC「Memory Consolidation(Squire et al., 2015)」 / クイーンズランド大学 QBI「Where are memories stored?」 / Simply Psychology「Henry Molaison (Patient H.M.)」
今日の都市伝説(「実際のところ」の根拠):IFLScience / Mental Floss / FRONTROW
3つのうち、あなたがいちばん「まじか」と思ったのはどれだろう。よかったら、コメントで教えてください。
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